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銀の蜃気楼  作者: トト美咲
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時の手綱

明けましておめでとうございます。

今回は、カラバッジオさんと、三姉妹。が、登場!です。

では、始り、始り!

「バース、俺に“力”を注ぎ入れろっ!」

 ロトは防御壁シールドを被せながら、そう、促した。

「却下!」と、バースは掌より“力”を弾にして、その内側より物体目掛けて解き放す。

 物体の集団は奇声をあげながら、防御壁に激突していく。数体は消滅する一方、バースが連発する“力”の弾により、灰に変わり空間に溶けるが繰り返されていた。


「黙って軍から去ったのは、この為か?」

「正確に言えば、俺は派遣だ。期間が切れただけだ」

「そんな出鱈目は通用はしない。べろっと、経緯を白状しろっ!」

「……【団体】の計画を阻止する。潜り込んで、その施設まで突き止めたが、間に合わなかった」


「話が見えない!その上に、この少年が軍に在籍していたなんて、私は初耳だ」

 アルマは“力”で咲かせた深紅の大輪の花びらを、今に裂けそうな防御壁に向けて吹雪かせる。

「知らなくて当然だ。俺の存在はキミ達から消去させてた。バースには効果が無かったがな!」

「おっと!それ以上は喋るな。タクト、俺達におまえの“力”を注ぎ入れてくれ」

 バースに促され、タクトは“蒼い光”を全身に輝かせ、ロト達にその“力”を注ぎ込んでいく。


「何のつもりだ?」

「ロトくんと呼べばいいかな?バースさんは此処で、まごまごとしているより、さっさと次に進もうと、判断したのだ!」

 タクトは、今もなお、押し迫る物体の集団の隙間に見える〈扉〉を指差して言う。


 蹴散らしていけーっ!


 加速して、物体の集団を薙ぎ倒し、辿り着いた〈扉〉をロト達は開き、潜り抜けていった。



 ★○★○★○★○★○★○



 その先は霧が遮り、一行は、立ち止まっていた。


「バース、この中をどうやって進むつもりだ?」

 ロトはバースと背中を合わせ、そう、訊く。

「親睦会をするぞ!」

 きっぱりとするその言い方に、ロトは唖然となる。

「それ、賛成です。ロトくんてどんな人か、知りたいです」

「まるで、学校だな?どれ、早速うち明かすのだ!」

 和気藹々となるタクトとアルマ。


「俺達は任務を終わらせ《宝》を親元に帰すところだったのだ。タクトしか解読出来なかったメッセージの発信源を、探ろうとしたら、此れだった」

 バースの言葉にロトは驚愕して、ゆらり、と、漂う霧の隙間からタクトを見る。


「この少年も特殊な能力を持っているのか?」

「ロトくん、今はキミの事を訊いている。僕だって、メッセージが読めたのかは、自分でも判らない。さっき対峙していた物体も、見たことがない形をしていた」

「【団体】が発動させた装置が誘き寄せた。別の時に存在している怪物モンスターだ」


「なるほどな」と、バースは呟く。

「ロト、その、援護の要請の為に、メッセージを送ったのか?」

「アルマ……さん。それは、俺じゃない!」

 その証拠にと、ロトは、身に纏う上着のボタンを外し、内側のポケット、トップスを示す。

「何も、其処までして、自身に掛けられる疑惑を、否定する必要は、ないっ!」

 アルマは赤面して、視線を反らしていく。


「さっきより視界がハッキリとしてきたものだから、ロトも妙な行動おっ始めやんのっ!」

 バースの冷やかしに、ロトは腕を振り上げ、抵抗する。

「“力”も全く使ってないの?」そう、言ったのはタクトだった。

「〈思念波〉だったら、直接、キミ達の心に送る。何者かが、嵌めたのだ!」

「そんなに、ポンポンと、感情を剥き出しにするな。どっちにしろ、ロト独りで突破できる事態じゃないっ!」

 バースは怒りを膨らませ、ロトにそう、叫ぶ。


「俺は、これ以上大切なモノを失いたくない!」

「キミは、バースさんの気持ちが判らないの?」

 タクトの言葉に、ロトの眼差しがふわり、と、柔らかさを含ませる。

「タクト、キミは不思議だ。例えるなら〈灯〉だな?」

「僕の憶測だけど、キミを大切にする人が、居る。メッセージは、その人からだと思う」

「俺を?」

「助けてほしいと、ね。それに、時が繋がっているなら、何処かでその人に会えるかもしれないよ」

 タクトは笑みを湛え、右の掌をロトに差し出す。


「同盟を結ぶ。いいのか?タクト」

「僕はキミの此まで歩んだ物語を見たい。その時、置き去りにして、伝えそびれた気持ちも、今度こそ、と、勇気を振り絞ってね!」

 互いの掌は強く握りしめられ、解されると一度拳を合わせ、その腕を絡ませていく。


「親睦会は、おしまいっ!ロト。あの、お姉さん達がさっきから殺気をブンブン振り撒いているぞ?」

「バース、掛け合わせて言ったつもりだろうが、気を抜けば、殺られてしまうぞ!」

 ロトはバースが示す方向を見つめながら言う。

「腕前はどうなのだ?」と、アルマは身を構えて訊く。

「間違いなく、長けている。特に、バース達で言うならば“力”は右に出るものがいない程だ」


 ブラッド一族の女戦士。その名もカラバッジオ。そして、その側にいるのは、ラガン三姉妹。と、ロトは付け加える。

「私の名を知っているとは、貴様は何者だ?」

 その言葉にロトは、形相を怪訝にさせ、バース達の前方に駆け寄って、左腕を平行に伸ばしていく。

「俺は、記憶していた。あの頃、おまえ達と対峙して、その先も刷り込ませていたっ!」


 しゃらり、しゃらりと、カラバッジオは武装させ、尚且つその装飾品を鳴らす音を奏でながら、ゆっくりと、ロトの元へと歩み寄る。

「よく、見れば、まだ子供ではないか?命を無駄に散らすつもりならば、踏みとどまる為の時間を与えよう」

 その言葉と同時に、ロトの身体より“光”が輝く。

「断るっ!断固して、おまえ達が踏み込もうとする、時と世界を守ってやるっ!」


 ──やいっ!カッパ。ロトを踏み倒す前に、俺と腕試ししろっ!


「バースさん、そんな、呼び方失礼ですよ!」

「止めるな、タクト。何だか知らないけど、アルマとどっこいの……」


 ──その続きを言うならば、私そのものと、この胸。どっちを失いたい?


 ──どっちも、イヤーッ!


 バースに足蹴りするアルマ。その様子をロトは呆然として、見つめ、タクトに、こう、訊く。

「〈カッパ〉とは、どんな意味だ?」

「空想の生き物。人間に恐れられる魔物モンスターの名前……と、ロトくんは知らないの?」

「念の為に、だ。耳に入れた〈本人〉がどう、反応をするだろうかだよ」

 溜息を含ませるロトとタクト。


 カラバッジオの形相、地獄より這い出る魔王の如く、険しくさせ、バースに向けて“力”の弾を連続で放出していた。

あーあ、バースのお馬鹿め……。

ロトくん、ごめんよ。

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