第126話 「バブみ魔物娘とお爺ちゃん赤ちゃんモンスター」
結構これは柔らか……じゃない!
僕は衝撃で固まってしまい、思考停止する。
「マノワールさん。あなたも愛されない子だったのですね。捨てられて働くしかなかったとは、可哀そうに。わたしが今からあなたのママですよ」
「ママ!?!?!? いやいや僕はもう子供じゃないですよ! もう働く年齢なのは当然なオッサンです!!!」
「子どもがいないならば、まだ子どもです~性的に成熟していない証ですから~」
「がはぁっ!?!?!?」
余りの攻撃力に、心臓が引き裂かれそうに痛んだ。
それは悪意を持って言ってませんよね?
いやもう同年代で、孫もいる奴もいるのは知ってるんだ。
結婚適齢期の20歳で結婚して、すぐに子供を作る。
そして子どもも20くらいで子どもを作れば、今頃は離乳食を食べている孫がいる計算になる。
というか人生50年が普通のこの世界。
僕の寿命はあと9年しかない計算で、普通はどう余生を送るか決める年頃なのだ。
「どうしたのですか? もし大人なのでしたら番をつくって繁殖しているはずです。成長が他の子よりも遅くても、気にしなくてもいいのですよ。人それぞれ、自分のペースで成長すればいいのです。それを支えるのが大人の仕事なのですから」
「大人の仕事……成長が遅い……」
善意だからこそ、心が抉られる。
こう聞くと、自分がいかに何もしてこなかったのかを突きつけられる。
そうだ。僕はもうオジサンどころではなく、お爺ちゃん。
お爺ちゃん赤ちゃんという、とんでもないモンスターなのだ。
「まだ41歳なのですから、赤ちゃん同然です。大丈夫。他にもたくさん子どもを育ててきたのですから、一人くらい増えても大したことはないのですよ」
「いやもう僕と同じ年齢でも、孫がいるやつもいるんですよ。てかあのそろそろ離れて……」
「魔物は種族差が激しいので、そんなこと普通です~他者と比べるのは不毛ですよ~」
これは母性的で柔らかく、結構なものをお持ちで……
じゃなくて、いい加減に抱きしめながら撫でるのをやめてほしい。
種族差というが、僕は人間なのだが……
だがオキャルンさんは本気で言っているみたいだ。
僕、絶対ナルシオみたいになりたくないんだけど?
これが価値観の違いという奴なのだろう。
それは尊重しなければならないが、
「そうですかね……でもたまに老いた自分の人生を省みると、惨めになります。いつまでも若々しく可愛らしいオキャルンさんは、いつだって素敵な男性に言い寄られるのでしょうけど」
「そっ……そんなことないですぅ~! わっわたしはもう1100歳ですから、大人です!!! 大人を揶揄っちゃダメですよ!?」
そう言って僕の頭の上で、声を荒げたオキャルンさん。
僕の頭をさらに抱きしめ、耳元で叫んだ。
僕の顔は偉大な母性に挟まり埋もれながら、彼女の早まった心臓の鼓動を聞く。
1100歳ものか。
1100歳ものは凄いな……凄い……
我ながら鋼の理性を保ちながら、紳士的に答える。
僕は紳士だ。
いや無垢な赤ちゃんだ。
そう思い込みながら、持ち前の精神力で正気を保った。
そしてジェントルマンの皮をかぶって、目の前の淑女へと非礼を謝罪する。
「そんなつもりはなかったのですが、ご気分を悪くさせてしまったなら申し訳ございませんでした。でも本心です。僕のような冴えないオッサン。いや男としての魅力がない赤ちゃんジジイに言われたら、ご不快でしたかね」
「い、いえ~マノワールさんは無償で子どもたちを助けてくれて、とっても優しくて、いつも一生懸命な姿がカッコよくて……子供たちの面倒もよく見て下さって……おまけに強くて頼り甲斐があって紳士的で……魅力的な男性で、本当に素敵だと思います……は……はわ~……♡」
褐色肌の女性は顔を真っ赤にさせ、僕の頭はようやく解放される。
残念……じゃない。
そして体育座りをして両足に顔を埋めてしまった。
しきりに首を横に振っていて、ジタバタとしている。
あれ滅茶苦茶怒っていらっしゃる!?
口説いたみたいに思われちゃったのかも!
オッサンが下心だしてきたみたいで、身悶えする程にキモかったんだ!?
やっぱり年齢的にもヤバいのかも……
恋愛に年齢は関係ないって、孤独に耐えかねて婚活した時に見たけど。
実際こんなオッサンはダメなんだろうな。
客商売をしていたから清潔感には気を配っていたんだけれど、年収が低いって建前の理由でいつも断られたし。
人格も含めて、あらゆる要素で魅力がなかったんだろう。
わかっていたことだけどショックだ……
仲間たちにも失望されたくない。
これからも一線を引いて接さないと。
お互いにとっていい事にはならないはずだ。
「お時間を取らせてしまった申し訳ございませんでした。とてもプレゼント嬉しかったです」
「ひゃひゃひゃひゃひゃいぃ……♡ あの……また二人で会えまひゅかぁ……?」
めっちゃ噛んでいる。
多分気遣ってくれているんだろう
自分を犠牲にしてまで、僕を慰めようとしてくれているとは。
こんなことをさせてしまった自分が情けなくてしょうがない……!
遠回しに遠慮することを答える。
「お忙しいとは思いますが、オキャルンさんがお望みとあれば是非」
「はぅぅ嬉しいですぅ~♡」
彼女はまったく視線を寄こさず、口角が歪んではしきりに可愛らしく歪めたり、真顔になったりを繰り返している。
アッ完全に嫌われたなこれ。もう死にたい。
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