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赤ずきんは童話の世界で今日も征く  作者: 柿の種


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Episode 40


次の日。

私は戦利品確認の為に、ルプス森林のセーフティエリアへとログインした。


といってもだ。

ボスである古ノ狼からの戦利品はほぼほぼ特殊な物はないと言って過言ではない。

それぞれ得た、【餓狼の毛皮】、【餓狼の尾】、【餓狼の爪】というボス素材は後日それらを加工できるプレイヤーを探し装備品へと加工するつもりだ。

ボス素材という特殊な出自であるため……どんな装備になるかは想像出来ないのだが。


しかし、一方で何も詳細が分かっていない戦利品も存在する。

それが、MVP報酬。

どういう計算や算出をしているのか分からないものの、恐らく終始ヘイトを惹き続けていた私とスーちゃんがシステム的に高得点だったのか。

MVPとなった私は、あるアイテムを戦利品として受け取っていた。


「……本、本かぁ……」


そのアイテムの名前は【可哀想な狼の物語】。

これといった装飾もなく、かといって雑に作られているわけでもない、ハードカバーの本だ。


古ノ狼戦のMVP報酬でこんな名前の本を渡される。

言外に複数人で私刑にしたことを責められているような気がして、ここの運営は中々いい趣味をしていると思ったのは私だけではないだろう。


「アーちゃん」

『……はいはい。危なかったらその本破壊するわよ?』


呼びかけに対し、契約の書から自らの意思でこの場に【召喚】してきたアーちゃんの問いかけに首肯することで返事とした。

そうして、私はアーちゃんに見守られながら本を開く。

瞬間、私の視界は光に包まれた。



次に私の視界に映ったのは、何処かでみたことのある何もない空間だった。

というより、完全に契約の書の中の光景だった。


違いがあるとすれば、ただ一つ。

少女達がいない代わりに、1匹の人狼が立ってこちらを見ていることだろうか。


「……成程ね。そういうアイテムか」


その時点で私は【可哀想な狼の物語】というアイテムがどういう効果を持っているのかを悟った。

これは、


「君と【契約】出来るアイテムってことかい?古ノ狼さん」

『……やめてくれ、その名前は』


そう。ボスとして君臨していた登場人物と契約することが可能となるアイテムだ。

MVP報酬として設定されているため、いずれ他のプレイヤーも同じように【契約】するだろうが……それでも、まだ始まって間もないタイミングの今、ボスと【契約】出来れば大きなアドバンテージとなることは確実だろう。


表に出すには爆弾すぎる情報がまた増えてしまったと笑う。

あとでスキニットに適当に流してもらうことにしよう。


『実際、悪いと思っている。どうしても引っ張られてしまうんだよ』

「あー、ね。獣の本能って奴かな?ところで古ノ狼が嫌いならなんて呼べばいいんだい?」

『コートード。そう呼んでくれ』


そういって、古ノ狼……否、コートードがこちらへと手を伸ばしてくる。

見る限り害意はなく。少しばかり好奇心でその手を取ろうとして、私の前に現れたウィンドウに阻まれる。


<【人狼王】コートードと【契約】を結びますか?>


その下には、YESとNOというボタンが浮いている。

無粋だなぁと少しだけ苦笑いしつつ。

私はYESを押し、彼の手を取った。


獣の手ではあるものの、その時だけは一瞬人の手に見えたのは私の気のせいではないだろう。

しっかりと握り返された瞬間、彼の身体は光の粒子へと変化し私の腰に下がっている本へと吸い込まれていく。


<【人狼王】コートードと【契約】を結びました>

<表記が『【人狼王】コートード』から『コートード』へと変更されました>

<以後、【召喚】し呼び出すことが可能となりました>



そんなログが流れた瞬間、私の視界が切り替わる。

目の前には呆れたような顔をしたアーちゃんが、私の顔を覗き込んでいた。


『お帰り』

「ただいま。……言わなくても分かってる感じかな?」

『そりゃ、私達と同じ所に入れられたら嫌でも分かるわよ。というか、私よりも先に言うべき相手がいるでしょう?』

「あは、そりゃそうだ。機嫌を直すために喫茶店で奢らないといけないしねー」


そんなことを言いながら、私は森の出口に向けて歩き出す。

本当は開放された深層へと足を運びたいとも思ったが……それよりも、私の抱えている爆弾のような少女たちの機嫌を取るのが先決だと思ったからだ。


『あの子よりもサーの方が不味いわよ。さっきから暴れているっぽいから』

「おいおいマジかよ、とりあえず喚んだ方がいいねそれ」


そういって契約の書に手を伸ばしつつ、少しだけ笑う。

このゲームを始めた当初は考えもしなかったが、随分と周りが賑やかになったものだと思いながら。


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