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無能と追放された王都防衛官、辺境の最前線で無敵城塞を作り上げる  作者: 愛良夜
第一章 辺境防衛戦

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第五話 ラプリッツ砦防衛戦Ⅰ

「〈鉄杭〉は砦の最終防衛線で待機、〈風烈〉の部隊と〈雷火〉の部隊をそれぞれ右側の森と左側の茂みの中で待機させておいてくれ」

「ん?重装兵士達を…後ろに?」

「そうだ、要するに出来るだけ魔物達を引きつける。確か魔物の素材も金になるんだろう?なら出来るだけ殲滅しよう」

「…戦術的には問題無いわ…それで行きましょう、サラ、お願い」


先程アレンの出した指示をレティシアはそのままサラに告げる。彼女は何やら小さい魔法陣を口元と耳元に出現させると、そのまま指示を出し始めた。すると、砦の中から次々と兵士が外へ出ていき、先ほどアレンが指示した通りの場所へ移動が完了した。


「来た…もう目視で見える範囲にいるわね」


スケルトンのような見た目をした錆びた剣を持つ魔物と、悪臭と肉片を撒き散らしながらこちらへのそのそと歩いてくるゾンビ兵士のような魔物が現れた。


「指揮官、敵戦闘は既に〈雷火〉部隊の射程に入りました」

「まだだ、まだ撃つな」

「しかし…」

「ここで攻撃を開始したらヘイトがそちらへ向く。敵の最後尾が見えるまで我慢しろ」

「言う通りになさい」

「分かりました」


サラは再び指示を出す。のそのそと敵兵が更に近づいてくる。だが幸いにも侵攻してくる魔物の最後尾が見えた。どうやら今回はそれぞれ30体程のようだ。低ランクの魔物だから、一般兵士でも倒せるが、それなりに数は多い。


「最後尾が射程に入り次第、まずは〈雷火〉の部隊に最高威力の魔法を打ち込んでくれ。それで魔物の過半数が吹き飛ぶはずだ。最終防衛線にいる〈鉄杭〉の部隊は魔法攻撃が終わったらそのまま前進を開始、〈風烈〉の部隊はに生き残りを各個撃破だ」

「了解」


サラがすぐに指示を出す。数分後、森から強力な魔法が次々と魔物の列目掛けて飛んできた。怒涛の勢いで降り注ぐ魔法は、まるで今までの鬱憤を晴らすような私怨も少し含まれている気がする。数分後、地形が変わるかと思われた怒涛の魔法攻撃が終わり、茂みからグレンを筆頭とした〈風烈〉の部隊が俊敏に戦場へ躍り出た。運良く魔法攻撃を逃れた魔物はあまり多くなく、ほとんどが死にかけだったり、余波で手足が吹き飛んで動けなくなった瀕死の魔物だけだった。


「おいグレン!俺達にも少し残せ!」


後から前線にやって来た大盾を持った〈鉄杭〉のリーダーらしき人物達も残った魔物を片付け始める。


「サラ、〈流杭〉のメンバーに〈節点杭(ノードスパイク)〉を持って、奥の岩陰の裏に2つ、左の茂みの更に奥、森戸の境界線あたりに2つ打ち込むように言ってくれ。念のため護衛もつけてな

「分かったわ」


魔物の出現は基本的に魔力脈が幾重にも重なる場所、もしくは絡まった魔力脈の中に異様に堆積した魔力が変質し、噴出(オーバーフロー)した事による。なので節点杭(ノードスパイク)のような特殊な装備で溜まりに溜まった魔力を正しく放出してやれば、暫くは魔物は出現しなくなる。節点(ノード)自体は悪い物じゃない。健康的な節点の周囲では農作物が豊作だったり、周囲の人々がいつもより肉体的にも精神的にもバフがえられる効果がある。だから節点を見つけては片っ端から全て杭を打ち込んで抜いてしまうのは勿体無い。良性節点(ノード)は利用して、悪性節点(ノード)に杭を打ち込めばいい。


