第144話 「真面目系クズの末路」
「なにっ!? どどどどどうすれば!?!?!?」
突発的自体に右往左往しているチギュドー。
予め危険を予測し、逆算して対抗策を練らないからこうなるのだ。
やる気がないから最低限の仕事しかせず、このような結果に追い込まれている低能が彼のようになる。
そしてみっともなく見下していた人物に押し付けようとしている。
自らの怨敵であるはずの男の名を頼りにして、情けなく部下に尋ねた。
「マノワールはどうした!? 呼んで来い!!!」
「もうどこにもおりません! 幸い要塞線で止まっておりますが、迎撃しなければ時間の問題です!」
「使えないやつだ! やっぱり冒険者あがりはだめだな! そ……そうなると僕が出陣しないと、侯爵様に怒られてしまう」
小心者のチギュドー。
彼は領民を守れないという事ではなく、怒られるのが嫌なのだ。
主体性に著しく欠けるからこそ怠慢であり、評価されないのであるが。
本人は他人が見る目がないと思い込んでいる、救えない人間なのである。
「しゅしゅしゅしゅ出陣しゅるぞっ」
声は震えて、膝も笑っている。
そんな主君の姿に内心ため息を吐きながら、不安になる騎士たち。
運動が全く得意でない、事務畑出身の彼。
なのにサボってばかりいるから、軍学も碌に修めていない。
デスクワークばかりしていた彼は、戦地に赴くだけで体力を使い果たしてしまうだろう。
そして戦地に到着した瞬間、夥しい数の魔物たちが見えた。
それが堰き止められているのは、マノワールが建設していた要塞線のおかげ。
その恩義すら頭から都合よく吹き飛んでいるから、恨みや妬みしか頭に残らず。
彼の内心が滲んだ態度が周りに見抜かれているから、ハブられているのだ。
「もういい! 逃げる! 僕は悪くない!!!」
「戦友たちを見捨てるおつもりですか!? 領民たちもいるのですよ!?!?!?」
一瞬で放棄することを決断した。
為政者として最悪の行動である。
部下たちは悲鳴を上げるように非難する。
普段は癇癪を起して、罰しているだろうが、今のチギュドーにはそんな余裕はなかった。
我先にと兵たちを押しのけて、逃げ帰ろうとした、
「知るか! 友達ごっこはバカだけでやってろ!!! 僕の命はお前たちと違って尊いんだぞ!?!?!?」
唾を吐き散らかして、醜悪な表情で我先にと逃げる。
チギュドーのような矮小な人格の人間は、自分さえよければいいのだ。
それを取り繕う頭もないから、誰からも相手にされないのだ。
騎士たちは逃げられない。
逃げたら家族や友人が犠牲になると知っているからだ。
「もうそこまで迫っております!?」
「やめろぉぉぉぉぉぐわぁぁぁぁぁ!?!?!?」
ついに決壊する要塞線。
人類の敵たちは我先と殺到した。
魔物たちも生き物。
集団でいる敵よりも、多少離れていても孤立している獲物を狙う。
その結果、一人だけ惨めに逃げていたチギュドーは当然の末路を辿る。
生きたまま肉を貪り食われ、それを取り合う魔物の中で絶望のまま一生を終えることとなった。
「僕は真面目に働いていただけだったのにぃぃぃ」
そう言うが、彼が腰抜けだっただけ。
他人に負担を押し付け、上から目線で見下しているばかりで、信頼関係を築こうとしなかったが故の結末。
真面目系クズというのがピッタリの言葉。
要塞線が突破されたことに気づいた貴族たちは、ようやく応戦に取り掛かるも。
優位地形を取れずに、モンスターに大半が飲み込まれる。
なんとか防衛は果たせたものの、部隊は壊滅状態。
侯爵家の戦力は破綻していた。
よって他の貴族たちも絶命の憂き目に遭うことになる
余談ではあるがマノワールがいなくなったことで、要塞線構築や食品供給は全部ストップした。
これらはマノワールの個人能力、オキャルンの食糧生産力が中心だったからである。
もちろん自分たちを守れない領地に居れば死ぬだけなので、多くの民は着の身着のままで他領に流れていった。
領民の命が救われたことは僥倖ではあったが、侯爵にとっては痛恨どころではない致命的な失敗。
一番失ったものが多かったのは、彼なのかもしれない。
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