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転生を希望します!  作者: 黛ちまた
イリダ編

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300/360

033.最愛

300話です…!

ここまで続けられたのは、読んで下さる皆さまのおかげです。

本当にありがとうございます!


ニヤニヤした顔のセラに、顔が熱くなる。


「お慰めしたんでしょ?」


お慰め……!!

違うんですよ、私はルシアンがお義父様の言葉で傷付いてるんじゃないかと思って、それを癒そうとしたんであってだね……!


「ルシアンが甘過ぎますっ!」


セラと銀さんは横並びに腰掛けて、緑茶を飲んでいる。


「あら、浮気者だったり、放っておかれる方が良いの?」


そ、それは嫌だ…っ!


「じゃあ、良いじゃないの。甘やかされて愛されて溶けてれば良いと思うわよー?」


うんうん、と銀さんも頷く。オリヴィエとアウローラまで頷いてる。


えぇーーっ?!

いや、それはおかしいでしょ?今、世の中的には結構緊迫した状況が差し迫ってるんだよ?

そんな中ルシアンに溺愛されてろって、それってちょっとどうなの?しかも、最後溶けてなかった?

私に出来る事なんて、確かに無いけど!


「殿下、焦る気持ちは分かりますが、人には役割と言うものがあります。殿下は他の者が出来ぬ事が可能なのです。それ以外の事はリオン殿やルシアン様にお任せして、ルシアン様との間に御子を成されませ」


銀さん!フォローになってない!

そしていつもどストレート過ぎて、ミチルのデッドボール痕が増えてますよ?!


「ニヒトはイリダの事は心配ではないのですか?」


「懸念事項はございますが、やれる事、すべき事は既に手を打ってあります」


しまった!銀さんもチートキャラだったのか!ヤバイ!普通レベルなの私だけだ!


つい、ため息がこぼれてしまう。


「殿下?」


でも、彼らはチートな能力に胡座をかく人達じゃないんだよね。今こうして彼らが優秀なのは、努力も欠かさないで来たから。


セラは私の執事に戻る為にかなり身体に負担をかけたと聞いている。そうまでして戻って来てくれたセラを、ただチートだからのひと言では済ませたくない。

銀さんだって、若かりし頃にラルナダルト家を潰されるような事があったから、色々学び、アドルガッサーで名実ともに実力者となった訳で。


オリヴィエだって、夢を実現させる為に、公爵令嬢なのに騎士になったんだよね。きっと反対されただろうに。エヴァンズ公だからあんまり反対してないかもだけど。

アウローラも、祖父の望みを叶える為に騎士の道に進み、祖母を探そうとしていたのだ。

ルシアンは私と結婚する為に宰相の道を目指した訳で…。


……私、何か努力したかな?!

自発的に何かを目指した事、何にも無い気がする…!


「どうしたの、ミチルちゃん?」


「……私……駄目な人間ですわ……」


セラは眉間に皺を寄せ、ため息を吐いた。


「何でそこに至ったんだか、もうちょっと詳しく話してちょうだい」


皆のように優れた能力もなければ、目標もなく、努力もしていない、と説明した瞬間、デコピンされた。


「いたっ!セラ、今の本気でしたね?!」


「もう一度食らいたいのかしら?」


ひっ!

慌てておでこを隠す。


「結構ですっ」


まったく、と、まだ眉間に皺を寄せたまま言うと、セラは部屋を出て行った。

銀さんは引き続き緑茶を啜ってる。


「今のは殿下が悪いですな」


えっ?!私、そんなに変な事言ったかな?!


…おでこ痛い…。


少ししてルシアンが部屋にやって来た。銀さん達は部屋から出て行ってしまった。アウローラは苦笑しながら会釈して部屋を出た。


ルシアンは困った顔をして横に座ると、デコピンされて赤くなった場所を撫でてくれた。


「珍しいですね、ミチルがセラを怒らせるなんて」


何であんなに怒ったのかも分かってないです……。


「そんなに、怒らせるような事を言ってしまったのでしょうか……」


「分からない?」


「……分からないです……」


って事は、ルシアンは分かってるって事なのか…。


ルシアンが私に向かって両手を広げる。


「おいで」


ぅあっ!今のきゅんってした!


そろそろと動いてルシアンのお膝の上に座ると、ルシアンは嬉しそうに微笑んだ。


「この前私が話した、ミチルの良くない所」


私の良くない所?

身体に力が入る。


「ミチルは自己評価が低すぎる」


いやいやいや、私は別に自己評価は低くないよ?何故か皆が私を過大評価するだけで!


「こんなに美しくて、思慮深く、慈悲深くて、忍耐強いのにね?」


ルシアンの言うそのミチルは、私ですか…?

別のミチルじゃ…?


