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赤ずきんは童話の世界で今日も征く  作者: 柿の種


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Episode 17


意識がない状態、とでもいえばいいのだろうか。

私の目の前で直立不動のまま何処か空中に視線を彷徨わせているスキニットの姿は、少し……いや、かなり不気味とも思えた。


「……私もこうなってたのかねぇ。割と不気味だ」

『仕方ないんじゃないかしら。そもそも得体のしれない人型の何かを使役出来る時点でかなり不気味よ?』

「自分でそんなことを言うのは中々じゃないかい?アーちゃん」


背後からかけられたそんな言葉に、苦笑しつつ振り返る。

話に参加してこないと思えば、後から呼んだ2人と共に床にシートのような何かを敷き、その上で簡易的なお茶会をしていたようだ。

童話でお茶会、といえばある帽子屋が頭に過るものの……平和そうで何より、というべきだろうか。


「君ら3人でお茶会か。アレかな、私が狂った帽子屋の役でもすればいいかい?」

『それならば、私は時計ウサギにでもなりましょうか。……と、そういえば時計ウサギは運営側のAIに居たんでしたっけ』

『アリスシリーズの登場人物の名前を騙ってるだけで、アレらは本人ではないから大丈夫よ。……このメンバーだと、私はチェシャ猫かしら』

『じゃあ私がアリス?』


そんな冗談を言い合いながら、私もその小さなお茶会へと混ざることにした。

スキニットがどんな登場人物達と【契約】しているのかはわからないものの、少なくとも話し合いには時間がかかるだろう。

そのまま適当に、サーちゃんに教えてもらいながら【木工】でもやっていこうかと考えながら。



「……んん、君たちは少し目を離すとすぐに色々な事をやっているな」

「おや、帰ってきたのかい?お帰り」

「あぁ、只今……と。その様子だとあの空間についても知っているのか?」

「まぁそんなものだよ。特にうちは割と特殊だろう?」


スキニットの意識が戻ったのか、私へと話しかけてくるのを聞きながら。

木を削るために動かしていた手を止めた。


「確かにな。見ればわかるがそのままだろう?」

「あぁ。そのままだぜ?端から見ればわかりやすいぜ?」

「キャラクター性的には、だろう。……さて、本題に入ろう」


サーちゃんが何処からか取り出した椅子に腰かけると、彼は真面目な顔で話し始めた。


「まず、結果から言えば、俺達は君の攻略を手伝うこととなった」

「おや、それは良い報告だね。ただそうやって言うってことは、色々と条件とかそういうのがあるんだろう?」

「話が早くて助かる。うちのは中々曲者、というよりは我が強い奴らばかりだからな……」


そう言いつつもどこか諦めたように話し始める姿は、普段から中々に苦労しているのだろう。

少しは労った方がいいのだろうか、そんなことを考え自分のキャラではないと即座にそんな考えを切り捨てた。


「まず1つ。これはさっきも居たアナからなんだが……単純に1回だけでいいからあいつの実験に付き合ってやってくれ。……そっちの嬢ちゃん、そんなに睨まないでくれ。君もその場に立ち会ってくれていいし、俺も実際にいるから大丈夫っちゃ大丈夫だから」

「まぁ私としては別に問題はないぜ?で、他にもあるんだろう?」

「あぁ。残ってんのは1つというか、こっちとしては俺も分からねぇわけでもねぇんだが……」


そう言って、彼が言った言葉は現状の私にとっては理解の難しいものだった。


「そっちの嬢ちゃん、あんたに会わせてほしいって言ってる奴がいるんだよ。それが手伝う条件だとよ」

『私、ですか?』


指を指され、困惑した表情を浮かべるスーちゃんに、私は彼女が選ばれた理由も分からず……いや、ある程度予想できてしまったために。

顔をしかめて聞いてしまう。


「スーちゃんを、って事は相手はもしかして?」

「まぁそういうことだ。アレがどういう繋がりを持ってるかは知らねぇが、それでも悲痛そうな顔しながら頼まれたんでね。申し訳ないが、アイツはアイツで俺の中じゃ貴重な遠距離戦力だ。我が強いって言っても、他の奴ら並みではないからな」


遠距離戦力。

この時点でスーちゃんを含めたうちのメンバーも気が付いたのか、困惑したような表情を浮かべた。


「スーちゃんよ、どうする?会ってみるかい?」

『……正直に言えば、私にはどうするべきかはわからないです。十中八九、私の知っている彼ではありませんし』

「だろうねぇ。……スキニットくん、君演劇とかそういうの好きかな?」

「ん?いや、あんまりだな。興味もない」

「……うん、間違いなく違うね。それでもいいって言うなら喚んでもらうけど」


本人同士の事、というには相手が違いすぎるのではないか。

そう考えながらも一応スーちゃんに対して聞いてみたが、彼女も彼女でやはり疑問が頭の中を占めているのだろう。

しかしながら、相手がどういった話をするかどうかくらいの予想はついているらしく、


『まぁ、いいですよ。喚んでください。……人違い、というほど違うわけでもないですが、本人ではない人から伝えられるっていうのもおかしな話なんですけどね』


困惑を隠すことなく、スキニットに対してそう言った。


「……なんか、すまん」

「君が謝ることじゃあないぜ?一応聞くけど、他に条件はないんだね?」

「あぁ、ない。もう1人はそもそも起きてすらなかったからな」

「成程。じゃあ早速1つ条件を達成するとしようか」


私はそう言って、彼に件のスーちゃんに会いたいと言っていた人物を……十中八九『赤ずきんの狩人』であろう人物を喚んでもらうことにした。


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