17.勇者パーティの汚れ役ドゥ
「初めまして、ボクはカーネリア。こちらの若い男がパラディン・ガブリエル。そしてその隣のかわいい女性がプリースト・マグダラ。最後にこちらの方がナイト・ベロスだ。よろしく、盗賊ドゥ」
顔を合わせたその瞬間から、俺たちは既に険悪だった。
ガブリエルもマグダラもベロスも、悪名高い盗賊の加入に不満を隠そうともしていなかった。
俺たちは冷めた目で睨み合った。
「ドゥだ。こっちは相棒のモモゾウ、よろしく」
「まあっ、なんて愛くるしい……っ。あ、なんでもないですわっ!」
そんな中でカーネリアだけが俺に心を開いてくれた。
俺たちは国王に祝福され、華やかなクロイツェルシュタインの王城を出て、遙か東方への旅を始めた。
それから4、5日後だっただろうか。そこそこ栄えた町の酒場宿に泊まった。
「ドゥ、君も酒場に下りてこないか?」
「そいつは遠慮しておくよ。どうせあいつらには歓迎されない」
「でも……少しでも打ち解けないと……っ!」
「勇者カーネリア、俺のことはいいから酒場に戻れ。ギルモアとの約束を果たすためにも、あいつらとは過度に接触しない方がいいんだ」
「だったらボクも残る! 待っててっ、食べ物を持ってくるよ!」
「いらん、戻ってくるな……」
「嫌だ! 1人だけ仲間外れなんてボクは嫌だ!」
「アンタな……。アンタって人は、どこでまで……はぁっ、そんなにも真っ直ぐなんだろうな……」
カーネリアは真っ直ぐな足取りで、俺の泊まる個室から駆けだしていった。
俺は閉まったドアを呆然と見つめながら、なんであんなに白く歪みなくいられるのだろうと、その場に居もしないカーネリアがまぶしくなった。
そうだ、カーネリアだ。俺はあの真っ直ぐな人格に惚れた。彼女はいつだって平等で、弱者のために戦うことをいとわず、そしてそれの清らかさゆえに見ていられないほどに不器用だった。
「戻ったよ、ドゥ! モモゾウくんのチーズも持ってきたよっ!」
「チージュッ?! わーぁい、カーネリア大好きーっ!」
カーネリア。どうしてあいつのことを忘れていたのだろう。
彼女は今の俺を形作ったもう1つのピースだ。勇者カーネリアという光り輝く存在を、陰から支えたいと俺はあのとき心に思った。
俺の知らない俺が、北方に行こうと決めたのもその延長戦だ。
残る魔将は2体。カーネリアはいずれ北を目指す。だから俺はこうして北へと旅だったことを思い出した。




