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テトラ・ワールド  作者: シンG
第1章 建国~砂漠の国~
15/96

第15話 ミリティアの事情聴取 その2

情報源その3:ヴェイン=ウェイクエンス



「えっと・・・、私はヴェイン=ウェイクエンスと、言います。年齢は26歳。兄ちゃ・・・、兄がベルモンドと知り合いで、その付き添いで一緒に旅をしてい、ます」


「ヴェイン様、宜しくお願いします」


「様・・・」


「なにか?」


「い、いえ・・・ちょっと聞きなれない感じでビビったというか、気まずいというか・・・」


「申し訳ありません、私は国の代表として、貴女からお話を伺いする身。客人に対して最低限の礼儀を取らせていただくことをお許しください」


「あー、いえ・・・お、お構いなく、です」


「はい、それでは・・・先ほどセルフィ様からお話は伺いましたが、ヴェイン様はセルフィ様と一緒に行動されていた、という前提で宜しいですか?」


「そうっすね・・・、じゃなくて、はい」


「ふふ、答えやすい口調で構いませんよ」


「・・・助かります、いや・・・助かるよ」


「セーレンス川で起こった事態については、おおよそのところはセルフィ様より教えていただきました。その後、セーレンス川からこのアイリ王国へ足を向けた時のことを続けて教えていただきたいのですが、なぜ避難先をこのアイリ王国へと決めたのでしょう?」


「え? あーっと、ベルモンドが確か・・・あそこ、セーレンス川から一番近いから、って言ったのが理由かな。あとヒザキもここが目的地だったみたいだし」


「ヒザキ様も? 確かセーレンス川には釣りにいらっしゃってた、と」


「ああ、釣りは道中の休憩代わりに、って言ってたよ。本来の目的はここ、アイリ王国に向かうことらしいよ。詳しくは聞いてないけど・・・」


「なるほど、わかりました。次にですが、貴女から見て、出没した魔獣の強さ、というのはどういう風に感じました?」


「私は戦闘向きじゃないからね・・・、あんまし専門的な表現はできないけど、馬車の荷台を一瞬で粉々にしちまう、あのパワーは怖かったとしか言えないかな・・・。こう・・・小さい毒蜘蛛とか、目に見えづらい奴も嫌なんだけど・・・あーいう風にパワー型で押せ押せな魔獣も出来ればもう会いたくないね」


「ヴェイン様はちなみに、こういった旅はどれほどの経験をお積みなのですか?」


「年数? まー、実家に戻っていることもあるから、ずっとってわけじゃないけど・・・合わせると大体三年ぐらいじゃないかな」


(三年・・・まあ運が良ければ、大型の魔獣に会うこともない程度の経験年数だ。初遭遇時は恐怖で頭も回らなかっただろう。そんな中での生還は本当に運が良かったようだな)


「ありがとうございます。このアイリ王国までの道のりはベルモンド様がご存じだったのですか? それともヒザキ様でしょうか?」


「あ、どっちも知ってるっぽかったよ。ベルモンドもヒザキも迷う感じもなく歩いてたし。この道が一番の近道だって言ってたな。と言っても・・・ほぼ一日かけての歩き通しだったけど・・・」


「そうですね。あの道はアイリ山脈の中でも最も背が低い山岳地帯となっていますので・・・とはいえ、重い貯水タンクの搬送と食糧の確保時間があると言え、我が国の水牽き役ですら一週間はかかる道のりです。そう考えれば十分な速さで移動されたと思われますよ」


「そうなのかな? もう体力限界のところであの魔獣は追ってくるわで、ここに着いたときは倒れそうになったよ・・・。ところで、あの山脈って名前あったんだね」


「アイリ山脈ですか? そうですね・・・正確に言えば、現在は使われていない名です。昔は多くの砂漠地帯を保有していた巨大国家であったため、砂漠に面しているこの山脈はアイリ山脈と呼ばれていたのですが・・・今は無名の山脈ですね。つい・・・私はこの名前で呼んでしまうもので・・・申し訳ありません」


