18-2.ざまぁ - 裏切り者たちの断罪 -(ざまぁ回
臨時議会にて――
「こんな大事になるとは思わなかったのだ! 許してくれ、盗賊ドゥを陥れたのは認めるが……だ、だが、だが、お、俺は……御子様まで追いつめる気はなかったのだ……っ!」
証人ガブリエルは無様だった。
だが素直に罪を認めたところは多少なりとも評価できる。論戦に一縷の望みをかけていた反逆者たちは、ガブリエルの自白に深く落胆した。
「お兄さまのせいでわたくしまで悪者ではありませんか! カーネリア様、わたくしは何もしませんわっ、何も、何もしていませんのっ!」
確かにプリースト・マグダラは何もしなかった。彼女は従兄弟のガブリエルの金魚の糞みたいなもので、ただ依存する相手に意見を合わせていただけだろう。
カーネリアがうんざりとした顔で彼女を見ていたことを覚えている。
「俺は知っているぞ、ドゥ! 貴様がカドゥケスの変態どもの奴隷だったってことを! 貴様のような汚れた存在となぜ高貴なる我々が組まなければならぬ! 俺に同情してくれ、諸兄ら! 盗賊ドゥは薄汚い出自の変態で犯罪者だ!」
残念なことにナイト・ベロスに静かに賛同する者がちらほらといた。だがベロスの発言に怒る者の方が多かった。勇者カーネリアが魔将を討つ前だったらこうはならなかっただろう。多くの者がベロスと同様に俺を軽蔑しただろう。
「言わせておけば……っ! ベロス卿っ、今日という今日はもう許せない!!」
「なっ、勇者カーネリア……? いったい何を……」
「君のどこが高貴な存在だっ、仲間を裏切り、魔将討伐の妨害をすることのどこが高貴な行いなんだ!! 僕は知っているっ、僕の知りうる限り、最も高貴で気高い存在はドゥだ! 盗賊ドゥの高潔さの前には、君のその傲り高ぶった誇りなどなんの価値もない!!」
盗賊を庇う御子にして勇者、魔将討伐の英雄。それはなかなかに刺激的な光景になった。
ベロスは侮辱だとわめき、収まりの付かない怒りに暴れ出すので退廷させられていった。
「その男はただの野盗だ! 馬車の中で何度も、何度も、何度もこの私をナイフで脅した上に敷物にしたのだ! あまつさえ、こ、この私に、あんな酷い食事を……ネズミがかじった生のドングリを食わせたのだ! な、なぜ笑うっ、なぜ私を失笑するのだ諸侯らっ!?」
さらにその後の騒ぎもただただ酷かった。
責任の押し付け合い。権力の世界の駆け引き。どの貴族がこれからの標的足り得るか、メモ帳が必要なほどだった。
肝心のモモゾウが城のお姫様方に気に入られたようで、ちょうど不在だったのが悔やまれる。
それはもう2度と貴族同士のゴタゴタには加わるまいと心に誓うほどに、うんざりするような酷い狂乱劇だった。
国王の裁量の下に陰謀の首謀者たちには罰が与えられ、もちろんその発端となったガブリエルたちにも沙汰が下された。
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パラディン・ガブリエル
禁固3年。パラディンの位を剥奪の上、神殿を追放。
ナイト・ベロス
男爵位を甥に譲渡。沙汰は甥の判断に任せることに決定。
プリースト・マグダラ
神殿にて3年の謹慎。プリーストからシスターに降格。
サンテペグリ子爵
国家反逆罪。分家に子爵位を譲渡。隠居。沙汰は分家に委任。
以下略
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処罰が軽過ぎる? その通りだ。だが貴族諸侯の集合体であるこの国では、領地での犯罪はその領地でのルールで裁かれる。貴族階級は常に自治権により守られているため、国王であってもこいつらを十分に裁くことはできない。
この国は矛盾していた。
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