第138話 「バーベキューで繋がれた絆」
箱を開けて、彼らに内部を見せつける。
売り切れないほどの肉の量。
最初は怪訝な面持ちだった陽キャたち。
しかし僕たちが次々とバーベキューコンロの上に肉を乗せて、点火していくと食欲を誘ういい匂いが立ち込めていく。
「ヨシ! ウマい! お前たちのコンロで焼かせてもらった焼肉、超ウマいぞ!!!」
「ずりぃぞオッサン! 何勝手に人の私物使って、食ってやがる!?」
そうは言うが陽キャたちは次々と肉に群がっていく。
僕の思った通りだ。
「若いんだからあのくらいじゃ足りないだろう! お前たちが食いきれないほどあるぞ! 集落の皆さんもどうぞ! 僕と陽キャたちの奢りです!!!」
「僕あれ食べたい!」
「無料という事なら……」
おずおずと顔を出し始める、集落の住人達。
そしてみんなで一緒にバーべーキューを囲めば、そこには一体感が生まれていた。
陽キャたちに一時は反感を覚えた。
けど彼らがなぜ仲間を大事にして、イベントをするのかわかった気がする。
皆と楽しい時間を共有することで、心は繋がるんだ。
「俺、オッサンの事誤解してたわ!」
「女の子たちゴメンな……俺たちが間違ってたわ。金なくて腹が減ってて、頭おかしくなってた……」
「反省したならいいけど、もうやめてよね!」
「私は紳士的な男の人が好みなの。誘い方が童貞なのよ。口説き方くらい勉強しなさい」
ぽつりぽつりと謝りだす陽キャたち。
自分たちも悪いことだとわかっていたが、経済的困窮から自暴自棄となっていたのだろう。
傷ついた女性たちに謝り始めると、彼女たちも話し合いに応じてくれた。
憎まれ口をたたくも、もうあまり気にしてないようだ。
「俺、オキャルンちゃんに集落の作業手伝うわ!!! もちろん許してくれなんて言わねぇ! でも男としてケジメはつけなくちゃならねぇ!!!」
「俺もだ! 人とか魔物とか、いい奴なら関係ねーよ!!!」
「お前ばっかにいいカッコさせるかよ! 俺が一番頑張って、一番モテるようになるんだかんな!!!」
爽やかに遺恨を捨てる快男児たち。
根が悪い奴らではないのだ。
冷静になることができれば、対話できる。
陰キャとか陽キャとか関係ない。
僕達は心を通わせれば、手を取り合う事が出来るのだ。
「働いてくれるなら給料は払うよ。移民してくれたんだからな」
「マジっすかコックロさん! 感激っス!」
「悪いことをしないなら歓迎するぞ。もちろん集落のみんなもそうだろう」
この領地は人手が足りなすぎる。
魔王の大侵攻まで時間がないかもしれない。
僕も領主としての仕事があるし、土木工事を委託できるならしたい。
彼らが優良な労働力になってくれれば、こちらも助かるのだ。
「俺らバカで礼儀知らずだから、いつも貴族さん達に鬱陶しがられてて……」
「曲がったことは許せねぇから、ツッパってたら地元を追放されて……」
「自分が信じたことを貫く。そんなことをしてたのによ。いつの間にか貴族たちと同じように、無理やり女の子を口説こうとしてた……情けねぇ……」
彼らにも辛い過去があった。
悪い貴族たちから女性を助けようとして、でも社会から認められなかった。
いいことをしたはずなのに、追放されてしまう。
彼らは過去の僕と同じだったのだ。
環境のせいで本来はまともだった性格がねじ曲がってしまった結果、こうなってしまったのだ。
「そうか。辛かっただろう。僕と一緒だ……僕たちも―――――――」
僕は過去の経験を話した。
思い出したくもない、辛い記憶。
彼らは自分のことのように怒ったり、泣いたりしてくれた。
それは彼らも共感できる、もしかしたら同じような目に遭ってきたからなのだろう。
「マノワールさんたちの家族や同僚、ギルドの奴ら許せねぇ……! 迷惑も考えずナンパして、オキャルンちゃんに酷いことを言った俺らが、言う事じゃないけどよ……!」
「領主さんたちも俺らと同じ、いやもっと辛い思いをしてたんだな。ここの集落の人達も捨てられて追放されて大変だったところを、俺たちはなんてバカなことをしちまったんだ……」
「わたしはもう気にしてませんよ~仲間として一緒に頑張ってまいりましょう~」
「うぅ……オキャルンちゃん……すまねぇ……!」
泣き出して後悔する陽キャたち。
僕たちは同じだったんだ。
だからこそ集落の女の子たちも涙ぐんで、共感している。
仲直りできたようだ。
「お前たちは謝ることができた。僕はそれをするのに、二十年以上かかってしまった。でも妹分は許してくれたんだ」
「コックロの姉御。美人なのに男気すげぇ! 尊敬するッス!」
「感゛動゛じだ!!!!!」
「やめんか恥ずかしい!?!?!?」
コックロは焼き肉を食べながら照れている。
ポニーテールを揺らして、抗議している姿が可愛らしい。
「人はやり直せる。ここから始めていこう。僕について来てくれないか?」
バーベキューは人と人を繋ぐ、素敵なイベントなのだろう。
肉を焼くだけで楽しい。
そして語り合いながら、後始末まで協力し合ってできる。
絆を紡ぐ、そんな儀式なのだ。
「「「「「「「「「「兄貴!!! 一生ついていくっす!!!!!」」」」」」」」」」
「兄貴?????」
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