第151話 「ヒロインレース」
「うん。一番お互いを知っていて、気の置けない仲ではあるのだけれどね……」
知り合いの子どもだったので、家族ぐるみで付き合ってきた子。
実の子どものように見守ってきたニンメイちゃん。
アクレイやコックロはやっぱり20年近く離れていたからな~
偶に好みが変わっていることが発覚したりして、ぎこちない雰囲気になることもある。
でもニンメイちゃんは、もうずっと一緒に居た家族同然だ。
「うぅ……やっぱり新参のわたしは、親しくすら成れませんか~」
しょんぼりしている褐色肌の魔物女性。
そうか。彼女は僕と距離感を縮めようと、あのように言っていたんだ。
本当に空気が読めないダメな男だ僕は。
こんなんじゃ女性とお付き合いなんか、できるはずないよ。
相手の気持ちを労わる事こそが、人付き合いにおいて必要なんだから。
「いやいやいやいや!? オキャルンさんも真の仲間だと思っておりますよ! もう半年以上も命のやり取りを共にして、食事だっていつも一緒に頂いているではありませんか! 年月の重みも大事ですが、やっぱり心を通わせ会う事が最も大切だと思います!!!」
「はう~♡ 心が通い合った二人は、どうなってしまうのでしょうか~」
赤面したオキャルンさんが、頬に手を当ててモジモジしている。
かわいい。
どうやら気を揉ませてしまい、泣かせてしまうところだったようだ。
口下手なのに不用意な発言は控えるべきだろう。
彼女の心を危うく傷つけてしまうところだった。
「絶対に敵わない大きすぎるおっぱいからシャットアウト!!!!! マノワールさん!!! わたしの姿を見てください!!! ほら!!! イケない気分になってきたでしょう!?!?!?」
「とてもカッコいいよ。君の可愛らしさも引き立てられている」
忍者という職業に適した、異国情緒溢れる造りの衣服。
装備としても尋常でない質の代物だという。
忍者メイド服を装備している彼女は、とても可憐でどこかしらからか色気が放たれている。
おじさんの目には毒な、男を誘惑するような煽情的な仕立てなのだから。
「隠密や潜入、工作スキルなども磨き上げましたが、女の色気も磨かれているのですよ! ほら♡」
「ダメだよはしたない。そんなポーズを見られたら、大変な目に遭ってしまうかもしれない。まだ男の考え方が分からないのかもしれないけれど、自己防衛というのはしなくちゃいけないよ」
女性の象徴を強調するように、両腕で挟み込んで官能的な表情をする。
直視してしまったら、流石にドン引きされるような反応をしかねない。
まだお付き合いもしたことがないらしいから、男の怖さが彼女はわからないのだろう、
僕も父親目線でしか接してこなかったし、いい子だから周囲の人間に信頼してしまうのだろうな。
ショワジ組の奴らには、しょっちゅう言い寄られていたけれど。
でもあいつらは酷過ぎるだけだったから、人間扱いしなかっただけだろう。
普通の人間だって無害な顔をして、詐欺師みたいに襲いかかって来るんだ。
口を酸っぱくして説明しているんだけれど、その度に抱き着いてくるんだから困ってしまう。
父親代わりに世話しているんだから、責任を果たさないと。
「むぅ~~~! なんでわかってくれないんですか!? 本当に鈍感すぎて、呆れちゃいます!!!」
「え? なんだって?」
抱き着いてくるニンメイちゃん。
胸部を守る装甲があってよかった。
なければ度重なる誘惑に耐えかねていたかも。
何か言っていたような気もするけど、エッチシーンに集中してしまい聞き取れなかった。
昔から抱き着いてくるこの子だけど、あまり感触は変わらないような……
この子の母親もあまり大きくはないし、やっぱり……
じゃない。
父親のように接してきたけど、だからこそこの子の将来のために注意しなくては。
「こら。そんなことしちゃダメでしょ」
「ズルいです! 私だってエッチな目で見てください! いつも私の身体に厭らしい視線を向けているんですから!」
「私も負けませんニャ! こうなったらマノワールさんの前では、もっと露出多くしますからね! いや臭いフェチなら、むしろ着込んでチラリズムをいざという時に……!」
「マノワールさんは、わたしのような体型はお嫌いですか~? いつもおっぱいを見てくるから、きっとお好きですよね~」
皆が押し寄せてきて、その体重を預けてくる。
柔らかすぎる……!
なんでこんなに女の子は柔らかくて、いい匂いがするんだ。
男として催してしまう。
イケないので、なんとか引き離そうとするが、強引な手段は取れず参ってしまう。
陽キャたちは僕の気苦労も知らず、好き勝手言っているようだが、女性陣の黄色い声で聞こえない。
というかいつも一緒に話しかけてきて、聞き取れないんだ。
「兄貴マジやべぇ~~~! ハーレムじゃねアレ!」
「やっぱ半端ねぇわ~! エルマージの姉御たちもいるんだからよ」
「ああは絶対なれねぇわ! くぅ~~~! だから憧れんだよなぁ~~~!!!」
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