第142話 「アクレイの元に出発」
「アクレイに? でも迷惑じゃ」
「なら集落のみんなや陽キャたちに、迷惑をかけ続けるのはどうなんだ? 頭を下げて、何でもするべきだと思う」
コックロは滔々と説得する。
侯爵家当主になっていた従妹のアクレイ。
その提案に余り驚きはない。
でもそれと顔を合わせにくいことは別問題。
会って謝りたい。
でもそれは僕の勝手で、向こうは迷惑がるかもしれない。
そう思うと情けなくも怖くて言葉は出てこなかった。
「最後は喧嘩別れだったろう? でも現実問題こうなっては、彼女くらいしか伝手がないだろう」
「……」
「私達には武力がある。建築スキルだってあるし、学があるエルマージとオーエラ、ミーニャがいる。食いっぱぐれないくらいの手間賃くらいは貰えるはずだ」
「コックロさんの言う通りだと思います。このまま何もしないでいては、数週間しか持ちません。お金はそこそこありますが、これだけの大移動ですと、どれだけ足元を見られるか……」
オーエラさんも同調している。
そうだ。もう僕たちにはお金を稼ぐ手段がない。
自分のことで精一杯で失念していた。
本当にダメなオッサンだ僕は。
「もう彼女もいい大人だ。仲直りしてほしいというのは親戚としての我儘だろうか?」
人間関係はもうこりごりだ。
養いきれない人たちなどは、できればアクレイに預けに行きたい。
彼女は人格者だし、僕のことを嫌っても罪なき人々は受け入れてくれるはずだ。
「いや……恥を忍んで、頼みに行こう。みんなを預けてもらうだけでも違うから。僕の頭くらいにならばいくらでも下げよう」
「ありがとうございあますマノワールさん~どう恩をお返しすればよいか~」
「いえ。僕は最後まで領主としての責任を果たすまでです。自分で決めたことなのですから、気に病まず」
始まりはどうあれ、彼らの生活を保障したのは僕。
それを最後まで面倒を見なければ、とんでもない無責任男になってしまう。
オキャルンさんは嬉しそうに、僕に礼を述べた。
そして爆弾発言を投げかけてくる。
「あの子たちの生活に目途がついたら、マノワールさんに恩義をお返しできるようにお仕えしたく存じます~」
「お仕えって……僕はもう貴族ではありませんよ。お気持ちだけで十分です」
「人間の子たちはとても寿命が短いので、100年くらい大したことではございません~それにマノワールさんは、わたしの赤ちゃんですから~」
「まだそれ引っ張りますか!?」
スケールが違い過ぎる魔物、それでも重すぎるだろう!
てか赤ちゃんって本気で言ってるの?
ニンメイちゃん達もドン引きしているよ!
男の異常性癖なんて、聞きたくもないはずだよ!
「マノワールさんにお仕えするのは私だって同じですよ! マノワールさんがお望みなら赤ちゃんプレイだって辞しません!」
「マノワール。私も伴侶には寄り添うたく思う。エルフは身内には尽くすんだ。極力尊重したい」
「にゃ……正直気は進まないけど、ミーニャも尽くすタイプだから安心してニャ……」
「私もどんとこいですよ!」
「みんな待ってよ!? 誤解なんだ!? いやわかってて揶揄ってるでしょ!?」
必死に止めようとすると、皆はコロコロと笑いだす。
意地悪だなぁ……
コックロは苦虫を嚙み潰したような表情で俯き。
まさに断腸の思いというような口ぶりで、呻くように発言した。
「私は甘やかされたい派だが……努力しよう……」
「苦渋の決断をしないで!?」
何を思い悩んでいるのかと思いきや、本気かどうかわからない冗談はよしてくれよ!
体は大きくなったけど、昔から変わらないな!?
「楽しい方々ですね~ママとして頑張りますよ~」
「仲間として!!! よろしく頼みますよ」
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