第116話 「ナルシオの末路」
「私の娘は婚姻先が見つからず……ナルシオ殿が結婚してくださり実にありがたい! まったくルッキズムに染まった昨今の風潮は許せません! しかし辛い過去も幸せな結婚を彩るスパイスとなったのですから、人生わからないものですハハハ!!!」
ナルシオの元に、欲深な表情を浮かべた貴族たちが集まる。
王国最大戦力であるマノワールを敵に回そうとしたのは、地理児たちがそれを上回るメリットを手に入れたから。
ナルシオが慕われているからではなく、彼が提示した利益への欲望に駆られたからだ。
脂ぎった顔で、次々と対価を催促している学園理事たち。
見物していた周囲の学生たちも得心がいったようで、ナルシオの不幸を嘲笑い始めていた。
「ナルシオ殿よりも年齢はちょーーーっと高いが! 子どもはすぐお願いいたします! 契約内容では朝昼晩と夫婦の務めを、子どもが三人生まれるまで続けるでしたね! いやこの好条件でまとめられるとは! 未来の息子に感謝しなければなりませんな!!!」
「ちょっとどころではなくないか? 親子ほどに離れているはず」
「あの娘と一日三回性行為とは拷問だろう。性格まで酷いことで有名な、社交界の鼻つまみ者だぞ」
呵々大笑する貴族が、ナルシオと自分の娘との婚姻を喜んでいる。
対照的に、声を潜めて貴族たちは噂話に興じる。
好奇の視線を向けられたナルシストマザコン男は、呆然と立ち尽くすしかなかった。
ようやく彼は悟ったのかもしれない。
自身が破滅への道を、幼稚な復讐心で敷いてしまったことに。
「なっ!? 誰だ鉱山を貰い受けると言ったのは! 鉱山は私が貰うはずだっ!」
「鉱山は一つしかないはず! どういうことですかなナルシス殿!? 耳を揃えて違約金を支払ってもらいますぞ!!!!!」
しかし報酬について、齟齬があったのか。
それともナルシオの資産が足りなかったのか、諍いが起こる。
「――――――ナルシオ!? あなたという子はなんてことを!? なぜこのような悪い子に育ってしまったの!!!」
「ママ!? これはその……」
「マノワール様は貴方のためを思って、骨を折って下さったのに! こんな恩知らずな子とは思いませんでした! もう顔も見たくありません! もう息子とは思いませんので、家には帰ってこないでください!!!」
そういって絶縁宣言ともとれる発言を、神のように慕っていた母から下される。
冷たい目をしたナルシオによく似た女性は、息子の窮地を救おうとする気配もなく背を向けて去って行った。
彼女の瞳には、暗い女の情念が見えた気がするのは気のせいだろうか。
それに気づいたかは知らないが、ナルシオはへなへなと力なく地面に崩れ落ちた。
「…………は……はは……ママも信じてもらえなくなって僕は」
どうやら今まで通りの力も出なくなってしまったらしい。
英雄と持て囃されていた彼はその力を大きく失い、日頃の態度への反感から見下されるようになる。
自分が撒いた種が彼自身に不幸をもたらし、持っていた地位や栄誉すら失う事となった。
乾いた笑いを漏らす、哀れな道化。
復讐は何も生まない。
ただ自らの人生を破壊するだけだった。
第5章終了となります。
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