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転生を希望します!  作者: 黛ちまた
イリダ編

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隠せぬ表情と隠し通す秘密

言綏視点です

某の姿を見るなり、若君は身体を強張らせた。


「お帰りなさいませ」


「……帰っておったのか」


「えぇ、先頃。散歩は楽しゅう御座りましたか?」


杯に水を入れて置くと、若君は律儀に座った。

某が先に戻っていると思わず、動揺なされた様子。


「う……む。酔い醒ましに散歩をな」


「左様に御座りますか。それで、お会い出来たお相手は大物でありましょうな?」


若君の顔がひきつる。


「あれだけの大言壮語を父君の前で仰せになられましたに、何も釣り上げておらぬ訳では御座りますまい?

正しくは釣り上げられた、でありましょうなぁ。

……それで、オメテオトル殿とのご対面は如何いかがに御座りました?」


杯の中の水を一度に飲み干すと、某を睨まれる。


「一体何処まで知っているのだっ」


「鎌をかけてみたのですが、当たった様子」


笑って見せると、鯉のように口をぱくぱくとさせ、信じられぬものを見るような表情をなさる。本当ほんに、素直な方である。

公方にお成り遊ばしてからは御簾越しになるとは言え、もう少し感情をお隠しいただかねばなるまいなぁ。


「未来の燕国公方がそのような顔、情けのぅ御座りますよ」


正面に腰掛け、話すよう促す。

口を真一文字に結び、何やら思案してらっしゃったが、意を決したのか、顔を上げて某を見据えた。


「……そなたの言うように、オメテオトル殿と会った。その上で、助力を約束した」


ショロトル殿と面会したと。それは上々。

されど、簡単には約束などしない二条様が、助力の約束。それはまためずらかな事。


「オメテオトル殿の秘密でも、お知りになりましたか?」


目を大きく見開かれた反応からして、当たりのようだ。


「そなたも──……いや、何でもない」


深めの息を吐かれるその様子に、若君にとっては想像の範疇を遥かに超える事が起きたのだと分かる。

隠し事と演技が下手だとしても、それなりの経験と知識を有される若君が、斯様かように動揺なさる程の秘密。


正直に興味はあるが、知った事で筋がぶれるのも詰まらぬ。知らぬ方が良い事はそれなりに有るもの。


「オメテオトル殿は、そなたにも話して良いと仰せであった。……だが、言わぬ。あれは、易々と教えて良いものでは無い。少なくとも、私にとっては衝撃的だったのだ。

とてもではないが、言えぬ」


自分を謀るかも知れぬ相手にも、誠実であろうとする。

この真っ直ぐなご気性は、一体どなたに似たのやら。


「若君がお知りになられたオメテオトル殿の秘密に御座りまするが、それを知らずば我らの目的が達成されぬのであれば、何としてもお話しいただきまするが、そうでないのであれば尋ねませぬ」


うむ、と答えると若君は深く頷いた。


「オメテオトル殿は、私に近付くホルヘ殿とアドリアナ殿に関心がある」


「筆頭研究員のお二人に御座りますな」


「そうだ」


オメテオトル殿があの二人に会いたい理由は何無なんとのう分かる。筆頭研究員が若君に近付いたは、オメテオトルと繋がる為か。否、若君がオメテオトルと繋がったは二人の行動後の事である。五条様と九条様の事を知り得てこちらに接近を図ったとするなら、魔石を見せつけた某に近付こうと言うもの。二人の狙いは魔石にあらず。


マグダレナに関心があるような発言もしていたようであるが……その先は?


「ホルヘ殿とアドリアナ殿は筆頭研究員と言うだけあって、常に人の中心なのだそうだ。慕う者も多いらしい」


人の中心……王直轄の研究施設で、誰もが功を競っている環境下。輪の中心にいて、慕う者まで?


「若君、お二人はマグダレナの事に強い関心を抱いておいででしたか?」


「魔石には関心があるようであったが、然程ではなかったな。それよりは燕国の文明や、気候について質問されたように思う。寿命や病気についても聞かれたな」


イリダの文明は発達しているが、それは全ての分野では無い。動力源となる自然を如何いかに守り、速やかに育成するか、少ない動力で動く機械などの作成にその頭脳は注力されている筈である。

にも関わらず、分野外の気候や寿命、病気に感心を抱く……。


「成る程」


「何に納得しておる?」


「ホルヘ殿とアドリアナ殿は、燕国への亡命を希望なさっているのでしょう。それも、それなりの人数を伴って」


「亡命?!」


「左様。若君、皇国に行かれる際、皇都の気候や生活の水準など、気になりませなんだか?」


「……気になった」


「某はお二人に会っておりませぬから、推測の域を出ませぬが……やたら料理を振る舞われるのが不思議に御座りましたが、そう言った意味もあったので御座りましょうなぁ」


こちらの料理を出し、我らの口に合うかを確かめていたのだろう。ひいては自分達が燕国の食文化に耐え得るかを。


「それならば、オメテオトル殿の望みを、お二人は協力してくれるやも知れんな」


「それは如何いかがでしょうなぁ」


何故かと問われたので、思い付いた事を答える。


「亡命して祖国を捨てたいので御座りますよ。お二方は下級国民の最上位に位置するにも関わらず。もしそうであるなら、オメテオトル殿は憎い存在かも知れませぬ。それを、手伝うとはあまり思えませなんだ」


若君の表情が曇る。


「……オメテオトル殿の願いを叶えるのに、お二人の協力は必須なのだ」


そう言って黙り込む。


「まずはお二人が何を望んでらっしゃるのかを確認なさってから凹まれませ」


始まる前から凹まれるなど面倒至極。

落ち込むのかと観察するも、若君はそれ以上は何も言わなんだが、凹んだようでもなく。


「……確認せねばならぬ」


「……左様に御座りますな」


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