首を傾げた私に、ルシアンは笑う。


「セラは、ミチルが優れているから仕えたいと思ったのではないんだと思いますよ。

この人の側にいたいと言う気持ちは、理屈じゃない。

それなのに、その肝心の相手の自己評価が低い」


う……っ!

ぐさりと胸に突き刺さる言葉。


「貴女に仕えたいと言う思いを否定された気持ちになったんでしょうね」


ベネフィスの元でわざわざ修行してまで私の元に戻りたいと思ってくれていたのに。

そんなつもり全然なかった。褒めたつもりだったけど、そんな上っ面な話じゃなかったんだ。


「セラから直接言葉を聞いた訳ではないですが、大凡そんな所でしょう。伝わりましたか?」


問いかけに頷く。


「はい。とても、失礼な事を言ってしまいました…」


髪を撫でられる。

パパンに撫でられている気持ちダヨ…。


「ミチルのその謙虚さは美点でもありますが、謙虚過ぎるのは美点ではありません。卑屈に取られます」


卑屈になったつもりはなくて、本当にそうなんだけど…。相手がそう思ってないと、こんな謎の不一致が発生するのか…。


「そうそう、ミチルの欠点のもう一つは、思っている事を言葉にしない事です」


ぎゃ!

セラにも言われた奴!


指で唇を摘まれる。


「まぁ、それを暴くのも楽しいんですが」


そう言って笑うルシアン。


暴く?!暴くって言った?!


「さっき言ったのはミチルの美点ですが、美点故に貴女を愛した訳ではないんです。貴女を好きだと思った時には、あれもこれも好きになっていた。好きじゃない部分を探す方が早いぐらいに」


ぶわっと顔が熱くなるのが分かった。

私の反応を見て、ルシアンが満足気に目を細める。

おでこにキスされる。


「愛してますよ、ミチル」


頰にキスが落ちてくる。

胸が疼いて、ふわふわする。

うううううう…っ。


しあわせ過ぎて死にそうです…。


「今、何を思ったの?」


えっ?!


「言わないと悪戯しますよ?」


悪戯?!なにそれ、怖いんですけど?!


顔を逸らしたら顔を両手で掴まれて戻されてしまった。視線を逸らしたら、顔が近付いてきた。

これは、絶対に逃げられない感じ…!


「……しあわせで、死んでしまいそうだと……」


ルシアンは困ったような顔をした。


「煽りますね」


煽ってないから!

慌てて首を横に振る。

言えって言われたから言っただけだし!


「ミチルは無自覚な人たらしですね」


そんな特殊スキル持った覚えないよ?!


「あの気難しいゼファス様を手玉に取ってるでしょう」


ねぇねぇ、気難しさ最難関って言われてるの君だよ?君こそ無自覚なの?

それに手玉って…!なんかちょっと悪い印象ですけど?


「よく、分かりません。皆さん、私に良くして下さるではありませんか。その気持ちに普通に応えているだけで、そんなふうにおっしゃられるなんて……」


貴族だから、嫌味の応酬なんてものも普通にある訳で。

そう言ったものは、確かに言われれば不愉快だけど、耐えられない程の事を言われ続けた事はない。

私にそんな事言ってきた人、そんなに多くないし。


「そもそも、ミチルは家族から辛辣な言葉を長年言われていたから、その他の貴族からの婉曲した嫌味も効かないのでしょうが…」


あー、それはあるかも。

モラハラに慣れ過ぎて鈍感化してるって言うか。…これはこれでどうなんだ…。


そう言えば、うちの両親とか兄とか姉って、今どうしてるんだろう?

これまではあんまり気にしてなかったけど、父や兄、姉なんかは私と同じ血を引いてる訳で、あのヒトタチの歌も祈りになるのかな?


「両親や兄や姉は、今どうしているのかご存知ですか?」


瞬間的にルシアンの微笑みに黒いものが混じる。

……あっ、コレ、あかん奴。


「…気になる?」


アサシンファミリーに安否確認とか、愚問だった!


「……あの、私と同様に、歌ったなら魔力を生み出せるのかと思ったのです」


笑顔が怖いよー。


ルシアンは二度頷いた。


「そんな活用法もありますね」


活用法て!

そ、そう言えば私ってば皇族になるんでしょ?あのヒトタチもそうなるんだと思うんだけど…。

……ゼファス様のオニーサマ、魔王様に……ゲフンゴフン。


「ミチルを傷付けた彼らを、皇族だからと言う理由で私が許すと思いますか?」


アレクシア様の事も罰しようとしてたな、この人…。

容赦ない。本当に容赦ないよ…。


「私の思いはさて置いて」


いや、そこが決定権のほとんどを占めてる気がするんだけど……。


「彼らは皇族として認定されないでしょうね。他の公家が許す筈がない」


そうだった!他にも怖いヒトタチいた!

