第175話 「セインセス姫の加勢」
「王女殿下? 人間の姫か……加勢頂き感謝を」
しかしその気勢は削がれる。
カース王国の姫が、何故か現れたからだ。
彼女がここにいる理由はわからない。
死亡者すらいるエルフたちの惨状にも、微塵も動揺していない。
だが協力して撃退すると、突然現れたセインセス様は申し出たのだ。
「キュア! 動きに支障がない程度に回復させました」
卓越した回復魔法が、エルフたちを包む。
彼らの悲壮感は安堵に変わった。
一方で姫の目は全く余裕がないようにも見える。
この戦況を理解しているからか―――――
「―――――マノワールさん! やっと見つけたニャ!」
「いたかお兄様!」
ミーニャたちは王女殿下に合流していたようだ。
仲間たち全員の無事に、少しだけ安心する。
「大体の位置はお兄ちゃんの攻撃で把握できたから、こっちに向かって正解だった」
「うん。それも意図していたが、気づいてくれて何よりだ」
「マノワールさんが時間を稼いでいてくれたおかげで、非戦闘員の方たちは避難させてあります」
「よかった。手際がいいオーエラさんがいてくれて助かったよ」
「元ギルド職員として、魔物への対策マニュアルは頭に叩き込んでありますから!」
頼もしい発言だ。
やっぱりプロがいると違うな。
「オキャルンさん! 集落のみんなは!?」
「陽キャさんたちが守ってくれております~チャライさんが指揮を執ってくれております~」
陽キャたちは女性の前で強くなる。
仲間の危機にカッコつけるために、守ってくれているのだろう。
彼らは土木工事で更に体がビルドアップした。
やっぱり建設作業は最高だな!
エルフたちも聞き耳を立てていたのか、ほっとした息を吐いた。
僕は彼らと話している姫へと向かい、礼を述べる。
「セインセス様、仲間たちをありがとうございます」
「礼には及びません。劣勢を覆すために、マノワール様の力をお借りしたく」
「もちろんです」
相変わらず頼りになる方だ。
しかし何故ここにカース王国のプリンセスが?
いや後で聞けばいいか。
彼女を守るためにも、今できる全力を尽くさねば。
「助かりました……」
「人間の姫君よ。あなたに礼を」
「いえ。当然のことです。それよりも敵の大将らしき存在を発見しました。そちらに向かわれるのが、よろしいのではないでしょうか」
王女殿下は戦場を見極めていたようだ。
長老の謝礼の言葉を受け流し、今後の展望について献策する。
「半包囲されている森。敵の中心部には、やけに戦力が集まっています。そこにこそ敵の将がいるでしょう。それを倒し、敵の指揮を瓦解させます。中央突破となり苦戦は免れませんでしょうが、勝機はそこにしかないでしょう」
「至極道理である! 皆のものよ聞いたか! 我らはそこに活路を見出すのだ! 死中に活あり! 何が何でも、敵を退けるのだ!!!」
先ほどよりはやる気が灯ったエルフたち。
だがそれでもキツイことには変わりない。
勝ち筋は見えたとなれば、そうするしかない。
エルフたちと共に覚悟を決める。
「突入するぞ!!!」
「―――――――鎮まれ」
その一声で魔物たちは静まりかえった。
魔物たちの大軍が急停止し、徐々に奥から陣が割れていく。
そこからは小さな少女が現れた。
凄まじい存在感が、僕達の足を止め視線を集中させた。
「…………魔物の……女の子?」
青い肌。
瞳孔は金色。
細身で華奢ながらも、至高の造形美を誇る肢体。
人間の女の子と同じようなフォルムの身体に、頭部より生えた真っ黒の巨大な角。
体のほとんどが露出された、煽情的な衣装。
ニンメイちゃんと同じくらいの年頃に見えるが、実年齢は魔物だからわからない。
「あれは―――――――」
「まさか……」
長老は目を細め、額から汗を流した。
一瞬でその実力を悟ったのだろう。
この女の子から放たれるオーラに、気圧される。
何だこの存在は?
なぜここまで僕は恐れている?
セインセス様すら強張った表情で、それを睥睨していた。
この王族の女性は、衝撃的発言で静寂を引き裂いた。
「その巨大なる魔力。恐らくは……あなたが魔王」
「……聖女か」
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