そうこうしているうちに、サラが再びレティシアとアレンに話し始めた。


「所定の場所に打ち込みが完了しました。これ以上の魔物の出現は確認できないそうです」

「そうか、なら戦場の掃除を始めよう」

「了解しました。戦闘指揮、お疲れ様でした」

「あたしは何もしてないわ、こいつよ」

「戻ろうかレティシア」

「そうね、サラ、今回もいつも通りに、売れる素材は全て換金して」

「分かりました。今回は砦にも被害は出ていませんが、かなり吹っ飛ばしたので、あまり…」

「いいわよ、みんなの鬱憤が晴れたし、それだけでも上々よ」

「分かりました。統計完了し次第、いつものように持っていきます」

「ありがとう、それじゃあアレン、行きましょう」


砦の見張り台から降りて、2人は再び執務室へ戻った。


「確かにあんたは指揮官向きね。それじゃあこれからはあんたが指揮官って事でいいかしら?」

「いや、手間かもしれないが、ラプリッツのみんなに信頼してもらうまでは、今のままでいこう」

「随分と慎重なのね」

「今日初めてこの街にやって来たんだ。それくらいは弁えているよ」

「そう…少しだけ、あんたの事、認めてあげるわ」

「それは良いニュースだ」

「こほん、先ほどの話を続けるわ…」


それから夜が吹けるまで、レティシアはアレンにラプリッツ砦の問題、議会の問題を一つ一つ丁寧に教えてくれた。どちらも共通の最大の問題としては、


「「金がない」」


の一点に絞られる。それに加えて、ラプリッツ砦の勢力、いわゆる〈レティシア派〉と〈議会派〉で人々の意見が割れているのも問題の一つだろう。


「短期的な解決策は、まずは資金で議会派を黙らせて、議員の再選出だな。その際にレティシア派の人員をねじ込められると最も良いが…まずは資金調達だ」

「それに関してはあんたと全くもって同意見ね」

「それは良かった」

「それで?どうするつもり?」

「まずは各分隊長と副隊長に合わせてくれ、それから隊員達もだ。とにかく今は人手が欲しい」

「分ならサラを呼んでくるわ。外の広場で待ってなさい」

「分かった」


レティシアが早足でサラを呼びに行ったようなので、アレンは大人しく砦の中の広場で待っている事にした。砦の中心に位置するこの広場は、普段は訓練用に使われるらしく、広場のすみの方に訓練用の木刀や非殺傷性の武器が多く置いてあった。暫く色々と訓練用品を眺めていると、1番最初にやって来たのはグレンとミラだった。


「あれ?アレンさんじゃないですか?どしたんすか?」

「一度みんなと顔を合わせておきたくてな、レティシアに集合をかけてもらった」

「そういうことなんすね」


暫くグレンと談笑していると、続々と各分隊長および副隊長達が集まって来た。最後にレティシアがやって来て、全員いるのを確認した後、彼女は真剣な口調で「整列!」と言い放った。


「それじゃあアレン、後はあんたの見せ所よ」


集められた面々は重装備の中年男性を筆頭に、綺麗な隊列を組んでいる。そしてレティシアはどこからか持って来た質素な台をアレンの前に置くと、そこに立つように指差した。


「初めまして、ラプリッツ砦の分隊長及び副隊長方々、私の名前はアレン、〈アレン・イージス〉だ。今日からここ、ラプリッツ砦及びズデーテン領の新領主に就任した。普段は九月にアレンと呼んでくれて構わない。私がここに来た目的は一つ、砦と街に更なる発展と平穏をもたらす為だ。そんなわけで、みんなには協力してほしい。勿論タダ働きをさせるつもりはない」


アレンはそう言いながら魔法袋からずっしりとした金貨の入った中くらいの袋を取り出した。


「レティシア、これを各分隊長に平等に配ってくれ。これは先程の魔物撃退戦の報奨金だ。戦闘に参加した隊員全員に行き渡るようにしてくれ」


受け取ったレティシアはその重さに驚愕したが、直ぐに分隊長達に配り始めた。一応各隊に金貨20枚ほど行き渡る量を準備したが、それで足りるだろうか。


「勿論君達を金で買うつもりはない。だが私は金に糸目をつけない者だ。正統な働きに正当な対価を、そしてこれはただの始まりでもある。これからこの街は、このラプリッツ砦は私の元でもっと繁栄をしていくと、させると誓おう。だから、これからは君達の力も貸してくれ。話は以上だ。各分隊長は1時間後に会議室へ、それまでに報奨金の分配を終わらせている事を期待している」


アレンはそのままレティシアと共に踵を返した。そのままレティシアに連れられて、いつも作戦会議をする会議室へひと足先にやってきた。

レティシア「これで誰も来なかったらどうするつもり?」

アレン「泣く」

レティシア「やめなさいよみっともない」

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