第14話 「魔物の異常発生についての、ギルド報告」
オークの群れを討伐したことで、受付嬢のオーエラさんはとても驚いていた。
報告の際にアイテムボックスから次々とオークの死骸を取り出せば、彼女は大きな目をもっと見開いていた。
「オークの群れをこんなに!」
「運よく倒すことができました」
「これだけ狩れるなら、運なわけないですよ!」
余りの大戦果に、自分のことのように興奮している。
熱っぽい視線で僕の顔を見つめていて、なんだか気恥ずかしい。
なんだかニンメイちゃんが不機嫌だがどうしたのだろう?
僕の腕の裾を握っているが、今になって怖くなっちゃったのかな?
女の子だから仕方ないか。
「ありがとうございます。それよりも気になることが。これだけのオーク、いるものなのですか? 冒険者たちが間引いているはずだと思いますが」
「明らかな異常です。ギルド長に報告しておきますね。最近多いのですよね」
「こんなことが他にも?」
「はい。私の知り合いのパーティも全滅して……」
気落ちした口調のオーエラさん。
隣で真っ青になっているニンメイちゃん。
そうだ。これは殺し合いの稼業。
覚悟していた衝撃の事実だが、ここまで身近に死を感じると精神的にきついな。
「死なないように、僕は全力で気をつけます。大切な人の命を預かっているのだから」
「マノワールさん」
顔を真っ赤にさせているニンメイちゃん。
恐怖にたまらなくなったか、僕の胴に抱き着いてきた。
きっと心寂しかったのだろう。
「むっ……! 目の前でそうされるのは妬けますね」
「えっ? あはは……そんなんじゃないですよ。ニンメイちゃんはこんなオッサンなんて、父親のようにしか見えてないでしょうし……」
「なら私も脈ありでしょうか♪」
「オーエラさん……あまりオジサンを揶揄うのは……」
若い身でこんなオジサンを狙うなんて、ありえないだろう。
恋愛だなんて、この年になったらもう諦めている。
素材を引き取ってもらうため清算を促そうと、やんわりとニンメイちゃんを引き離す。
その時に懐かしい声を背後からかけられた。
「――――――マノワールさん! 奇遇ですね!」
「これはお久しぶりです」
「むっ……邪魔が入りましたか」
「いいところだったのに」
昔、取引先だった方だ。
助かった。
女性からそういう風に揶揄われるのは苦手なんだ。心臓に悪い。
何故か頬を膨らませている二人を横目に、話に興じる。
僕の目の前にあるオークの死骸について、目についたようだ。
「それはオーク! こんなに狩ったのですか!」
「ええ。一応は私たちが狩りました」
オークの骸が積み上げられたリヤカーを見て、彼は驚愕している。
他の冒険者たちも感嘆の視線を送っている。
「さすがはマノワールさんだ! 冒険者としてもこれ程の実力を発揮されるとは!」
「買い被りですよ。昔から口がお上手ですね」
「そんなことはありません! 本当に優秀な方でいつも助かっておりました」
「マノワールさんは凄いんですよ!」
「おお。お久しぶりだね。ニンメイちゃん」
いつもお茶汲みをしていたから顔見知りなのだろう。
祖父と孫娘のような年齢差だ。
かわいい子だし、取引先企業からもとても人気があった。
あの会社の変な奴に引っかからなくて、いつもハラハラしていたがよかった。
でもなんで彼氏が一度もできたことがないのだろうか?
まだ若すぎる子だから、恋愛感情がわからないのかもな。
「ここまで凄い冒険者になっていたとは、御見それいたしました」
「いえ。それに長く続けるとは思ってませんので」
「いつも謙虚でいらっしゃいます。これだけの実力ならば、もっと上を目指せることでしょうに……そうだ! すこしお待ちください」
上質なメモ帳とペンを取り出し、何かを描き込んでいる。
何をしているのかと疑問に思っていれば、数字が書かれた書類が差し出される。
「もし私と取引して頂ければ、これだけお勉強しますよ」
「三割増しも! こんなに! しかしギルドに報告となる証拠品となりますので、すぐには私からご返答できないのですが」
「それでしたら数日でマノワールさんに、お返しできるかお知らせできるかと思います。他店との取引でしたら申請してくだされば、その時お返しいたします」
オーエラさんがフォローを入れてくれる。
売れるのか!
ここまでの量なら、まとまった凄い金額になるぞ!
「商売敵でしょうに、横槍を入れてしまい申し訳ございません」
「これだけの実力を持った冒険者に、そして村を救ってくれた方に、ギルドは惜しみない援助をします」
「流石は天下の冒険者ギルド。今後とも贔屓にさせて頂きます」
「こちらこそ増々のお引き立てをお願いいたします」
利害対立があるかと思ったが、杞憂だったようだ。
オーエラさんには助けて貰ってばかりだな。
有能どころか人柄も最高だし仲良くなれたら、なんてこんなオッサンには身の程知らずの考えだな。
「それでは受け取り次第に、またお願いできますか」
「ええ。よろしくお願いいたします。大変いい商談でした。っと次の打ち合わせがありまして、本当に申し訳ない。あとで詳しいお話を詰めさせて頂きたく」
人好きのする笑みを浮かべて、商談をまとめ上げた目の前の商売上手の男。
そして忙しなく時計を眺めて、彼は頭を下げて辞意を申し出る。
実力のある商売人だ。
仕事が押しているのだろう。
「それと比べてあの人たちと来たら」
「あの人たち……とは?」
「ショワジ親方のことですよ! マノワールさんがいなくなってから、もう散々だ!?」
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