7.善のパーティの崩壊(ざまぁ回
一方その頃、勇者カーネリア一行は――
・勇者カーネリア
魔将ヴェラニアの城には強力な結界が張り巡らされている。近付けば全身が腐り果てて死ぬことになるこの結界を解除するには、東方に散らばる5つの秘宝を集めなければならなかった。
ドゥが去ってより秘宝の探索は停滞していた。だがようやく3つ目の秘宝が暗闇の迷宮と呼ばれる場所にあることが判明し、僕たちはその迷宮の攻略を開始した。
「うっ、ううっ……。おい、マグダラッ、お前の回復魔法はまだ使えないのか……っ!? 傷が、傷が酷く痛む……」
「ふぅ、ふぅっ……まだに決まっています……。お願いですからお兄さま、もう少し後衛をいたわって下さいまし……」
「使えぬプリーストだ……」
「おいベロスッ、俺の従姉妹にいちいち暴言を吐くな!」
「ふんっ……事実を言ったまでだ。魔力の枯渇したプリーストなどただのカカシだ」
「撤回しろ!」
「すまぬ。カカシではなく頭の軽い女狐だったな」
「貴様ぁっっ!!」
仲間たちはもうボロボロの満身創痍だった。
ナイト・ベロスとガブリエルが口ゲンカを始めて、マグダラもマグダラでガブリエルの陰に隠れてベロスを陰険な目で挑発していた。
もううんざりだ……。
新人の斥候は先日逃げ出した。彼はドゥと同レベルの仕事を要求されて、無能扱いされて、最後はケンカ別れで去って行ってしまった……。
盗賊王の息子ドゥの代わりなんて誰にも務まるはずがないのに、ムチャクチャを言うガブリエルたちが僕は憎い……。
彼らがもう少しまともだったら、ドゥは僕の前から去らなかった。僕は、ドゥを心から尊敬していた……。
「うっ……?!」
先頭を進んでいたナイト・ベロスが矢の罠にかかって膝を突いた。
「はっ、マグダラに暴言を吐くからそうなるのだ!」
違う。ドゥを追い出したからだ。
彼はいつだって先行して罠を解除してくれていた。
「まあ可哀想。ですけどごめん遊ばせ、まだ魔力が回復しておりませんの」
「この女狐が……っっ、うっ?! は、腹が、急に……っ」
「ははははっ! どうやら矢に腹下しの毒が塗られていたようだな!」
「まあ大変! ナイト様は鎧を脱ぐだけでも――キャァッッ?!」
「マ、マグダラァァッッ?!!」
プリースト・マグダラが落とし穴に落ちかけた。
穴の底は蛇だらけで、ガブリエルがとっさに手を伸ばして助けなければ、想像するだけでもおぞましいことになっていた。
「た、助けてっ、助けて下さいっ、お兄さまっっ!!」
「あ、暴れるなっ、落ち着けっ、落ち着かないと俺まで落ちるっ、あ、ああああっっ?!」
見るに見かねて僕はガブリエルを後ろに引っ張って、マグダラごと罠から助け出した。
「す、すまぬ、御子様……っ、た、助かった……」
「ドゥがいればそもそも落ちなかった。彼を外したのは失敗だったんだ」
「だけどアイツは泥棒ですの! 薄汚い泥棒とは絶対に組めない! ってお兄さまがいってましたの……」
「もう帰ろう。ドゥに謝って、パーティに戻ってきてもらおう」
「こ、断る!」
「そうだ、盗賊であるヤツを呼び戻せば、後々の我々の名誉に不都合が生じる……。うっ、うぐっ、ぉ、ぉぉぉ……っ」
ナイト・ベロスは王国最強の騎士だが、名誉という妄想にとらわれている。
それにお腹を壊してうずくまりながら言われても、全然説得力がないどころか、く、臭い……。
「もう無理だ、撤退しよう」
「断る!」
「お、お兄さまがそう言うなら私もお断りですわ!」
「は、腹が落ち着くまで、少し待ってくれ……、うっ、うぅぅぅぅーーっっ?!!」
もう嫌だ、助けてくれドゥ……。
ガブリエルは傲慢で、マグダラは同性の僕に嫌な対抗心を向ける。ベロス卿は頼りになるけど融通が利かなくて、うんちくさい……っっ。
僕たちは休んで、進んで、休んで、進んで、余力のある僕を盾にしてゾンビみたいに前進していった。
「お、おぉ……! あれは蒼海の秘宝!」
「見て、お兄さま! あそこに紫宝箱がありますわ!」
後半はほとんど僕ががんばったようなものだけど、秘宝はどうにか回収できた。
さらにその奥に、金箔とラピスラズリで彩られた紫宝箱と呼ばれる超レア箱を発見した。
彼らは舞い上がった。これで億万長者だ。金さえあればドゥ抜きでも困らない!
そう思い上がったことを口走り、僕を大きく失望させた。
ここは迷宮。深層に至った者に相応の財宝を与える。ただし――鍵がかかっていた場合、シーフやスカウト抜きでは開けられない。特に紫箱となると達人級の鍵開けスキルが必要だった。
「鍵、かかってるね。ドゥがいたら開けられたのに」
「バ、バカなぁぁぁーーっっ?!!」
ドゥ、お願いだ。帰ってきてくれ……。
もう僕はこんな連中のおもりはいやだ……。ここままではいつか本当に全滅してしまう……。
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ざまぁ展開はこの先も二段、三段底になっています。




