表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生を希望します!  作者: 黛ちまた
イリダ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

268/360

018.初めての帝国と新婚旅行?

いつもよりは短めのです。

えー、現場のミチルさん?そちらはどんな感じですか?

スタジオの皆さんこんにちは、現場のミチルです。

こちらでは、国境を越える為の関門に臨んでおります!

それは、認証に時間がかかっていると言う事でしょうか?


「ミチル、馬車が動き出しますよ」


「あ、はい」


脳内実況中継して遊んでたんだけど、難なく通るらしい。


「随分、スムーズに入れるのですね」


「皇帝からの招待状がありますからね」


おぉ、水戸黄門の印籠みたいなモノがあるのですなー。


「皇帝陛下にお義父様は呼ばれたのですか?」


「招待状を書いてくれるよう頼んだそうですよ」


あぁ、なるほど?

脅したのかな?


国境を越えたら雪国でした、な訳なく。

窓の外を覗いて見る。思ったより緑は多くない。初夏なのに。


「そろそろ迎えが来る筈なんですが…」


馬車の外を眺めるのを止め、ルシアンの方を向く。

腕時計を見ている。うむ。ステキ。


「お迎えですか?」


「えぇ、スタンキナ公が来る予定なんです」


言うが早いか、外が俄かに騒ついた。

窓の外をそっと覗くと、リュドミラの姿があった。


「リュドミラ?!」




国境からかなりの距離を馬車で行った先は、結構大きな街だった。

今私がいるのは、スタンキナ公が治める領地最大の街の、領主の屋敷である。

公が治める土地は広く、街と呼ぶ物がいくつもあるらしい。


サロンに通され、スタンキナ公と対面する。隣にはリュドミラが座っている。相変わらず佳人である。

なんだかこのスタンキナ公、初めてじゃないような気がするんだよなぁ…。

不躾にもじっと見つめていた所、私の視線に気付いたスタンキナ公はソファから腰を浮かすと、膝を付いて頭を下げた。


「?!」


なっ、なして?!


「突然そんな事をしても驚くだけだよ、きちんと説明しなくては」


優雅な手付きでカップを口に運ぶお義父様。

隣に座るルシアンの視線は心なしいつもより冷たい。


え?何?

訳が分からなくて、思わずルシアンの腕に掴まる。

すかさず顳顬こめかみにキスが…って空気読んでっ!

いや、なんかちょっと緊張はほぐれました、えぇ。


「…私は以前、レクンハイマーという名でハウミーニアに潜り込み、ウィルニア教団を興した」


あぁ、そうだった。

言われないと思い出さないとか、うっかり過ぎる。

彼が膝を付いてるのは、私がベンフラッドに誘拐されて、辱めを受けそうになった事に対するものだ。

リュドミラはドレスをぎゅっと握りしめている。父親のやった事を知ってるんだろう。


……コレ、謝られても困る…なぁ……。


スタンキナ公が続きを話そうとしたので、首を横に振った。


「聞きたくないそうだ、スタンキナ。

まぁ、しないよりはマシだが、加害者がすっきりするだけだからね、謝罪なんてものは」


「……その、通りだ」


ブリーチズをぐっと握り締めるスタンキナ公。

アレはベンフラッドが命じたものだったから、スタンキナ公は直接関係なかったとしてもね、やっぱり、はいそうですかとは思えないって言うか…。


「生涯、ミチルが困ったら駆け付けるって事でどうかな」


えー…?


「皇帝よりも優先してね」


いやいや!それは無理でしょう!


