第113話 「カース王国王女との歓談」
「オッサツイホ侯爵家の嫡流であるあなたが、それに現当主アクレイさんの従兄であるあなたは、それが一番ふさわしい地位ですよ。あるべき人間があるべき立場に就く、なんらおかしいことではありません」
「ですが今更こんな年の男が、貴族社会に馴染めるとは思えません。すでに恥晒しとして有名でしたし、むしろ王国にとって不利益かと」
子ども時代の僕を知っている者なら、侮蔑されることだろう。
僕の強さなど一過性の物で、いずれ老いて衰えるものだ。
それにイメージというのは大事で、侮られる僕を貴族に起用しても、セインセス様の名前を傷つけるだけだろう。
由緒正しい家に生まれて、王道というべき出世街道を歩んでいたナルシオすら煙たがられていたというのに。
僕なんかにどうしろというのか。
「あなたという戦力は国家1と称して差し支えないものとなりました。国家としては首輪を締めたいのですよ。それをあなたから承諾してくれるというのなら、その方が双方ともに都合がいいのです」
「私は隠居するつもりです。今まで多くの事件と悪意に巻き込まれ過ぎて、余生は静かに送りたくなりました。地位も名誉もいりませんので、何事もない平和な生活を送りたいだけなのです」
「決心は固いようですね。ですが我々も諦めるわけにはいきません。ナルシオを凌駕するような戦力を遊ばせておくのは、政治的にも軍事的にも爆弾となるからです」
もし僕が他国に流れてしまえばと、王国は恐れているのだろう。
僕もそれくらいの政治感覚はある。
でも待ち受けるのは飼い殺しだ。
恐らく貴族たちに反感を買わせて、僕を王族に近づけさせるように誘導して。
セインセス様に依存させる腹積もりだろう。
そんな心休まらない生活を送るわけにはいかない。
嫉妬というのは恐ろしいんだ。
これ以上目立って恨みを買えば、僕だけではなく周囲にも迷惑がかかる。
「どうかお許しを賜れれば。私はあの世界には、どうしても関わりたくはないのです」
「心苦しいですが、今回はここまでにいたしましょう。あなたに提示できる報酬を用意し、再度お誘いいたします」
決心は固いようだ。
まぁ彼らの立場なら、そういうのはもっともな話だ。
だが受け入れるわけにはいかない。
僕が迫害されない保証など、用意できないだろう。
彼女は何を取引材料にするのか、それは楽しみだが。
「改めてあなたに感謝と謝罪を。あなたのおかげで民は救われております。そして謝罪を。あなたの献身に報いることができない、我々の至らなさを深くお詫び申し上げます」
「いえ。誰かが困っていたなら、助けるのは当然です。僕の力が役に立ったならば、それだけで嬉しいです」
「マノワール様は本当に心優しい方ですね。その力がなくとも、お友達に成って頂きたいものです」
「僭越ながら私は既に、セインセス様を友人だと感じておりましたよ」
そう言うと、セインセス様は驚いたように目を見開き。
数秒、言葉を失くして。
静かに美しく微笑んだ。
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