表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生を希望します!  作者: 黛ちまた
イリダ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

267/360

017.アルト家あるある

お義父様とは別の馬車で帝国に向かう事になった。

前回帝国に行った時、ルシアンとお義父様は同乗してたらしいんだけど、ルシアンが先に帰っちゃって馬車が足りなくなったんだって。だから別らしい…。


帝国に向かうのはお義父様とベネフィス、ルシアンと私とフィオニア、ロイエ、アビス、エマ、クロエ、銀さん、アウローラとオリヴィエ。

何か勢揃いじゃない?何でかな?

4人乗り馬車4台の大所帯です。


カーライルの王都を取り囲む城壁を超え、窓の外に広がる光景に思わず声を上げた。

一面の花畑が広がっていたからだ。

春も終わろうとしてるのに、こんなに咲いてるなんて凄い!


「ルシアン、見て下さい、凄いです、一面の花畑ですよ!」


今年は天候も安定していたからかなー。

この分ならアレクサンドリアも豊作間違いなしなのではー?


「…本当ですね、初夏の花が咲き乱れていますね」


ルシアンってこう見えて花言葉とか詳しいんだよね。

貴族令息の嗜みと言う奴ですYO!


カーライルは帝国領と隣接している為、一日馬車を走らせれば何処ぞの貴族の領地を2つ程超えて帝国に入る。

さすがに夜になってしまうから、国境手前のカーライル領の街で一泊する。


旅行と言えば、景色も良いけど、ご当地料理だよね!

国境手前の街は中心地に川が通っている。きちんと整備された川なので、氾濫の恐れはないらしい。


ショボくても一応私は皇族だったりするので、領主の館に招かれて、ただいま晩餐中。


ながーいテーブルの先に座るお義父様。その横にルシアンと私。反対側には、顔色の悪い男性──クリームヒルト伯爵が座っている。伯爵は銀髪に赤い目をしている。

んー…?何か誰かと同じ色素のような…。


「デューがここにいるなんて珍しい事だと、領民が驚いたのではないかな?」


「……私の顔など見忘れているでしょう」


無表情に言うクリームヒルト伯。


「アビスも今日ぐらいは父に並んで会食に参加すれば良いものを」


お義父様はそう言って私の後ろに立つアビスを見た。


…うむ、アビスは、クリームヒルト伯爵家のご子息だったらしい。久々に来ましたね、アルト家あるある。

クリームヒルト伯爵は領地経営に忙しい、と言って王都にもあまり姿を現さない人で、幻伯爵と呼ばれている。

多分、実態はそうじゃないんだろうナ……。


「私はご主人様の執事としてこの場におりますので」


つまりアレですか、この会食は魔王様と参謀のお食事会って奴ですかね。


「どうしたんだい?ミチル。

メニューが気に入らないかい?ミチルの好きなご当地素材を使用した和食にしてもらったんだけど」


ゴ配慮アリガトウゴザイマスッ!

って言うか、ご当地って言葉よく知ってたね?!


「いえ、とても美味しいですわ、お義父様……」


アルト家怖い……。一体どれだけの貴族を配下に置いてるんだ……。


「食後のお茶に誘っても、どうせ直ぐにルシアンがミチルを部屋に閉じ込める事は分かっているから、先にきちんと紹介しておこうか。大体察しているとは思うけど。

彼はデュー・クリームヒルト伯爵。アビスの父親だね。アルト一門の一つを任せている」


お義父様が紹介すると、クリームヒルト伯爵は立ち上がり、丁寧にお辞儀をした。

あ、ご丁寧にどうも。食事中に本当スミマセン。


「初めてお目にかかります、ミチル様。愚息はお役に立っておりますでしょうか」


「いつもよくしていただいておりますわ」


いや、本当に。


「それならば良いのですが。何か粗相がございましたら、気にせず罰をお与えになって下さい」


罰?!

むしろ私の方が粗相しまくりですけど?!

やっぱり、ご主人様ってそう言う意味なの?!


「その必要はないと思いますが、心に留め置きますわ」


「座りなさい、デュー」


クリームヒルト伯爵はようやく着席してくれた。


なんとなく居心地が悪いなー。


「ミチル、あーん」


空気読もうよ?!


