13-1.こっそり帰ってきた追放者 - 女勇者 -(ざまぁ回
・勇者カーネリア
僕たちは今日、5つの目の秘宝である紅蓮の宝珠を求めて、古王の墓所を探索していた。
ドゥが僕たちの前から去っており、苦難の連続だったけれど、なぜか今回の迷宮は拍子抜けするほどに簡単だった……。
「ふんっ、古王というのはさぞ羽振りがよかったのだろうな」
「ベロスの言うとおりだ。宝箱に鍵が1つもかかっていない迷宮なんて初めてだ!」
おかしい。何かが変だ……。
ところどころの床に金貨が散らばっていて、侵入者よけの謎解きも全て解除されている……。
誰かが僕たちより先に冒険したかのようなのに、宝箱はそのままだった……。
「あら、あれってベロス卿が集めているオモチャではなくて?」
「オモチャではない! あれは古の帝国の勲章だ! おお、これは状態もなかなか――ウグゥッッ?!!」
「だ、大丈夫か、ベロス卿ッ?!」
でも罠はそのままだ……。
ベロス卿の鎧の隙間をぬって、罠の弓矢が彼のふとももに突き刺さった。
「気が進まないけど治してあげる。はいっ、もう痛くないでしょ!」
「うっ……た、たすか……うぐはぁぁっっ?!!」
「はははははっっ、また腹下しの毒矢にかかったみたいだな、ベロス!!」
なんて恐ろしい罠だ……。
ベロス卿はお腹を抱えながら道を引き返していった。ほどなくして僕は耳をふさぐことになった……。
「うふふふっ、いばりんぼうのベロスがあれに引っかかると笑っちゃいますわ」
「同感だ、妹よ。ああ、いいざま――うわっっ?!!」
「お兄様っっ?!」
人の不幸を笑うからそうなるんだ……。
ガブリエルは必要もないのに段を上ろうとして、ツルッと後ろにひっくり返って頭を打った。
「うっ……だ、誰だこんなところをヌルヌルにしたやつはっっ!!」
「お兄様、大丈夫ですか? あ……あれは……」
だけどやっぱり、何かが変だ……。
あんなところに上ろうとするガブリエルの頭が1番変だけど、でも……。
「ふふふっ、このダイヤはあたしが拾ったのよ! 誰にもあげないわ!」
「構わんさ、ダイヤモンドは美しいお前にこそ――マグダラァッッ?!!」
「えっえっえっ、あっ嫌っ、嫌っ、嫌っ、嫌ァァァーッッ!!」
プリースト・マグダラは落とし穴の罠に引っかかった。
罠の底は下級のブルースライムでいっぱいだった。
「マグダラッ、俺の手を取れ! さあっ、落ち着いて……!」
マグダラはそれからしばらくはい上がれなかった。
もう愛想も冷え切っていた僕は助ける気にもなれなくて、意地悪かもしれないけど静観した。
「宝箱だ。ん……なんだ、この紙、新しい……えっ?!」
1人で次のフロアに先行して、そこにあった金の宝箱を開けるとそこに『紅蓮の宝珠』と紙が入っていた。まだ迷宮の半分くらいしか進んでいないはずなのに、どうしてこんな中途半端なところに秘宝があるのだろう……。
「まさか、ドゥ……? あっ、この言葉は、あの時の……っ! ……ドゥ、帰ってきてくれたの……?」
手紙にはドゥしか知らない思い出の言葉が残されていた。
カーネリアなんて大げさな名前、自分には似合っていないと気にしていた僕に彼は誇りをくれた。
「ぜぇっぜぇっ、散々だっ! なんで俺がこんな目に遭わなければならんっ!!」
「ガブリエル……。貴方も落ちたんだね……」
「助けてくれてもいいだろう、御子様!」
「すまない」
なんだ、そういうことだったのか……。
ドゥは帰ってきた。僕たちの前に。あの毒矢に落とし穴、高い場所の床に仕込まれたヌルヌルは彼の仕業だ。
「あっ、待って、そこには――」
「なんだ、御子様?」
「いや、多分気のせいだ……」
「やれやれ……。どいつもこいつも手のかかるやつだ。どっこいせっと――ンアアアアアアアアッッッ?!!」
「ガブリエルッッ?!!」
その後僕は、ガブリエルのお尻から長さ15cmほどの針を3本も抜くはめになった……。
ドゥ、帰ってきてくれたことは嬉しいけど、こんなのやり過ぎだよ……。
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