第189話 「ヴェンリノーブル侯爵が明かした計画」
「――――――なんということだ。まさか何も知らなかったとは」
ヴェンリノーブル侯爵はそのあとすぐに屋敷に来た。
彼は軍務官僚という立場から、真っ先にそれを聞いたらしい。
それで国軍を編成して、セインセス様を迎えに来たということだ。
独自判断をできる彼がいなければ、事態はさらに苦しいものとなっていたことだろう。
「王城へ向かう途中、暗殺されたとのことだ。最も人気の少ない場所で。何か巨大な鋭利なもので引き裂かれたように。まるで……魔物に攻撃されたように」
「魔物とは……更に重い事実です……」
「ああ。王族の移動情報が漏洩している。それも魔物に裏切者が漏らしたという事……そうでなければもっと騒ぎになっているはずだ。一分とかからず衛兵が犯行現場へ駆けつけたが、それすらも臭い」
アクレイは既に悟ったようで、深刻な様相である。
ヴェンリノーブル侯爵の話を聞いているうちに、僕も話が見えてきた。
「魔物を使ったという事ですか。人間の裏切者が」
「はい。しかも衛兵を動かせて、王族の移動経路と時間帯を知る何者かが」
何という事だ。
言葉を失う。
気丈にも王女殿下は、平静を保って聞いているが。
その心は乱されている事だろう。
ご自分の行動が兄の死のきっかけになったのかもしれないと、悔やんでいるはずだ。
「王女殿下。かねてより計画していた聖女叙任計画を、この混乱の内に発動すべきです。」
「はい。それを教会に赴いた折に話そうかと思います」
「伯爵として王女殿下の派閥に入ったマノワールにも話しておくべきだな」
「それは何のことでしょうか?」
何か策を練っていた様子の二人。
その内容をヴェンリノーブル侯爵は説明する。
「儂は王国最前線という激戦地を預かる貴族柄、民を先導する教会と縁が深い。人類鼓舞のため、セインセス様を聖女にと進言したばかりだったが、かなり乗り気でな。魔物たちが王国に跋扈している現状で、下がった教会の権威をあげるため。セインセス様を利用しようと考えている」
「聖女ですか! それはまた……」
凄い発想だ。
セインセス様にピッタリの称号だ。
教会も利害が一致できるという事か。
「教会が手をこまねいていては、実際に民を護っている王族や、貴族にばかり権威が増大する。坊主どもの思惑に乗る形になるが、利用しない手はないという事だ」
「僧侶たちは王族同士が仲が悪いなら、分断したいでしょうから。彼ららしいですわ。我々としても好都合ですが」
アクレイは皮肉気に笑う。
職業悪役令嬢としての謀略が冴えわたってきたのかもしれない。
ヴェンリノーブル侯爵は重々しく頷き、同意する。
切迫した状況ではあったが、光明が見えたかもしれない。
僕もできることをやっていかねば。
面白い、または続きが読みたいと思った方は、
広告下↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓の☆☆☆☆☆から評価
またはレビュー、ブックマークしていただけると、モチベーションに繋がりますので執筆の励みになります!!!!!!!!!!




