第17話 「後悔する追放者達」
「帰ってこいマノワール。ここがお前の居場所だ」
「今さら帰ってこいと言われても、もう遅いです」
「皆辞めちまって、仕事が立ちいかないんだ! 経営が振るわなくて借金まで作っちまって、雇っていられない! 女房にも愛想尽かされて出ていかれちまって、娘には絶縁されちまった!?」
昔から知っている娘さんと、お袋さん。
若い頃に拾ってもらった僕もかなり世話になった。
でももう昔の話だ。
恩義は働いて返したつもりだし、最後は仇まで貰った。
「男の情ってやつを見せちゃあくれねぇか!!! この通りだ!!!」
深く頭を下げるショワジ親方。
一度言ったことを撤回しないこの人ができる、最大の譲歩だ。
「親方は謝ってくださいましたが、他の人はどうなんですか! それに嘘つき呼ばわりして、その分のお金も耳を揃えて返すのが筋でしょう!」
「もちろんだ。筋は通さなくちゃならねぇ」
「あぁ!? なんで俺らがそいつに謝らなくちゃなんねーのよ!」
親方の言葉を遮って、若い奴らは不満を露わにしている。
自身が見下していた人物に頭を下げれない、幼稚さがあるのだ。
「よさねぇかっ! こっちは頼んでるんだ」
「それとこれとは話が別でしょう!? こいつに頭下げたら俺らが嘘つき呼ばわりされるってことでしょう! そんなところで働いていられるかってんだ!」
「まさか親方は俺らを詐欺師呼ばわりするってんですかい!? 昔からの仲間を!」
「だったら本当かどうか、証明しろってんだ!」
「うむむ」
ショワジ親方はこれらの追求に丸め込まれてしまう。
義理人情を重んじるこの人は、矛盾したことが言えない。
嘘が言えないのは時として欠点となり、僕は謝罪回りに奔走することも多かった。
「証拠があったとして、あなたたちは揉み消すでしょうし。もうあなたたちに証拠を見せる事すらしたくありませんっ! あなたたちみたいな性格の悪い人なんて、死んでもお断りですっ! 」
僕の腕に抱き着きながらニンメイちゃんは断固として拒絶する。
こいつらが本当に嫌なのだろう。
だから僕をダシにしてでも、断りたいのだろうな。
たとえ僕たちを引き入れたとしても、人員がいなくてはまわらない。
親方は否が応でもある程度の人員を確保しなければ、仕事ができないことは痛感している。
もういい人たちは出て行ってしまったんだ。
だがステータスが上がった今の僕が一人いれば、もうある程度まわるだろうけど。
そんなことは戻る気のない僕には、もう関係ない話だ。
「これ以上嫌がるニンメイちゃんに関わらないで欲しい。話が終わりなら、帰らせてもらう」
「このジジイがっ! 黙って従えっつってんだよ!」
なんと殴り掛かってきた。
俺の腕に抱き着いている小さなニンメイちゃんがいるのに、本当に救えないやつだ。
「やめろ。近くに女の子がいるのに、何を考えている」
「ガァッ!? 拳が割れっ」
喧嘩自慢のようだが、数々の命のやり取りで強くなった僕には効かない。
子どものパンチくらいにしか感じられない拳を、片手で制した。
そして壊れない程度に、握りつぶしてやる。
この最低な男に、僕は低い声で忠告した。
「わからないようだから、言葉にしてやる。二度とニンメイちゃんに近づくな」
拳を押さえながら、僕に恐怖している元同僚。
そして目的の退職証明書を取って、僕達は去った。
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