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赤ずきんは童話の世界で今日も征く  作者: 柿の種


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Episode 31


ボスとの戦いが、いつの間にか自身の尊厳を掛けた戦いに変わっていた。

今になって気付いた私も私だが、この仮想世界にプレイヤーの尿意を感じさせるという無駄な機能が付いていなくて本当に助かったというべきだろう。


((マスターさん……))

(いや、漏らさないから。寝てても私の身体ならそこらへんしっかり閉めてくれるはずだから)


私に【憑依】しているからか、この警告が見えているらしいスーちゃんの呆れたような声に心の中で返事をしつつ。

私は表情だけは冷静に、しかし内心焦りながら指示を出す。


「アーちゃん!無理矢理!」

『了解ッ!』


彼女は私に言われるまでもなく、動き出していた。


地を駆け、彼女の持つ武器である銃器が十分に戦える位置である遠距離ではなく、むしろ戦いにくいであろう至近距離へと近寄っていくのが見えた。

しかし戦いにくい、といっても。

アーちゃんは近接戦闘も十分に行えることは道中の戦闘で分かっているため、問題はないだろう。


そんな行動の間にも、こちらへと迫ってきているコートードを何とかいなしながら、他にも指示を出す。

アーちゃんに対しての指示はある程度ざっくりとした説明でいいものの。

他のメンツにそれは通じないだろう。


「スキニットくん!アーちゃんの援護!他のも!」

「了解!アナ!お前もこっちだ!」


動き出すのを横目で確認しながら。

今も襲ってくるコートードの攻撃をどうにか回避していく。

噛みつきを、薙ぎ払いを。

足を使った切り裂きを、踏みつけを。

咆哮を、そして突進を。


他のメンバーの攻撃や援護が来るまで、今まで以上に気合を入れて避けていく。

といっても身体に力を入れ過ぎずに。


「スーちゃん!どう!?」

((【その脅威は這い寄るように】は無理ですね。置いておいても、察知してるのか避けられます))

「成程ねッ!」


避けるのに徹するのにはいかない理由が出来てしまったため、スーちゃんには攻撃出来る隙があれば狙っていってもらうようにお願いしてある。

しかしながら、HPの1本目を削った攻撃だからなのか。それとも獣特有の感覚なのか。


不可視のはずの刃がコートードの進行方向にあったとしても、それらに当たる直前で避けたり、そもそも当たらないように跳躍してこちらへと攻撃してこようしてくる。


「……他に攻撃方法あるかい?スーちゃん」

((あるにはありますけど……【憑依】中は使えないです。制限ですね))

「オーケィ……それだったらダメージ通せる?」

((恐らくは。アーちゃんよりもダメージ出せるとは思いませんが……でも回避大丈夫ですか?))

「大丈夫じゃないねぇ。バーサーカー状態のサーちゃんは……うん、攻撃全部避けられてるし」


サーちゃんにも指示を出したかったが……彼女の耳にこちらの言葉が入っているとは思えない。

暴走しているようにしか見えないものの、それでも攻撃に巻き込まれそうになった時にきちんと避けているためある程度の分別くらいは出来るのだろう。


……うん、サーちゃんは諦めよう。強制送還するよりはこのまま攻撃してもらってた方が都合がいいし。

現実(リアル)的な意味で時間がないために、攻撃が当たるかもしれない遊撃?のようなポジションは重要だ。

もしかしたら他の人が足止めした瞬間に、ダメージを与えることができるかもしれない。


その可能性にかけて、再度コートードに意識を移した時。

それは落ちてきた。


『あははッ!やっぱり暴走してる子にはこれよねぇ!』


空中から、何か緑色のエフェクトを纏いながら。

高笑いしつつコートードに向かって落ちてきた。


それは2丁の拳銃を持っていた。

私達赤ずきんと同じ、赤い頭巾を被っていて。バスケットを片腕に下げていて。

少女のように見えた。

というか、アーちゃんだった。


「何やってんの!?」

『よし着地!何って、無理矢理こうやって攻撃するためにッ!』


バン、という音と共にコートードの背中に跨るように落ちた彼女は、こちらへと笑いかけながらも、視線はしっかりとコートードへと向いている。

確かに距離があるから攻撃が避けられる、ならば距離を0にまで近づいてしまえば攻撃を当てることが出来る。


アーちゃんはそのまま背中に銃口を押し当て引き金を引く。

ダメージもきちんと徹っているため……一応は問題ないのだろう。

ダメージを受ける可能性が高いというリスクも相応に抱えてはいるのだが。


……まるで闘牛とかロデオとかそういうのだなぁ。これ。

牛と狼という違いはあるものの、やっていることはあまり変わらないだろう。

今もコートードが背中に乗っているアーちゃんを落とそうと、暴れまわっているし。


((さながら、闘牛で使われる赤い布はマスターさんですね))

「分かってたけど、そう言われると色々言いたくなるね」

((諦めてください。事実ですから))

「確かにね」


アーちゃんの楽しそうな声と銃声を聞きつつ。

コートードのHPを確認すれば、2本目の残り3割程度まで削れていた。

もう少しで2本目も底を尽く。

このボス戦も、終わりが近い。

それがどちらの終わりかは、まだわからないが。


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