第143話 「怨嗟を吐くチギュドー」
突貫工事で建てられた粗末な造りの建築物。
足を踏みしめるだけで、床が軋むプレハブ以下の代物だ。
そこに屋敷を陽キャたちに破壊された、チギュドー男爵は滞在していた。
怨恨を剥き出しに、絶えず呪詛を口にしている。
「あの陽キャども! 誰に楯突いていると思っている!? ああやって僕のことをいつもバカにしてるんだ! キィーッ!」
顔面コブや痣だらけにしながら、ハンカチを嚙み。
被害妄想を募らせ、癇癪を起こしていた。
「スポーツが苦手なのに誘おうとしてくるし、会話に加わりたくない僕のことを弄って来るし……昔から大勢で囲んでくる、最低なイナゴみたいな奴らだ! だから嫌いなんだ!?」
おそらくは学生時代の苦い思い出を思い返しているのだろう。
しきりに恨みつらみを呟いている。
しかしそれは恐らく陽キャたちから、仲間の輪に入れてあげようという心遣いだったのだろう。
それを理解しないまま、彼は逆恨みをしていた。
「それにあのマノワール! あの底辺オッサンが僕を見下してきやがって!?!?!?」
一際憎しみが籠った目で、マノワールを罵倒する。
かつては自分より圧倒的に格下であったはずの、特徴が薄い中年男。
それが分不相応にも、選ばれし血族の自分と同格に、いつの間にか登りつめている。
自らよりも重用されているという嫉妬は、彼のプライドを粉々に砕け散らせた。
「腕っぷししか取り柄のない低能の分際で、ずっと真面目に働いてきた高貴な僕を~!」
地団太を踏みながら、自尊心を取り戻そうとするチギュドー。
彼はデスクワークで成果を上げてきた自分を、誇りに思っているらしい。
ちなみに真面目にとは言うが、やれと言われたことを最低限にしかこなさない。
人付き合いも悪いし、いつも不機嫌でとっつきづらい。
誰からもほとんど評価されていないのだ。
ハッキリ言ってマノワールよりも、同僚の貴族たちからは見下されていたし。
あまりの政治力のなさに嘲笑われていた。
だから汚職にすら誘われなかったのだ。
誰からも信頼関係を結べないから、秘密の共有などできるはずもなく。
最近他貴族と縁ができたのも、繰り上がりで重用されるようになったチギュドーに利用価値が生まれただけである。
彼以外に粛清されていない貴族たちは、情状酌量の余地があることと、単に証拠不十分なだけである。
それに気づこうともせず目を逸らして、趣味に没頭しているというより逃げているのである。
「そんなアイツらも、もう終わりだ。不幸にしてやるんだぞ。陽キャどもが来たことを連絡しないで、マノワールの領地に押し付けてやったように。失政や汚職も全部押し付けてやる。勝手にいなくなって、馬鹿な奴らだ」
厭らしい笑みを浮かべて、陥れてやろうとと彼は企んでいる様子。
まるでヴェンリノーブル侯爵がそれを見抜けないような口ぶりだが、彼は現実が見えているのだろうか?
「僕が告げ口してやって破滅したあのサンシータ! あれは傑作だったぜ! あのいけ好かない野郎みたいに、全員まとめて社会の底辺に蹴り落としてやる!!!」
おそらくはサンシータに常日頃から小馬鹿にされていたのだろう。
まともに相手にされていなかったのは間違いない。
告げ口してやったとは言うが、それは彼の能力的な問題からサンシータに金銭を奪われた領民の陳情だけ。
領地ぐるみの汚職に気づけるほど、彼は賢くなかった。
華麗に復讐を遂げたと思い込む彼は、その時を思い返して汚い笑顔で喜んでいた。
大したこともない過去の栄光に浸る、思いあがった小物。
そういった人間社会への理解度が欠如しているから、こうなったことは微塵も不思議ではなかった。
「チギュドー様! 魔物たちが襲来しております!?」
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