閑話01 帰還途中の出来事1
宿でのチェックアウトが済むと……王都へと飛んで帰るべく、俺は竜化の術を使おうとした。
が……その直前、ジャスミンがこんなことを言い始める。
「あ……ハダル君。ちょっと待って」
「どうした?」
「今日って確か……」
おもむろにスケジュール帳を取り出し、ジャスミンは今日の日付を確認しだす。
「……やっぱり」
「やっぱりって?」
「今日、ブオーノ村の食祭りの日だわ」
「……ブオーノ村?」
聞いたことない地名だな。
しかし「食祭り」というからには……美味しい物の屋台がひたすら並ぶ日だったりするんだろうか。
だとしたら、興味あるな。
「……どんな祭りなんだ?」
「この村で年に一回行われる、料理の全国大会よ。決して大きな村ではないのだけれど……伝統的にこの日だけは、全国の腕自慢がこの村に集結し、絶品料理を振る舞って競い合うの」
ジャスミンが言うには、ブオーノ村の祭りは想像していた通りのもののようだった。
「何十種類もの絶品料理を、心ゆくまで試食できるのよ。一度は参加してみたいとずっと思ってたの。まさか日程が合うとは思わなかったから、今年は諦めていたのだけれど……もし良かったら、ちょっと寄ってもらえない……かな?」
「もちろんだ。聞いてて俺も行ってみたくなったからな」
祭りに参加したがっているジャスミンを、俺は二つ返事で連れていくことに決めた。
「村の場所、教えてくれるか?」
「ええ。ここよ」
ジャスミンが取り出したゼルギウス王国地図で、俺は村の所在地を確認する。
周囲の山や川がそこそこ特徴的な地形なので……飛んでいれば、普通に上空から位置分かりそうだな。
「じゃ、行こう」
地図を返し、竜化の術を発動する。
「お願いするわ」
ジャスミンが俺の背に乗ったのを確認すると、俺は上空に浮遊した。
そして行きと同じように、自由落下程度の加速度を超えないよう気をつけつつ移動を開始する。
25分ほど、高度10キロ程度を保って飛んでいると……俺たちはブオーノ村の上空に到達した。
ジャスミンが「ドラゴンが現れて村がパニックになって祭が中止になるとまずいから上手いことして」というので、認識阻害魔法で姿が見えないようにしつつ村の近くの平原に着陸する。
ブオーノ村の門を潜ると……こんな声が聞こえてきた。
「料理人の皆さん、エントリーはお済みですかー? 締め切りはあと30分ですよー!」
それを聞いて……何を思ったか、ジャスミンはこんなことを言い始める。
「良かったらハダル君も出てみたら? ノリで優勝しちゃうかもよ」
……いや、全国トップレベルの料理人が集結してるんだろ。
そんなの絶対無理だろ。
「それは流石に無茶じゃないか……?」
「これ、ルール無用の勝負なのよ。持ち込んだ食材は何を使ってもいいの。正攻法では無理でも……ハダル君なら錬金術で斬新な調味料とか作って、一発逆転も狙えるんじゃないかしら」
いやいや。化学調味料の研究者でもあるまいし。
そんなのパッと思いつくわけが……。
……グルタミン酸ナトリウムがロストテクノロジーと化してたりすればワンチャンあるかもしれないが。
「グルタミン酸ナトリウムって知ってるか?」
「聞いたことないわよそんな調味料。てか、やっぱりアイデアあるんじゃん。だったら参加してみようよ」
……マジかよ。
本当にロストテクノロジー化してたとは。
だとしたら……出てみる価値はあるな。
いや決して本当に優勝が狙えるかもなどと自惚れているわけではないが、グルタミン酸ナトリウムがせめて一定の評価でも得られれば……もし食品メーカーに就職したいってなった時、その実績で選考を有利に進められるだろう。
これはデカいぞ。
なんてったって、食品メーカーといえばワークライフバランスばっちりの超絶ホワイトな業界代表だからな。
「そこまで言うなら」
俺は大会にエントリーすることに決めた。
ガクチカで言えるような結果が残せるといいな。
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