気にせず私の口に新じゃがの甘辛煮を入れてくるルシアン。猛者だ。


「むぐ」


「美味しい?」


口の中がじゃがいもでいっぱいな為、そのまま頷く。


クリームヒルト伯がいくらお義父様の部下だからって、こんな目の前で食べさせなくてもっ!


「あぁ、そうそう。ミチルは気付いてないだろうけど、デューは実はいつも私の側にいるんだよ。だからルシアンのミチルへの求愛給餌行動は既に目にしているからね、気にしないで良いよ」


はっ?!

なにそれ、忍びみたいな感じ?!


クリームヒルト伯を見ると、無表情のまま頷いていた。


「アビスはルシアン付きなんだよ、本来はね。

でもホラ、この通りルシアンは無駄に暗殺向きだから」


暗殺向きって言った……!

しかも無駄って……!


「うっかり隙だらけのミチルに付ける事にしたんだよ」


「…ご配慮感謝します…」


うっかり隙だらけ……どうしよう否定出来ない。


「今日はアルト家の話をしようか。

どうせルシアンと来たら、そう言った事もロクに説明せず、ミチルの事を口説いてるだけなんだろうから」


いやっ、そんな事は…あるかな?!


「アルト家もね、他の家同様に長子を後継者として育てるんだよ。次子以降は長子を補助するように育てられる。

だから、ルシアンは、ラトリアとは違う教育が施されている。本来、この立場が覆される事はないんだけどね。

アルト一門を支えるサーシス家、ルフト家、クリームヒルト家の次期当主が認めた者だけがアルト家を継げる。

サーシス家の嫡子だったセラフィナは嫡子としての立場を放棄し、弟のフィオニアが嫡子となり、ラトリアを拒否した。

ルフト家はラトリアでもルシアンでも良いと言ったが、レシャンテがルシアンを"若様"と呼んでいるのが全てだ。

クリームヒルト家はどちらでも良いと本当に思っていたようだけどね」


初めて会った時にラトリア様は言っていた。自分は選ばれなかった、って。


「ラトリアは謀が嫌いだからね。アルトの当主をするのは厳しかったろう。レンブラントで領民と共に生きる方がアレの気質にはあっている。

ルシアンが自ら嫡子になりたいと言ってくれた時には、本当助かったよ」


ふふふ、と笑いながら赤ワインを口にするお義父様。

美味しそうに飲んでるなー。いいなー。家族の前でもお酒を飲んでは駄目と言われてるので、フレッシュジュースですが何か?


ルシアンを見る。

にっこりと微笑まれた。


「これでも私は、出来ない事はこの世に存在しないとまで言われていたんだけれどね。

人生初の挫折はルシアンの育児だよ。

そのルシアンをここまで変えるんだから、ミチルは凄いよね」


ルシアンをちらりと見る。

我関せずと言った顔で、白ワインを飲んでいる。


私が凄いって言うより、ルシアンが凄いだけなんじゃないの?

お義父様の子供なんだから優秀なんだし。


「アルト家と縁続きになる事を希望する家は少なくない。最初はミチルもそうなのかと思ったのだけどね。

王太子も、騎士団長の令息までミチルに夢中ときてる」


ルシアンから冷気が漏れ始めてきたー…。

お義父様、その辺にはこれ以上触れないでー…。


「私はある目的の為に準備をしていてね。

その実現には様々なものを要した。"アンク"、"天秤"、"杖"。後は皇室と公家の血筋」


突然真面目な話に突入したぞ?!


「調査の結果、ミチルがラルナダルトの血を引いていると分かっても、それをどうこうするつもりはなかった。

それよりも、魔道研究員として、院長が持つ"天秤"を手に入れて欲しいと思っていたんだよ。

ご存知の通り、"アンク"は私も持っているからね」


私を魔道研究院に入れたのは、そんな目的が…。

って言うか、"天秤"って何なの?


「"天秤"をミチルが手に入れられる可能性は高かった。

魔力の器の位置を突き止めた。これまで、誰も発見し得なかった事だ。植物から魔石を採取する方法まで見つけてしまうしね。

本当なら、亜族を何とかする方法を見つけ出してもらって、院長の地位に躍り出てもらおうと思っていたんだけど、不要だったね」


皇宮図書館に出入りしていたお義父様は、亜族が何なのか、亜族を治癒する方法も知っていたと言う事なのだ。


「"天秤"は、院長からミチルに貸してもらうよう話をつけてあるよ。彼はミチルに恩義を感じているからね」


え?私が受け取るの?


