第125話 「マノワールの誕生日」
帰ったら皆が誕生日会をしてくれた。
この年になって少々どころではなく気恥ずかしかったけど、嬉しいものだ。
そして目の前の深緑髪の少女も、僕を祝福してくれた。
「マノワールさん~お誕生日と聞きました~遅かったですが、プレゼントを受け取って頂ければ嬉しいです~」
「これはありがとうございます! 嬉しい限りです」
すっかり仲良くなった僕とオキャルンさん。
彼女は人好きのする性格で、誰とでも仲良くなれる人、もとい魔物だ。
信頼関係を築けたと思う。
たくさんの果実や野菜を、プレゼントしてくれた。
凄く美味しいんだよな。ここまでの質は食べたことがなかった。
「集落はどうですか」
「あの子たちは一生懸命に働いてくれております~収穫もできました~」
「それは何よりです」
「元から耕されておりましたから~少々荒れておりましたが、このくらいはわたしの力で何とでもなります~」
彼女はドリアード。
植物を操ることは造作もない。
彼女たちが作った食物は近隣領地から非常に評価され始めており、かなり税収に繋がっている。
僕も助けられている。
「家族たちのおかげです~そしてマノワールさん達のご支援の賜物です~」
「いえいえ。オキャルンさん達ご家族が協力した努力の成果でしょう。僕は家族がいないから、羨ましいな」
叙爵式などの疲れからか、ぽつりと呟いてしまった。
気づいた時には、オキャルンさんは悲しそうな目で僕のことを見ていた。
気を遣わせるようなことを言ってしまった。
本当にダメなオッサンだ僕は。
「奥さんやお子さんはいらっしゃらないようですが、御兄弟などはいらっしゃらないのですか~? 珍しいですね~」
「いえ。家族はおりましたが、色々あって出奔しました。先ほどは気を遣わせてしまって申し訳ないです。見ての通り出来の悪い子どもで、実家には居づらくて」
「大変だったでしょう……どうやって生活していたのですか? 子どもが一人で暮らしていけるとは、とても思えません」
「いえ何もかも自分の不始末のせいですよ。外の世界に出れば認めてもらえると勘違いして、何もかも自分で解決しようとして失敗し続けました…………当時の自分はくだらない見栄で、助けの手を振り払ってきました。誰のことも信用しようとしない、どうしようもないクズだったんです。今でもこうやって気を遣わせてしまっている、救いようもない幼稚な人間で……」
堰を切って溢れ出す自責の言葉。
僕は今でも自分勝手に、誰かに裁いて欲しいのだ。
こんなことを言ってしまった後、そんな浅ましさにようやく気付くようなバカなのだ。
情けなくて彼女から視線を逸らそうとしたとき、悲しそうに表情を歪ませたオキャルンさんが見えた。
いつもの間延びした穏やかな声と笑みは消え失せ、涙ぐみながら心を痛めている。
自分が弱っているからと言って、他人に気を遣わせてはならない。
今になってから自分の愚かさを後悔した。
「…………」
「え?」
そして彼女は何を思ったのか、近寄って来て。
僕の頭を、そっと胸に抱きしめた。
面白い、または続きが読みたいと思った方は、
広告下↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓の☆☆☆☆☆から評価
またはレビュー、ブックマークしていただけると、モチベーションに繋がりますので執筆の励みになります!!!!!!!!!!




