第155話 「歪みきった家」
「いい加減にしてくれたまえよ。さっきから何の騒ぎだ?」
そこに訪れたのは従妹のアクレイ。
はとこであるコックロもいる。
アクレイの目は赤くなっている。
コックロと一緒に泣いていて、彼女に慰められていたのだろうか。
「おおアクレイ!!! マノワールを説得しておったのだ! 我が息子に領地を継がせよう! お前とて反対はしまい!」
「アクレイちゃん! マノワールちゃんと仲が良かったでしょう! あなたと結婚させて、その子供に領地を継がせればいいのよ! まだ5人くらいは産めるでしょう! その中には成功作が必ずいるはず!!!」
アクレイは嫌悪感を浮かべる。
そうだよな。
僕なんかと結婚するだなんて、怖気が走るだろう。
彼女だって感情がある。
好き勝手を言われて、結婚相手まで無理やりに決められていい気はしない。
彼女は結婚をしていないらしい。
きっとこういった人間関係が煩わしくて仕方なかったのだろう。
無理やりに僕なんかと暮らして、子どもまで作るなんて苦痛を味合わせてはならない。
「誰に断ってものを言っている!!! 現当主はボクだ!!!」
「すまないアクレイ! 有能なお前に相談してからすべきだった」
「ごめんなさいアクレイちゃん! 有能なあなたなら絶対そうすると思ったのよ! 先走ったことについては謝るわ」
猫撫で声で機嫌を取ろうとする両親たち。
本心では面倒臭がっている事だろう。
頓珍漢なことを言っているのに、誰も気づいていないだろうな。
だがそれを不思議に思うのは、この家の血筋以外ではニンメイちゃんだけ。
「違う」
「まさか時間を置いて冷静にならないとわからないのか? これがどれだけ合理的なことか、お前とてわからないはずもないだろう? ここまで力強い男が、世界のどこにいるという? 一体何が不満だというのだ?」
「お願いだから癇癪を起こさないでね……感情を制御できない子はどう思われるか、まさか現当主がそんなことしないわよね?」
「違う!?!?!? 承認を得るのはお兄様にだ!!!!!」
アクレイは叫ぶ
許可を得るのが先だと。
……僕の承諾?
突然の発言に困惑を隠せなかった。
「なぜおまえたちは人の気持ちを考えない!?!?!? なぜ感情のある人間が、こんなことを言われて怒らないと!? 悲しまないと思わないんだ!?!?!?」
「何を言うのかと思えば……わかった。すまなかったなマノワール。こんな事件があった後に、急な話だった。ゆっくり考えてほしい」
「アクレイちゃん。あなた疲れているのよ……辛かったわね。今はしっかり休んで頂戴」
「一番有能じゃなくなれば、平気で裏切る奴らをどうやって信用しろというんだ!? そんな領地は容易く滅びるに決まっている!!!」
失望したような眼で、アクレイを眺める両親たち。
結局彼らは人間の心など解さない、決して分かり合えない生物なのだ。
「その実力は誰が計るんだ!? お前たちみたいな輩ばかりが実力を査定した結果、一番有能なお兄様が追放されたんだろうがっ!!!」
「ああ。確かに私たちは失敗した。否定できない落ち度だ。だがマノワールには様々なアプローチから教育を施して、育ててみたが当時はあのザマだった。私たちが全力を尽くしたこと対しては、否定できやしまい?」
「話を逸らすな責任から逃れるなっ!?!?!? お前たちが無能だから、お兄様を追放したんだろうがっ!!!」
「口を慎め!? 誰が無能だぁぁぁぁぁっっっっっ!?!?!?」
「ボクより無能の癖に指図するんじゃないっ!!!!!」
烈火の如き怒りを呈するアクレイ。
僕はそれを聞いて嬉しかった。
彼女は今も、心優しい小さなアクレイのままだったのだ。
無能と言われて、激昂する父。
彼は、彼らは自分の自尊心が傷つけられることが、何よりも苦痛なのだ。
それすらも合理性と勘違いをしている、根本的に矛盾した生き物だった。
「今更になって都合のいいことを言うな!? お兄様を追放させたのは、お前たちだ! 傷つけた奴らが忘れたって! 傷つけられた方は、一生痛みが消えないんだ!!!」
「アクレイ」
涙ながらに必死に叫ぶ従妹の女性。
そうか。彼女は僕のために怒ってくれているのか。
彼女の泣く姿に悲しみを覚えるも。
僕のために怒ってくれたことが嬉しかった。
そんな僕もどうしようもない人間なのだ。
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