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・エピローグ5/7 謀られた世界 - ディシム、アンドラス -

・ディシム


 あれから6年が経った。

 気付けば俺様は3児の母で、杖を握ることもめっきりと減った。


「ガキども、飯の時間だぜ!」

「ありがとうございます、お母さん。ですが品性を疑われるような言葉遣いは子として困ります」


「お、おう……」

「おや、どうされたんですか、お母さん?」


「お、お前よぉ……。本当に、俺様のガキで、5歳児なんだよな……?」

「それはお母さんの方がよくご存じでは?」


 羽振りのいいあの王に海辺の領地を貰った。

 切り立った断崖のせいで、漁業も難しい厄介な土地だった。


 だけど景色はいい。

 潮風もいい香りで、民も塩害に負けず強く生きている。


 俺様はガキどもの口に飯をつっこみながら、ほどほどに優雅な伯爵夫人暮らしを見つめ返した。


「妹たちの面倒は僕が見ます。お母さんは、お父さんの手伝いに行って下さい」

「いやいや……。5歳児は育児する側じゃなくてされる側だってのっ、俺様の息子よぉっ?!」


 マイダーリンはここに腰を落ち着かせてからというものの、幸せそうだ。

 今日だって断崖の工事に出ていた。


 断崖を崩して、海と陸を繋げようとがんばっていた。


「ただいま、ディシム」

「おおっ、マイダーリンッッ! 会いたかったぜぇーっ!!」


「また、硬い岩盤、当たった。破壊、頼めるか……?」

「任せな、ダーリン! けど、ガキどもが……」


「ご飯、食べて、みんなで、行こう……」

「お疲れさまです、お父さん。お母さん、お父さんにタオルを渡してはどうでしょう?」


 こういうのを鬼子って言うのかね……。

 マイダーリンも我が子を見つめて、首を横に傾げてしばらく固まった。


「どうされましたか、お父さん?」

「チェン、お前。もう俺より、口が上手い……」


 本当にコイツ、俺たちの子か……?

 俺たちの間に産まれた子は、将来末恐ろしいお世継ぎ様だった。



 ・



・アンドラス


 あれから9年が経った。

 9年前にギルモアたち結社メンバーが予言した通り、次の時代は人と人の争いの時代だった。


 あの戦いに加わった者たちからすれば、あまり面白い流れじゃあない。

 空の上に戦わなきゃいけない相手がいるのに、なんで人間通しで潰し合いをしなきゃならんのだと、呆れ果てる連中も多かった。


 この流れにはクロイツェルシュタインも例外ではない。

 不干渉主義を貫こうにも、恩義あるリステンが隣国に戦争をふっかけられたりすれば、派兵をしないわけにはいかなかった。


「なんだ、ドゥじゃなくてハゲの方かー……はあ、超残念……」

「失礼な野郎だな、イウルン……」


 今回もそうだった。俺もリステンに援軍として参戦することになった。

 ゴタゴタが落ち着くと、イウルンっていうクソ女に絡まれた。


「なんでドゥじゃないのー? チェンジで!」

「ドゥは戦争には加わらん。カーネリアもドゥも、どこか一国の味方をするわけにはいかねーんだよ」


「はぁ、つまんない時代……。これなら魔物と戦ってた頃の方がよかった……」

「それなー……。つい同意したくなるが、それじゃドゥたちが立場がねーだろ?」


「でも実際そうでしょ。これじゃ魔物ぶっ殺してた方がマシじゃん」

「まあ、な……。そのうち落ち着くだろ……」


 まあ、9年経ってもまだ人間は国境争いを続けているわけだが……。


「昔はもっとシンプルだった! ぶっ殺せばそれで終わりだったのに!」

「物騒な女だ……」


「おまけにハゲと一緒とか最悪!」

「おい、それ以上言ったら戦争だぜ。言葉に気を付けな」


「ハゲ」

「テメェッッ!!!」


 9年が経ち、世界はめんどくせぇ時代に入った。

 いったいこいつらは、いつまで人間同士で争うんだろうな。


 魔物、魔軍、魔将、魔王。あの頃は国家同士が争う理由なんてなかった。


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