「いやいや、謝る必要はないと思うけど・・・むしろ勉強になったよ」


「そう言っていただけますと幸いです。では質問に戻らせていただきますが・・・貴女もセルフィ様と同様にティーレット公国のお生まれなのですか?」


「いや、私やベルモンドはレディナスの生まれだよ。ティーレットはセルフィだけさ。と言っても、生まれの話で、私たちと一緒に行動しているセルフィも、今はレディナスにある私の家に住み込んでいる状態だけど」


「なるほど。レディナス王国は傭兵国家であると同時に、商業団体とも強い繋がりがあると言われていますが・・・」


「そそ、私の家が代々傭兵の家系で、私の兄ちゃんが傭兵の家督を継いでるって感じかな。そんで国内の商業団体組合の組合員の一人がベルモンド。傭兵と商人は切っても切れない関係だから、そっから二人は出会って、今じゃ親友みたいな関係になってるってとこかな」


(随分と詳しく話してくれるな・・・彼女の様子を見ていると、兄とベルモンドさんを慕っているのが伝わってくる。誰かに慕っている二人の話をしたくて仕方がない気持ちがあるのかもしれないな。聞いてあげたいのは山々だが、出身の十分な情報は得た。次の確認に移るか)


「ありがとうございます。では話は少しずれますが、山道で魔獣に襲われた時のことを教えてください」


「・・・ああ」


「あまり思い出したくない出来事とは思いますが・・・答えられる範囲で結構ですのでお願いします。リーテシアさんのお話から、複数の魔獣に襲われた話をお伺いしています。その件についてなのですが・・・」


「あー・・・、なんかそうらしいね。あの魔獣を複数って・・・それと対峙したヒザキってどんだけーって思ったわ」


「らしい?」


「私たち――私とベルモンド、セルフィは最初の一体をヒザキが引き寄せている間に、サジって子と一緒に戦線を離れてたの。邪魔になるだろうからアイリ王国に助けを呼びに行こう、って話をベルモンドが・・・。リーテシアちゃんとラミーって子が残ったままだったから、すごく迷ったんだけど・・・魔獣を挟んで向こう側だから、逃げることを優先したのよ・・・」


「そうでしたか。その場においては、それが最善だったかと思います。もし無理に戦いに加わったり、子供たちを助けに入ろうものなら、犠牲者が出ていたかもしれません。結果論も含まれた話ですので、万人(ばんにん)が頷く考えかは保証しかねますが、少なくとも私が同じ場にいれば、同じ指示を下していたと思います」


「そう、なんだ・・・」


「貴女はヒザキ様お一人に戦いを任せたり、子供たちを置いて行ったことに負い目を感じているかもしれませんが、私はそこに貴女が責任を感じる必要はない、と思っています」


「ありがとう・・・うん、ありがとう」


「少しでも心が軽くなれば良いのですが・・・」


「うん、おかげで少し・・・すっきりしたかも。すごいね、私より年は下っぽいのに。私よりしっかりしてるわ」


「いえ・・・これでも近衛兵を任せられている身ですので」


「尊敬するわー。よし! 今度から姉御(あねご)って呼ばせてよ!」


「あねっ!? ・・・・・・ゴホン、申し訳ありませんが、先ほどヴェイン様が仰られた通り、私は貴女より年下です。そのような呼び名は困ります」


「大丈夫だよ、こう、精神的な意味だから! 精神的な姉御?」


「困ります」


「えー・・・そっかぁ・・・残念」


「分かっていただき、安心しました。最後に、貴女方の行商はどこを目的地としていたのですか?」


「目的地? あー、ライル帝国だよ」


「ライル帝国?」


「そっ、ほら・・・ライルってずっとウォーリル森の異変のせいで、魔獣との戦闘が続いてるじゃない? 不謹慎な話かもしれないけど・・・やっぱりそういう国って色々と商品の需要が大きいんだよね。私には何が一番売れるのかとか、そういう商人としての嗅覚がないからさ・・・何を売りに行くかとかはベルモンドに任せているけど」


