第123話 「魔王軍侵攻の兆候」
オキャルンさんは目を伏せて、無言でこくりと頷いた。
冷や汗が額を伝う。
自分たちはとんでもない事を聞いてしまったのではないか。
それなりに実力があるとはいえ、僕たちの仲間だけでは手に負えない。
侯爵に判断を仰ぐべき。
いや王国、世界全体で共有すべき一大事だろう。
「不安にさせてしまって申し訳ございません~しかしもう少し猶予はあるかと~魔物は長命な者が多いので、そこまで素早く準備はしないはずです~数年かかってもおかしくはないかと~」
「大体一年くらいでせめて来るということでしょうか」
「それより短くなっても、おかしくはありませんが~どんなに早くとも戦争準備に半年はかかると思います~そのくらいがタイムリミットかもしれません~」
半年か。
凄く微妙なところだ。
戦争となればこの領地だけでやるわけではない。
国家全体で対抗するものだが、この国は果たして動いてくれるのだろうか?
まさかオキャルンさんを証拠とするわけにはいかない。
人類と魔物の懸け橋となってくれるかもしれない彼女を、売るような真似は避けたい。
「猶予はあるようでないな。この話を侯爵に信じて頂けたところで、世界全体で協力できるとは思えない」
「この話って証拠がないじゃないですか! 魔物から聞いただしたなんて、言えないですし」
「人間社会に潜り込んだ魔物たちがいるとすれば、邪魔してくるでしょう」
それぞれ意見を出し合うが、話せば話すほどに先行きは暗く見える。
どう考えても僕の手には余るな。
「とりあえず侯爵様に話を通すべきじゃないですかニャ? 私達で話してどうにかなるとは思えませんニャ」
「僕もそう思う。オキャルンさんもご協力頂ければありがたいです。もちろん子どもたちの保護はお約束します」
「その子たちもスパイと疑われるかもしれないから、ある程度は不自由になるだろうが」
「それだけでありがたいです~ここを追い出されたら、もう暮らしていけないと思いますので~」
受け入れることを決めて、オキャルンさんは安堵したようだ。
この人が悪い魔物とは思えないな。
嘘だったとしても、今彼女たちを信じない理由にはならない。
「侯爵には貸しがあります。それをすべて使ってでも、子どもたちは助けるつもりです」
「マノワールさん! そこまでしなくとも!」
「いや、そうするよ。別に返してほしい貸しでもないんだ。使うべきところで使おう」
恵まれない子供たちは、過去の僕と重なって仕方ないんだ。
仲間たちであっても、絶対に譲れない。
コックロも僕の気持ちを汲んでくれたようだ。
誇り高く協力を申し出てくれた。
「お兄ちゃん……私からもお願いしよう」
「ありがとうコックロ。君は本当に素敵な騎士様だ」
「揶揄うな。まったく……」
そう言うが頬は赤く染まっている。
仲間たちは暖かくそれを見ていた。
オキャルンさんは感動したように、僕達のやり取りを見ている。
そして感謝の言葉を述べた。
「本当にありがとうございます~あなたたちはとてもいい人ですね~」
「いえ。当然のことをしたまでです」
「この恩は少しずつでも絶対にお返しします~」
ぺこりとお辞儀する褐色肌の魔物の女の子。
僕がしたい事なんだから、気にしなくていいんだけれど。
でも家族のことなんだから、彼女も必死だったのだろう。
その一助と成れたのなら、誇らしいことだ。
さて、忙しくなるな。
でもこんなことなら、いくらでもやるさ。
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