愚物の結晶みたいな父と兄と姉は、鑑賞物としては素晴らしいと思うんだけど、内面が残念なんだよね。

曽祖父母の被害者と言うか、何というか。


「……確かに、そうですわね」


「父がこの事に気付いてない筈がありませんから、既に対応されているか、不要か、不可能か」


不穏な言葉が…!

不要は分かるとして、不可能て……!

駄目だ、これ以上はお触り禁止。


「……ルシアン」


「なぁに?」


鼻の頭にキスされる。


「あの、私に出来る事があったら、おっしゃって下さい」


役立たずでごめんなさいと言いたい所だけど、それを言ったら怒られるのは目に見えてる。

だから、出来る事があったら言って欲しい。


「ありがとう、ミチル。

その時までは私に愛されるとか、私を愛して下さると言うのはいかがですか?」


また、そうやって。

それじゃセラの言う、甘やかされて愛されて溶かされる、って奴じゃないですか。

なんて破廉恥なんだ!……それに何て甘い響きなんだろうか。


ルシアンが私を見て目を細める。


「ミチルが見せてくれるその目、とても好きですよ。貴女が私を求めている時に見せてくれる目」


この破廉恥イケメンめ…!

顔から火が出そうだよ……!


「甘やかして蕩けた貴女を見ると、私のモノにしていると言う実感が湧きます」


ふふ、と笑ったルシアンは、目眩がする程に色っぽくて。

頰に触れる唇の甘さに、心がぐずぐずに溶けてしまいそうだ。


ルシアンに触れられる事や抱き締められるのは凄い気持ち良いんですよ。温かくて、包まれた安心感があって、ルシアンの香りがして、優しく撫でられると胸がうずうずしてくる。

金色の瞳に見つめられて、自分が映っていて、私の名前を呼ばれると、頭の奥が痺れるようになる。

もう、嬉しくて幸せで、好きって気持ちが身体の中から膨れ上がって来る。

好きって言わないと酸欠になってしまいそうなぐらい。

触れたい、触れたい、って衝動が湧き上がって、我慢出来なくなって、抱き付く。

好きで好きで好きで。もう、本当に全部好きで。


「私はもうずっと前からルシアンの物ですのに、いつもそうおっしゃるのね」


頰に触れた私の手に、ルシアンが手を重ねてくる。


「愛とは水だと教わりました」


水?


「愛する人は花で、花を美しく咲かせ続けられるかは自分次第だと。愛は水であり、水をあげなければ花は枯れてしまって二度と戻らないと」


何ですかその恋愛仙人みたいな人は!


「母上から教わりました」


お義母様凄いな?!


「父上は苦笑してましたが」


子供を通して自分に言ってるな、って分かるもんね。

ははぁ…何でルシアンがこんなにイケメンなのかと思えば、お義母様がそうやって育てたからなんだな。

なるほどね、何だか凄い納得しました。英才教育?


「母上が教えてくれた事が全てミチルの心を満たすものだとは思いませんが、自分の想いを伝える事の大切さは繰り返し言われましたから、理解しています」


容赦ないもんね、ルシアンの言葉攻め…コホン…もとい、愛情表現。


「ミチルには中々伝わらなくて大変でしたが」


うぐ……っ。

いや、だって、こんなイケメンが自分にぐいぐい来るなんて思ってもみなくって、慌てふためいてましたヨ。


「お義母様から色々教わったのですね」


「父上からも教わりました」


魔王様オトーサマから……?なんですか?魅了のかけ方とかですか?いかに罠に嵌めるとかそういう…?


「言葉だけでは足りない、態度でも示し続けないと伝わらないと教わりました」


のぉーーーーーーっ!

ルシアンの破廉恥はオトーサマ仕込みか!!

……色んな意味でサラブレッドって事ですか…。

その結果がこのド級破廉恥イケメンなのか。


「破廉恥でごめんね?」


「……全然悪いと思ってらっしゃらないでしょう?」


ルシアンはふふ、と笑った。


「私自身は何一つ悪いと思っていないけど、ミチルが恥ずかしがるから」


うぅ……。その通りデス。


「貴女は自分が何も出来ないと言うけど、貴女がいないと私は生きていけない。私の為では駄目?」


はぅ……っ!!


おでことおでこをくっ付けてくる。

キスをされる。


「貴女が欲しい。貴女が恋しくて愛しくて、その為なら何でも出来る。貴女さえいれば良いんです、本当に。

貴女を守る為なら、誰にも奪われない為ならどんな事も厭わない」


胸が痛い。心臓を鷲掴みされる。涙が出そう。


「私の最愛」


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