「妙ですね」


「え?」


「いえ・・・その商人としての動機に疑問はありませんが、その移動ルートに疑問を感じます。もし貴女方を含めた行商がライル帝国までの最短ルートを辿るなら、レディナスから東にある森林を迂回して北東にあるアイリ王国側に回り込むのではなく、そのまま南下して、ルドラ公国を経由してライル帝国に向かうのが最も安全かつ早いルートのはずです」


「そうなの?」


「ええ・・・理由としてセーレンス川を経由する必要性があったかどうか、という可能性はありますが・・・ただの休憩地点や水分補給を理由とするのであれば、やはりルドラ公国などで補給するのが妥当と思われます」


「んー・・・」


「この移動ルートを指示したのは誰かわかりますか?」


「いや・・・私はあんまりそういうことに興味がなかったから・・・皆について行く程度しか考えてなかった。ごめん・・・」


「そうですか・・・ベルモンド様なら何かご存知かもしれませんね」


「あーうん、そうかもしれない」


「分かりました、ありがとうございます。それでは次はベルモンド様にお話をお伺いしたいと思いますので、お手数ですがお呼びしていただいても宜しいでしょうか?」


「あ、うん・・・ちょっと待ってて」


ヴェインの姿が室内から消え、ミリティアは「ふぅ」と一息つく。

何故だか通常の事情聴取よりも気疲れしている気がする。


(ヴェインさんは・・・やや独特な感性をお持ちなのかもな。あの程度で声が裏返ってしまうとは・・・私もまだまだ心が弱いのかもな。しかし気になる情報が出てきたな・・・行商の移動ルートか。このルートを辿ったがために魔獣に襲われ、そしてヒザキさんとヴェインさんたちは出会った。これは・・・本当に偶然なのか――)


事情聴取も折り返しを過ぎたところ。

残り二人。

ミリティアは近づく人の気配を感知し、表情を再度、引き締めた。



************************************



情報源その4:ベルモンド=マットウィヤー



「名前はベルモンド=マットウィヤー。出身はレディナス。年齢は今年で33の独身だ。なんでも聞いてくれって言いたいところだけど・・・、俺から聞けることは、既に前の二人から聞いちゃったんじゃないかな? あ、因みにヴェインから口調はいつも通りでいいって聞いてるから、いつも通りに喋ろうと思ってるんだけど、いいかな?」


「口調に関しては問題ありません。話については・・・そうですね、お二人は貴方と共に行動をされていましたので、今に至る経緯はほぼ確認させていただきました」


「ほぼ?」


「そうですね・・・念のため重複した内容をお伺いすることになるかもしれません」


「そりゃそうだ。同じ現場にいた人間から別々に同じ情報を得て、初めて『その情報』は信憑性を持つもんだもんな」


「話が早くて助かります。ただ、その前に別の質問もさせてもらいます」


「いーよ、何が別で何が同じかも俺からすれば分からないんだし、遠慮なくどんどん聞いてくれ」


「ありがとうございます。では・・・ベルモンド様たち含め、行商の方々が積んでいた荷物の内容はご存知ですか?」


「荷物? 自分たちの商品なら頭に入ってるが、さすがに他の商人のことまでは分からないぞ。行商や隊商を組む際の決まり事でな。双方の合意があれば別だが、特にそういった仲でもなけりゃ商品の内容なんざ共有しないぜ」


「どんな些細なことでも構いません。何かその行商に異変を感じませんでしたか?」


「異変、ねぇ・・・そうだなぁ・・・」


「何か、引っかかることはありそうですね」


「ああ、まあ・・・異変、という言い方が合っているかは微妙だけどな。違和感は感じてたよ。まず移動ルートが遠回りだったんだ。俺たちは――」


「ライル帝国に向かおうとして、しかし迂回路となるセーレンス川を経由して移動した、ですね?」


「・・・セルフィかヴェインからの情報で、もうその推測が立っていたか。あいつらは、そんなことは微塵も気にしてなかったからな・・・断片的な情報から矛盾を見つけだすなんて流石と言うべきか何というか。その年でおっそろしいねぇー」


