第187話 「第2王子ダイフラグ」
王都の一角にある、一際大きな屋敷。
王族という最も尊き存在が住むため、建設されたところに僕たちは赴いていた。
「久しぶりだねセインセス。そしてアクレイ侯爵にコックロ子爵。はじめましてマノワール伯爵」
「お久しぶりです。ダイフラグお兄様」
「お初にお目にかかります。マノワールと申します」
僕たち貴族勢はダイフラグ殿下の屋敷にお邪魔していた。
1週間もかからず面会できたとは、丁度よかった。
彼は眼鏡姿の学者然とした風貌の、金髪男性だ。
顔立ちは整って品もいいのだが、これといった特徴のない一般的な貴族男性にしか見えない。
言っては何だが良くも悪くも、ゲースリンスのような王気というか王族っぽさがない。
「まずは婚約おめでとう。君は忙しそうにしていたから驚いたよ。そのことで話があるという事だが?」
「はい。実はその結婚について……ダイフラグお兄様より、王太子殿下へ断って頂きたいのです。私はあの方がどうにも好きになれず」
「なんだって?」
寝耳に水といった面持ちだ。
見る限りセインセス様のお気持ちは歪めて伝わっていたようだ。
「君が熱烈にセイリムリ男爵に求婚したと、兄上からは聞いたのだが? 話がおかしくはないか?」
「いえ。そのような事実はございません。むしろ私はこの無理やり押し付けられた縁談を拒んでおり、お兄様を頼った次第です。」
僕たちは困惑する。
しかしセインセス様とアクレイは、すぐにその意図が分かったようだ。
僕達の反応からもそれを真実だと感じたのか、殿下も真実を把握した様子。
「そうだったのか……長らく宮廷からは遠ざかっていたが、王太子殿下はそこまでセインセスを……わかった。そのようなことは王族としてだけではなく、兄として見過ごせない。諫言しよう」
「あ兄様。ありがとうございます。何とお礼を申し上げたらよいか……」
「気にするな。それもあるが兄上はどうしてしまったのか……もっといい縁談をまとめれば、国内の引き締めもできるだろうに。セイリムリ男爵というほとんど耳にしない方との縁談は薄々疑問には思っていたが、そんなことになっているとは」
頭が痛いというように、眉間に皴を寄せるダイフラグ殿下。
彼の言う通り、もっといい方法はいくらでもある。
頭を深く下げたセインセス様も、暗い面持ちだ。
実の兄に辛く当たられるのは、余程に精神が追い込まれることだろう。
昔の僕を思い出して、とても胸が痛くなった。
「君たちも妹に付き添ってくれてありがとう。このことは必ず報告するとしよう。今のところ王位継承権第2位を持つ私の言葉は、兄上も無下にしまい」
「ありがとうございますわ」
アクレイが代表して礼を述べ、僕たちは頭を下げる。
協力してくれて何よりだ。
これで風向きがいい方向へと変わるかもしれない。
「さて早速面会を取り付けよう。王太子の予備として暇な身だ。今週中には結果を伝えられると思うよ」
「ありがとうございますダイフラグお兄様。私のために労を惜しまず動いて下さり、何とお礼を申し上げたらいいか」
「兄として妹の幸せは願いたいからね。私の立場は疎まれて当然だが、妹には家族と仲良くしてほしいだろう」
「お兄様……」
感動的な兄妹の絆。
家族とはこうあるべきだと心が温かくなる。
僕は彼が羨ましい。
でも僕にもアクレイとコックロという、自慢の親戚がいる。
「色々大変だったね。あとのことは私に任せなさい。皆もご苦労でした」
「ありがとうございます。失礼いたします」
僕たちは屋敷を辞した。
明るい未来を想像して、皆は笑顔で帰り道に着く。
しかしそれが彼との最後の会話だったのだ―――――
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