表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/192

9.白旗とモモンガ

・盗賊


 その日、エクスタード市に再び緊張が走った。新たな軍勢がこちらに迫り、往来は防壁に集まる守備兵たちと、その支援をする兵や大人たちでごった返していた。

 俺も一介の戦士として防壁に上り、弓と矢を手に彼方の軍勢を見やった。


「大盗賊ドゥ、あんたと一緒に戦えて光栄だ!」

「あの王子とお前が手を組めば必ず勝てる! 頼りにしてるぜ!」

「ああ、こちらこそ頼りにしている」


 無駄口が少し多かったが兵たちの士気は燃えるように熱かった。

 ところでだが、俺は人よりもずっと視力がいい。彼方にある敵軍を凝視して様子を見ていると、先頭の部隊になにか白い物が混ざっていることにふと気付いた。


「どうしたの、ドゥ?」

「モモゾウ、戦いが始ま前にオデットのところに戻ってもらう約束だったが……その前に少し仕事を頼めるか?」


「うんっ、いいよっ! だってボクチンもドゥと同じ戦士だもん!」


 お前はこんな下らない戦いに加わるべきじゃない……。

 俺は心の中でそうつぶやいて、モモゾウの尻ををボールみたいに掴んだ。


「ぇ…………」

「すまん、モモゾウ……」


「えっ、えっえっ、えーーーっっ?!!」

「ちょっと見てきてくれ」


 オーバースローで大きく振りかぶって、俺は仰角30度ほどの高さで軍勢に向けてモモゾウを投擲した。モモゾウの悲鳴や抗議が聞こえたような気もした。


「おおっ、モモゾウちゃん様は今日も高く飛ぶなぁっ!」

「モモンガってあんなに上手く空を飛べるもんなんだな!」


 モモゾウは天高く飛翔し、その腹膜を広げて大空の風をつかむと、やがて遠く見えなくなっていった。


 相棒の姿を探して1分ほど彼方を観察すると、空に小さな点が現れた。それはみるみるうちにモモゾウの姿となり、颯爽と防壁の上部を旋回すると、最後には俺の胸に飛びついた。そして言った。


「もーっっ、ドゥはモモンガ使いが荒過ぎるんだってばーっっ!!」

「後で謝るよ。それで、様子は?」


「あっ、そうだった! あのねっ、あの人たち白い旗を挙げてたよ! 今すぐプルメリアたちに伝えなきゃ!」

「でかした。では悪いが報告も頼む」


「任せて、ドゥ! へへへ……ボクチンも、ドゥたちの力になれて嬉しいっ!」


 弓と矢を背中に戻し、俺は戦闘態勢を解いた。偽りの白旗である可能性もあるので、念のために待機する必要があった。


「白旗……? おお、確かに白いのがチラチラと……」

「まさか、あの軍勢って……俺たちの援軍なのか!?」

「油断するには早いが、多分な」


 やがて、白旗を掲げた軍勢が防壁から距離を取って集結した。その中から少数の護衛に囲まれた騎馬兵たちが出てきて、正門前にたどり着くと声を張り上げた。


「我ら辺境諸侯はアイオス王子にお味方する! 2000人の軍勢をたった1人でひれ伏させたそのカリスマと武勇! 命を賭けるに値する!」


 それは静観を決め込んでいたはずの辺境の諸侯たちだった。

 数の上ではいまだに厳しい劣勢にあるというのに、彼等は一見は全く勝ち目のないこの戦いに加わると言ってくれた。


 きっかけは王子の奇跡の勝利だ。自ら戦いに身を投じ、王族のカリスマで軍を従えたことにより、誇りと命を賭ける価値があると見なされた。


 推定兵力差は78000:3200


 全く勝てない戦いではなくなってきた。

 ベロスたちが全力を俺たちを潰しにくる前に、俺たちはさらに仲間を募らなければならない。


もしよろしければ、画面下部より【ブックマーク】と【評価☆☆☆☆☆】をいただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