「褒め言葉として頂きます。続けてください」


「おう。その経路をレディナスで聞いたときに行商のリーダー役だったバインの奴に確認したんだが、どうにも歯切れの悪い回答しか返ってこなくてな・・・結局、明確な意図ってのは聞き出せなかったんだよ」


「そんな状況で、貴方はセルフィ様とヴェイン様のお命もかかった旅に行くことを決意したんですか?」


「・・・はは、きっつい言い方だね。まあそうだな・・・。迷いがなかったと言えば嘘だ。ただ、俺の経験上からして、あのセーレンス川付近で大型の魔獣は見ていないし、今回の旅では俺の知り合いの傭兵も参加していた。あいつの実力は俺の中でも折り紙付きだったのさ。だから後は行商内の知らない連中の動向に気を配っておけば問題ない、と判断しちまったんだ。今となっては・・・判断ミスだったがな」


「確かに・・・セーレンス川近郊は、大型魔獣の出現はここ数十年確認されていないとされています。・・・私の言い方も少しキツイものでしたね。申し訳ございません」


「いや事実さ。今回は結果オーライだったものの、次が保障されることは無い。一応、二人の命を預かっている身なんだ。今回の失態を身に刻んで、次に繋げるようにするよ」


「ふっ、そういう考えは嫌いではありませんよ。是非ともそうしてください」


「ははっ、ああ、わかったよ」


「話を戻します。そのリーダーを務めていたバインという者。何か背後に繋がっている存在などを感じたことはありませんか? 例えば――」


「もし、ヒザキを疑ってるんなら、そりゃないと思うぜ」


「――」


「例えば仮説として、今回の行商が何者かに仕組まれたものとしよう。目的は積み荷が妥当かね? 行商の誰かに対しての私怨の可能性もあるし、初めて見る魔獣が出たんだ。眉唾もんだが、何かしらの実験が行われている、なんてぶっ飛んだ考えでもいい。だが、どれが理由だとしても、ヒザキが関与しているとは思えないんだよな」


「それは何故です?」


「積み荷にしろ、私怨にしろ、実験にしろ・・・俺たちを生かす理由がないからさ」


「それは理由としては弱くないですか?」


「はは、やっぱりヒザキを多少なり疑ってたんだな」


「・・・」


「悪い悪い、こうして気づいたことを口にするのは癖なんだ。許してくれ。まあ、なんだ・・・確かに俺の言ったものは絶対じゃない。今回のことが人為的なものとすると、尚更だ。人の考えることなんて、予想のつかないことばっかりだからな・・・。そもそもあの魔獣だって仕組まれたものではなく、本当に偶然出くわしただけで、今回の移動ルートを画策した奴の本当の目的は別にあったのかもしれない。『かもしれない』なんて上げれば上げるほど、いくらでも存在するもんだわな。だから、俺がさっき言った話も『建前』でしかないのさ」


「建前・・・」


「つまり、俺がヒザキを信じてるってことだ。商人として、物だけじゃなく人の目利きにも自信はある。今回はその上で選択ミスをしたが、その自信は揺らいじゃいないさ。でもいきなり『信じている』なんて精神論を言っても頭に入ってこないだろ? だから建前から入らせてもらったのさ」


