第107話 「修行完了 新技習得 新武器入手」
「わたくしも忙しいのですが、時間を見繕って数日なら付き合って差し上げますわ」
「とてもありがたいことです!」
「それでは善は急げと言いますし、早速始めましょうか」
彼女はコックロに目配せして、戦闘配置に着く。
なんだか手慣れた様子だ。
訓練を始めると、その多彩な魔法。
そしてコックロとの息ピッタリの連携に圧倒された。
そこからミーニャさんの高速のラッシュが繰り出されるのだ。
これはあのナルシオに匹敵するかもしれない。
「自宅警備員として、マノワール殿は能力傾向に特色がありますわね。頑健な心身。危機察知と柔軟な対応能力。それによって迎撃がとてもお上手です」
「はい。自分でもここまでのものとは、思いもよりませんでした」
昔から体力と根性だけは自信はあった。
そしてビビりだからか、危険予知なんかも得意だったから無事故無災害で働けた。
対応能力はわからないけど、色々な修羅場を仕事で経験してきたはずだ。
「わたくしたちも、もうマノワールさんには敵いませんわ。という事で卒業証書代わりと言ってはなんですが、これらを進呈いたします」
「えっ!? ここまでされるのは悪いですよ!」
「遠慮なさらないでくださいませ。相応の格がある武具を身に着けることも、強者の務めです」
悪役令嬢仮面は装備一式を渡してくる。
全部が尋常な質ではない。
国宝級でもおかしくないと、貴族時代見てきた武具の数々からわかる。
「お兄様のステータスに見合う、強度があるはずさ。戦闘中に壊れるという事はないだろう」
「あれ? これ実家で見たことある」
「とある貴族家が所有していた名剣です!!! あなたのために購入してあげたのですから、感謝して妹キャラに優しくしてくださいまし!!!!!!!!!!!!」
キャラがブレブレだな。
そういう設定なのかな?
そう言えばアクレイとコックロとも、ごっこ遊びをやってあげていたな。
ここは一つオジサンとして度量を見せなければ。
女性に恥をかかせるようなことは、極力避けたいからね。
「お兄様ならあのナルシオなんて、ケチョンケチョンにできるさ!!! ムカつくんだアイツ!? 若い女に粉をかけておきながら、拒絶されたその足で僕を口説いてくるなんて! 妥協するにしても最初から来いや! キモいから断るけど!!!」
「お兄様……?」
「んん゛っ! オーッホッホッホッホ!!!!! わたくしが見込んだあなたなら、必ずやナルシオのことを倒せるはずですわ!!!」
言い直した……
と無粋な事は言わない。
だがこの女性は誰だろう?
ナルシオに恨みがあるようだが……
それに僕のことを知っているのか?
察しのいい自負はあるが、全くわからない。
この随所に挟まれるお笑い芸人みたいなノリは、どこかで見たことがあるような……
うーん知り合いだったのかな?
「わかりました。この勝利をあなたに捧げます。ナルシオに傷つけられた、あなたの美しい心を癒して見せると誓いましょう」
ナルシオに恨みがあるようだな。
ならば期待に応えないといけない。
ここまでしてもらったんだから、男として約束しなければ。
「ふぁぁ♡♡♡ お兄様カッコいぃ♡♡♡ そして結婚してぇ~♡♡♡♡♡」
「え? 血痕? 死んで? 聞き間違いかな……僕なんてどうしようもないクズだし」
「あなたの正体は大体察しましたが、マノワールさんは渡しません! わたしがずっと支えていたんですからね!!!」
甘い声を出しながら身悶えする悪役令嬢仮面
半分露出された胸部が暴れ狂い、とても危険だ。
運動して書いた汗で、谷間が光を反射していて男の目に毒だ。
でも言ったらセクハラだし、どうすれば……
究極の選択を迫られそうになった時、ニンメイちゃんが僕の前に進み出た。
正体を知っているという事は、ニンメイちゃんの知り合い?
それとも有名人なのかな?
オジサンは流行りには疎いんだ。
知らなくても仕方ないのかな。
「なんだい君は!!! 間女は黙っていてくれないか! お兄様! ニンメイくんのような若い女がいいのか!? 傷ついた心を支えてくれていた美少女の方が、一途にお兄様のことだけを想っていた運命の相手である美女よりもいいのかい!? まだボクもピチピチなはずだよ! お腹のお肉はちょっと気になってきたけど、運動したから10代の頃のようになったはずさ!!!」
「お前もう隠す気ないだろアクレ……」
「んんっ!!! わたくしは帰ることにしますわ!!!!! それではまたマノワールさん! 妹キャラに合いの手を!!! もう一人の妹キャラである、コックロのことも気にしてあげてくださいまし~~~」
嵐のように去って行った悪役令嬢仮面。
よくわからないことを言っていたけど、どういう事なんだろう?
そう言えば髪の色もアクレイと同じで、奇妙な偶然だな。
でも僕は格段に強くなったはずだ。
そして新技も編み出した。
ナルシオとの戦いで、きっと役に立つはずだ。
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