第141話 「領主をやめて出奔するマノワールたち」
僕は屋敷に帰ってから、みんなを集めて説明した。
顔を合わせる事すら辛い。
「そんなわけだ。みんな済まない」
深々と頭を下げる。
いつも迷惑をかけている、
もう愛想を尽かされても仕方ないだろう。
パーティ解散かな。
「そうか。なら私も領主をやめる」
「えっ!? 君には関係がないじゃないか!」
「いや。お兄ちゃんがいなければ、あの領はもう終わりだろう。領地防衛ができる有能な人間がいない。チギュドーにお兄ちゃんが糾弾されていた時、誰もとりなしてくれなかったのは、内心でお兄ちゃんが出奔することを歓迎していたからだろうな。その時点であの領に未来はない。いくらヴェンリノーブル侯爵様が有能でも、手足となる彼らが言う事を聞かないのではな……」
辛辣に、しかし悲しそうに口にするコックロ。
彼女も世話になった侯爵に無断で出奔するのは、気が咎めるようだ。
「侯爵に手紙は出したが、もう遅いだろう。どんなに早く来ても、王都から一週間はかかる。その間に確実に事件は起こっていた。私がいたところで、大したことはできない。お兄ちゃんがあの領を出ていくことを決めたところで、もう終わりは決まっている。何もかもそれで終わりなんだ」
「そんな……僕のせいで領民たちが……」
「お兄ちゃんが集落のみんなや陽キャたちを連れて逃げていなければ、チギュドーが何をしていたかわからない。魔物たちを相手にしながら、領民を他貴族から守るのは不可能だ。どんなにお兄ちゃんが強くとも、身体は一つしかない」
考えれば考えるほどに詰んでいた。
他に方法はなかったのだろうか。
武力に劣るオーエラさんなどの仲間にも、類が及びかねないという危険から貴族となった。
貴族になる事で法的に、また数的に武装することができ、権威に従う姿勢を見せられる。
貴族社会は席次を気にするもの。
一人の人間の勤務態度を含めた評価は、親類縁者などにも影響します。
余命が少ない僕は仲間たちのためにも、貴族社会で生きるなら馴染もうとしなければならない。
従順に頑張っていたはずだったのに、このザマか……
なんて僕は間が悪い、ダメなオッサンなんだろう。
「考えても仕方ないマノワール。手にあるものを守るだけで、私たちは精一杯なのだから
「エルマージ。でも何かできたはずなんだ。もっといい方法が、僕が愚かでなければ見つかったはずなんだ……」
「マノワールさん……昔から自分ばかり責任を抱え込まないでください。だからマノワールさんがいなくなって、あの組も破綻したんですから」
「そうだ。そうだったな……僕は昔から成長出来ていない。周りなんて見えちゃいないんだ……」
ニンメイちゃんに諭される、年齢ばかり積み重ねた男。
情けなさ過ぎて、自分が惨めになった。
自分だけが頑張るだけじゃいけなかった。
一人だけじゃできない事ばかり。
それなのに自分ばかり無理をしたから、あんなふうになってしまったのだと今ではわかる。
皆が間違ったことをしたら、断固として立ち向かい、説得しなくちゃならなかったんだ。
最初から諦めていたから、ショワジ組は皆で最悪へと突き進んでしまった。
もちろんそれでもダメな時はあるけど、最初から諦めるのは絶対に違うんだ。
「一人で抱え込まず、皆を頼ってって言ってるんですよ!!! 私たちは守られるだけじゃない! 仲間なんですから!!!」
「私も頼ってもらえた時は嬉しかったニャ! それがパーティなんじゃないかニャ? 元教師として、それだけはアドバイスできると思いますニャ」
「オーエラさん……ミーニャ……」
彼女たちの気遣いに心が温まる。
なんていい仲間たちと巡り会えたのだろう。
そしてだからこそ惨めになる。
彼女たちに頼りっぱなしで、いつか恩返しをしなくちゃな。
「僕は本当にダメでさえないオッサンだ。だから助けてほしい」
「当たり前ニャ!」
「マノワールさんのお世話は、ずっとわたしが務めていたんですから!」
「ありがとう。ミーニャ。ニンメイちゃん」
みんないい子たちばかりだ。
だからこの仲間たちで、ずっと一緒に居たいと思う。
「湿っぽい話はやめにしよう。これからのことを考えるのが先決だ。アクレイに会いに行って頼もう。実は今当主なんだ」
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