第186話 「姫の兄」
「次期大公となるダイフラグ殿下か。彼に協力してもらえれば、この婚姻を食い止めることができるか漏れないな」
「王太子殿下とはすでに仲が悪いことで有名ですしね」
僕は王太子の弟、王女殿下の兄であるダイフラグ殿下の名前を出す。
コックロとオーエラさんが頷いて同調した。
「私の勝手でダイフラグお兄様を巻き込むのは……国王次男というお立場から、政治から遠ざかりたがっているお方ですし……ゆえにゲースリンスお兄様から疎まれ……」
「恩義はこれから返していきましょう! 魔王たちとの戦争がまさにそれです! 放置していれば誰もがタダでは済まないのだから、恩返しになりますよ!」
しかしセインセス様は躊躇いがちなようだ。
人に頼ることは気が咎める様子。
次期国王に睨まれるという事は、流石に頼みづらいという事だが。
しかし妹の婚姻に口を挟んで睨まれるならば、いずれ破綻する関係だろう。
僕は何とか説得しようと試みるが、まだ遠慮される。
「でもそれはあなたたちのお力が殆どです。私の功績のようにひけらかすのは躊躇われます」
「セインセス様はエルフの里だけではなく、ギルドのことでも私たちを助けて下さったではありませんか! あれがなければ我々はどうなっていたことやら」
「それにオーエラさんの恩人なら、僕の恩人です! セインセス様には皆助けられたのですから!」
オーエラさんは恩人であるセインセス様に、強く恩義を感じているようだ。
だから王都事情などの情報収集をしていて、詳しかったのだろう。
平民の出であるのに色々な事務作業にも精通している彼女は、とても頼りになる。
僕もできることをしないと。
「みなさん……ありがとうございます。何とお礼を言ったらいいか」
「不遜な言い草かもしれませんが、僕はセインセス様をもう仲間だと思っております」
「ありがとうございます……本当に……ありがとうございます……」
美しい涙を一つ落とした王女。
彼女の感情は決壊すると、留まることを知らなかった。
やっぱり嫌だったんだ。
なら頑張らないといけない。
お世話になった分、僕も恩返しする出番だ。
並々ならぬ感情を籠めて、決意を固めた。
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