第177話 「人質王女からの裏切り誘惑」
「帰った……? わ……! 我らが勝利である!!!!!」
「「「「「ぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
年期の違いからか、いち早く再起動した長老。
彼はすかさず戦勝宣言を行った。
死を覚悟していたのだろうエルフ兵たちは、安堵混じりの歓声を上げる。
しかしエルリフォムさんたちは、険しい表情のまま。
無理もない。
先ほどの魔王の言葉を聞けば、ここはまだ全く安全ではないのだから。
「オキャルンさんといいましたね。私はカース王国王女セインセスと申します。先ほどのお話について伺っても?」
「は、はい~」
それはセインセス様も同じだったようで、盛り上がっている隙を見計らって情報収集に努めていた。
治療行為を行いつつも、淡々と事実確認を行い、そして遂にオキャルンさんに向けてある行動に移る。
有無を言わさぬ圧力を受け、仲間の魔物の少女は右往左往している。
知り合いだったようだが、僕たちも詳細を聞きたい。
彼女はなにを知っているのだろうか?
しかし仲間として、やるべきことがある。
「セインセス様。お話に割り入る無礼、失礼いたします。オキャルンさんは悪い魔物ではありません。人間の子どもたちを魔物から守り、何千人と育ててきた――――――」
「マノワール様。私はむしろオキャルンさんを裏切らせたいと考えております。彼女を味方につけたく、お話を伺いたいのです」
「なっ……さすがにそれは酷です!? 先ほどの魔王の口ぶりからすれば、オキャルンさんと子どもたちを逃がしてくれたのは、他でもない魔王なのですよ!!!」
何でもないような表情で、背信を唆そうとしていたセインセス様。
オキャルンさんも半泣きでオロオロしている。
恩人に刃を向けようという誘いに狼狽している彼女に、追い打ちをかけるような真似はしたくない。
だが魔王は人類の敵で、どうすればいいのだろうか。
「はい。ですのでオキャルンさんに無理やり従ってもらおうとは思っておりません。魔王軍の詳細と、彼女たちへの反対勢力がいれば紹介してもらいたいのです。私が求めるのは戦争の終結と、人類の優位ですので」
「それは……オキャルンさん。お嫌なら全力であなたを支持しますので」
「いえ……それならばセインセスさんは、むしろ魔王様に協力して頂けませんか~」
オキャルンさんは、魔王軍の詳細について、王女殿下に説明した。
以前僕たちも聞いた話だ。
「――――――なるほど……魔王はむしろ戦争反対派と……しかしそれではエルフの侵攻に説明がつかな……ああ。なるべく早く戦争にある程度片をつけるべく、自身の功績をあげようとしているのですね。敵対派閥がエルフの森を占拠されると、その者たちに武功をあげ続けられてしまう」
「軍学には疎いですが、恐らくはそうかと~」
「血気盛んな魔物たちは死んでもらった方が、都合がいいからこそ、あそこで退いたのでしょう。魔王も中々に合理的ですね」
王女は尋常でない理解力で、魔物たちの目論見を看破した。
彼女は卓越した政治感覚を、若い身で有している。
この冷酷さは、魔王とも似ている。
合理主義者たちは思考回路が似通うものだろうか。
「それと聖女と呼称したのは、どういう意味でしょうか?」
「人間の中には、異常なレベルの光魔法と回復魔法を使える個体が、時折出現するようですね~」
「そうですか……これも調べる必要がありますね」
そんな方がいるんだな。
でもセインセス様なら、聖女といわれても納得してしまう。
オキャルンさんの情報に、考え込んだ王女殿下。
僕は話の中で気になったことを質問した。
「なら自宅警備員は、魔物たちの中にもいたりするので?」
「わたしも初めて聞きました~マノワールさんは凄い子ですね~」
聞いたことないんかい。
凄いかどうかは謎だが、ふにゃりと笑って僕の頭を撫でようと背伸びして腕を伸ばす。
だがギリギリ届いていないので、しゅんと意気消沈している。かわいい。
しかし本当に謎過ぎるな。僕の職業は……
おそらく歴史上一人しかいない、レア職業なんじゃないか?
でも昔の僕みたいに無能すぎて、史書に残そうともしなかったのかも……
「話は分かりました。本国に話を持ち帰り、検討いたします。ついてはあなた方には証人として王都までついて頂きたく。もちろんオキャルンさんを捕らえたりなどしません。私を人質にして来てください」
「えっ!? いやいやいやいや!?!?!? 話が急すぎて!?!?!?」
とんでもない事をサラッと言う、
自分すら駒にして、僕たちを連れていきたいのか。
そこまで僕を引き入れたいのかな。
あんな魔王がいれば、優秀なパーティの仲間たちを味方にしたいのも当然か。
「少しの間ここに滞在しますので、お考えいただければ。侯爵家防衛と、オッサツイホ家の要塞線を敷設した功績を称え、マノワール様に伯爵位を与え、適切な褒美をもって能力を遇したく」
「私たちは助けて頂きました。しかし私のような者が貴族に相応しいとは……」
「返答は今すぐにはとは言いません。もちろん私がマノワール様を援助いたします」
僕たちを迎えたいというが、正直貴族たちのあれこれに巻き込まれたくはない。
もうどれだけ敵がいるというのだろうか?
僕たちを害そうとするだろう者たちが多すぎて、皆を守り切れるとは思えない。
しかしどこにも行く当てがない僕は、苦渋の決断をせざるを得ないとも感じる。
選択肢が見当たらないことに葛藤し、これが人の命を預かる責任かと暗澹たる気分になる。
この一年ほどの間に冒険や旅をしてきたが、どこにいっても間が悪い目に遭い続けて。
そんな貴族社会で生きていけると考えるのは、安直に過ぎる。
セインセス様が援助してくれるのも、彼女が結婚するまでだろう。
いいように使われるだけなのではないか?
とても魔王との戦いをする割に合うとは思えない。
「ご入用のものがあれば、努めて用意します。質問等あれば、何でもお聞きください」
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