「…お義父様…それは…」


「難しい事は言ってないよ。スタンキナは2度、命を助けられていると言っても良い。

ルシアンに始末されずに生かされたし、ここにレーゲンハイム翁がいたら、殺されていると思うよ」


あぁ、銀さんがいたら、間違いないね…アウローラもそうだけど…。


「我が命は陛下に捧げたものではあるが…。返せぬ程の恩を受けたのは事実だ。

私如きがどれだけ役に立てるかは分からないが、約束しよう」


そう言って頭を下げるスタンキナ公を前に、何を言っていいものやら分からなくて、無難な言葉を口にした。


「…う……よろしく…お願いします……」




なんだかスッキリしない気持ちだった。

逃げて来たものが、追い掛けて来て、私の前に立ちはだかって来るような感じだ。

結局、逃げられないって言う事なのかな。


ぼんやりと窓の外を眺めていると、私の名を呼ぶ声と同時に後ろから抱きしめられた。

髪にキスが落とされる。


「大丈夫ですか?」


身体を捩ってルシアンに向き合うと、その胸に顔を埋める。細マッチョなので、胸とか結構逞しいんだよね。

強く抱き締められると、もやもやが少し薄れる。


皇帝に会うって事だけしか考えてなかったなぁ。

考えなくても分かる事だけど、それ以外の人もいる訳で。

自分の馬鹿さ加減に呆れる。とは言え、もう帝都入っちゃったし。これはもう、初志貫徹。目的を達成せねば。


ルシアンの手が髪を撫でる。あったかくて、気持ち良い。

こうやって、いつも私を守ってくれるんだよね。

…あぁ、そうだった。私、ルシアンを守れるようになるんだって決めてたのに。

心がほんの少しの事でグラグラ揺れる。

スタンキナ公の事を全て、現時点で受け止めるのは無理だとしても、少しずつでも、消化していかなくては。

自分の事でいっぱいいっぱいでいたら、ルシアンの事を守れる筈が無い。

ルシアンの背中に手を出して回し、自分も抱き締める。


「ミチル、そろそろ祈りの時間ではないですか?」


「あ、そうでした」


とは言え、勝手に教会に行くのもどうなのかな、と悩んでいた所、「一緒に教会に行きましょう。街並みの見学も兼ねて」と誘われた。


念の為お義父様に教会に行きたいのだと確認を取ったら、是非そうしてあげて欲しい、と、珍しく少し困った顔で言われた。


銀さんとアウローラ、オリヴィエ、アビスを連れて教会にやって来た。

この街、道の脇に雑草すら生えてないんだよね。キレイな街並みだから、そう言った所も行き届いているんだろうか?

雑草につく花も、わんさかしてなければ結構キレイだと思うんだけどな。


教会の中に入ると、何人かが祈りを捧げていた。

人がいるし、ちょっとなぁ、と思っていたら、銀さんが司教に話を付けに行ってくれた。

あ、もしかして人見知りで恥ずかしがりな私の為に人払いをー…。


「殿下、歌う許可を取りましたぞ」


そっちか!

いや、そっちも大事だけどさ。


ルシアンが私の背中を撫でる。

えぇー、そうじゃないよ、ルシアン。私は恥ずかしいんだってば。


「大丈夫。ミチルの歌はとても上手ですよ」


しばらく恥ずかしいから嫌なんだと訴えてみたものの、全員に大丈夫、大丈夫と言われてしまって、気が付いたら女神像の前に立たされていた。女神像は胸に赤い宝石が嵌め込まれていた。増幅させて反響させる奴だね。


「殿下、感謝の歌を」


観念した私は頷いて、もうすっかり覚えた歌う前の、女神の祈りの言葉を口にした。


歌い出しは何もなく、遅れて私の歌を女神像が復唱し、声が教会の中で反響していく。


毎日歌っていて、少しずつ気付いた事がある。

大気中に、キラキラした白い粒が見えるようになった。

私が歌うと、粒は揺れて私の中に入ってくるのだ。そして身体の中をぐるりぐるりと回り、歌と一緒に出て行く。金色の筋に形を変えて。

最初は靄みたいだったのに、今ではハッキリ見える。

銀さんが、それは魔素と呼ばれるものです、と教えてくれた。

錬成術は出来ないけど、歌うと錬成術と同じ事が私は出来るらしい。

あれから魔力酔いは起きてない。また寝込んだらどうしようかと内心ドキドキしていたから、安心。


「殿下、慈悲の歌を」


歌によって、何て言うのか効果が違っていて、感謝の歌は魔力が喜んでいるみたいに、踊ってるみたいに動いて、空にではなく、大地に向かって吸い込まれていく。

慈悲の歌は、女神への許しを乞うからか、空に向かっていくんだよね。


歌い終えて目を開けると、司教が膝を付いて私に向かって祈りのポーズを取ってた。


「?!」


見回すと、教会に祈りに来ていた人達も同じ格好をしていた。


ちょっ?!なんで?!


軽くパニックになっている私を、ルシアンが抱き上げた。


「騒ぎになる前に逃げましょう」


背後から呼び止めようとする声が聞こえるのを無視して、馬車に乗り込む。


いつもは銀さんとかアウローラやオリヴィエ、アビスぐらいしか側にいないから、あんな風に祈られ?てびっくりした。

歌い終えて、なんだかスッキリしてる事に気付く。

アレですかね、歌ってストレス発散的な奴ですかね。


「歌ったら、気持ちがいくらか晴れました」


「それは良かった」


「こうして普通にしている時には見えないのですけれど、歌い始めると、魔素が見えるようになったのですよ。

ルシアンにも見せてあげたいです。白く光った粒で、歌うと嬉しそうに揺れるのです」


顳顬こめかみにルシアンのキスが落ちてくる。


「それは、さぞかし美しい光景なのでしょうね」


「そうなのです」


笑顔を向けると、ルシアンも笑顔になって、嬉しくなる。


「沢山歌っておなかが空いたでしょう?おやつが用意されている筈ですから、食べましょうね」


おやつ!

腹式呼吸とか言う奴なのか、歌うとお腹が凄く空くので、おやつ嬉しい。

ルシアンがニコニコしている。


「……自分で食べますよ?」


「そう言わず」


「自分で食べれます」


「知ってます。私がミチルに食べさせたいんです。可愛い妻がお腹を空かせて動けなくなっているのですから、夫がおやつを食べさせるのは普通ですよ」


「動けますよ?!」


またそうやって!


「新婚旅行ですから」


「?!」


いつからそうなった?!

って言うか君、帝国来るの嫌がってなかった?!


「せっかくです。ミチルを存分に堪能しようと思って」


首を傾げるようにして、艶やかに微笑むルシアンに、口をパクパクさせてしまう。


「ですから、ミチルも私を味わい尽くして下さいね?」


味わうって、何よ?!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