「私は回りくどい言い方より、愚直であろうと、真っ直ぐに言ってもらった方がいいですね」


「ありゃ・・・、そいつは失礼」


「ですが可能性の議論をいくらしても無駄というのは同意です。この件についてはヒザキ様にも直接お伺いをしたいと思います」


「まぁ・・・、それが妥当だわな」


「一応・・・貴方が信じている、という条件も考慮して伺います」


「・・・・・・ど、どうも」


「そこで(ども)らないで下さい。・・・話を続けます。他に行商について、何かお気づきの点はありますか?」


「そうだな・・・基本的にバインが怪しいってのは間違いないんだが。後は・・・そうだ!」


「何か思い出しましたか?」


「ああ! そうだ・・・魔獣に襲われる間際なんだが・・・、シェリの匂いがしたんだ」


「シェリ? 柑橘類の果物ですか?」


「ああ。その時は妙だな、とは思ったんだ。でも本当に微かな匂いだったし、直後に魔獣に襲われちまうから危うく忘れるところだった・・・」


「何故、妙だと感じたのですか? 荷物の中に果物があってもおかしくはないのでは?」


「シェリって果物はな。その匂いは果汁から発せられるんだ。硬い皮で覆われているんで、皮を剥かないと匂いは全くしない」


「近くで誰かがシェリを食べていたのでは・・・」


「シェリってのは、極端に匂いが薄い果物なんだよ。皮を剥いて、果実に被りついて、そこから溢れる果汁からようやく匂いを微かに感じられる程度なんだよ。俺は魔獣に襲われる前まで馬の上に座ってたんだ。近くで誰かが食べていたとしても、外にいて匂いを感じるなんてことは、早々あり得ないと俺は思うね」


「つまり外でも感じるほど、濃度が濃いシェリの匂い・・・。それはシェリではなく、他の何かだった可能性も――」


「そ、可能性の話さ。俺もえらそーに自説を述べたが、まあぶっちゃけると、シェリそのものの可能性もあるわな」


「そうですね。貴方の前を走る荷台に仮にシェリを詰めた木箱があるとして、何かしらの衝撃で幾つものシェリが木箱内で潰れてしまった場合、いかに匂いが薄いものだったとしても、風に乗ってたまたま匂いを感じることもあるかもしれない」


「だな。証拠がなさすぎて、想像の範疇を出ない話だ」


「ふっ、また乗せられてしまいましたね」


「別に、乗せたつもりはないんだけどな・・・まあ気になった点はそれぐらいだなー」


「ありがとうございます。私としても今回の件は疑問が残っております。事件が起こったのもアイリ王国の領土内のことですので、今後の調査の一助とさせていただきます」


「ああ、頼むよ」


「それでは、先も伝えました通り、セルフィ様たちにもお伺いした内容を改めてお聞きしたいと思います」




数十分ほど、ベルモンドと話をしたミリティアは腕を組んで、目を閉じた。

ベルモンドはすでに退室しているため、この部屋にはミリティアのみが残っている。


(さて・・・随分と不穏な動きが、見えない何処かで起こっているようだな・・・。だが、この私がいるアイリ王国領土内で起こそうなどとは・・・後悔させてやらねばならないな)


柱時計に目を向けると、いつの間にか二時間ほど経っていた。

思いのほか、時間が進むのが早く感じる。それほど有意義な時間だったということなのだろう。

無用な情報も数多く入ってきた気もするが、それを差し置いて、有用な情報もあった。


(この事情聴取が終わり次第、セーレンス川の調査に向かうか。後はシェリの匂い・・・これについては研究班に依頼をしておくか)


「・・・」


「・・・」


考え込むミリティアが何気なしに目を開けて、正面を見据えると、そこに座っている男と目が合った。

思わず椅子から飛び上がりそうになった。

動揺はなるべく表に出さないように努めたが、肘が椅子の背に当たった音は明らかに『動揺』として相手に伝わったに違いない。


(い、いつの間に・・・!? け、気配は・・・無かったはずなのに!?)


目を見開くミリティアを、相も変わらず表情を変えないヒザキが無言で眺める。


「そろそろ、いいか?」


「ぇ・・・?」


「事情聴取」


「え、ええ・・・・・・」


背中に冷たい汗が流れるのを感じつつ、ミリティアは笑顔を取り繕った。

こうして最後の聴取が始まった。




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