「最後の"杖"はね、帝国の皇帝が国を分裂させた際に強奪していったんだよ」


もしかして、今回の旅行って、その"杖"を取りに行く為?


「ミチルのお願いを聞いて皇帝兄弟の仲を取り持ったら、長年探していた"杖"をくれるって言うんだよ。

人助けはするものだね」


ぅわぁ、うさんくさー!

お義父様が人助けとか、ちゃんちゃら可笑しいっスわ。

絶対打算が混じってる!


「その三つを揃えたら何があるのかは、また今度にしようか」


気が付けば料理はデザートまで終わり、お義父様のグラスのワインもなくなっていた。


今日のひと言。

やっぱりこの人、魔王だった。




当主のデュー、長男(ラトリア様に付いてるんだって)、アビスが終始不在な為、クリームヒルト邸には、デューの奥さんとアビスのお姉さんしかいないのだそうだ。

ちなみに今日はお義父様からの指示で二人はアルト邸に行ってるらしい。

アビスのお姉さんって事は、氷の女王みたいな感じなんだろうか?わくわく。


ルシアンがワインを持って部屋に戻って来た。

わっ!今日は飲んで良いらしい!

やったー!

たまには飲みたいのです!成人してますしね!


わくわくしながらカウチでお行儀良く座して待つ。

そんな私を見て、ふふ、とルシアンは笑った。


「そんなに嬉しい?」


「はい」


白ワインがグラスに注がれて行くのをじっと見る。

少しとろみがあるのだろうか。


「どうぞ」


「ありがとう、ルシアン」


お酒は美味しく飲めるけど、何しろ弱いから、グラスに注がれたのは少しだけ。

大丈夫そうだったら継ぎ足してもらおうっと。


ひと口飲む。

んー、甘い。思った通りとろみのある味です。

これは美味しい。


「美味しい?」


頷く私の顳顬こめかみにキスが落ちて来る。

ワインよりも甘いルシアンですよ。

お義父様に揶揄われるだけの事はありますね。


「明日には帝国に入りますね」


憂鬱です、とルシアンは言う。


私の事もあるし、皇帝に会いたくないとか、もしかしたらそれ以外にも色々あるのやも。


それにしてもこの白ワイン美味しい。


「苺とも相性が良いですよ」


口に運ばれてきた苺を食べる。

んー、甘酸っぱくて瑞々しくて美味しいー!


「ミチル、ちょっとこの苺を口で挟んで下さい」


苺を口で挟む?


口元に運ばれて来た苺を、言われた通りに口で挟む。

これをどうしろと?

はて?


まさか!


反応が遅れて、ルシアンが私の口元の苺を齧った。齧ったって言うか、根元から噛んだと言うか。

つまりキスをされました!!


「とても美味しかったです」と、良い笑顔で言われた。


「普通にキスして下さいませっ」


こう言うの、ルシアンは一体何処で覚えてくるんだ。

まったく…。

恥ずかしいよ……恥ずかしいよ!(大事なので二度言う)


心の中でブツブツ文句言いながら、口の中に入った苺を食べる。


「苺はクリームヒルト領で採れたものですか?」


「取り寄せたのだと思いますよ」


わざわざ!何と言うお心遣い。


「クリームヒルト領は川が多く流れる土地ですから、川魚などが特産品ですよ」


へーっ、川魚!

鮎とか!って、それは日本か。


「お屋敷の横を流れる水もキレイでしたね」


「えぇ、飲み水としてそのまま利用出来るぐらいに綺麗な水なんです」


「ワサビとか育てられそうですね」


「ミチルの言うワサビとは、燕国の山葵の事ですか?」


わさび醤油をのっけたステーキとか美味しいよね。

そう言えばこっちでは濃い目のソースだな。


「そうです」


「あれは鮮度が重要ですから、滅多に口に出来ない高級な素材です。普通に出回っているのは鮮度の落ちたものなんです」


キレイな水を要するぐらいなんだし、鮮度は重要そうだなぁ。


「そうなのですね。ワサビ醤油をかけたステーキ、食べたかったです」


「もしやミチルは、山葵の育て方を知っているのですか?」


「いえ、存じ上げませんが…あちらで、山の斜面に水田のようなものが作ってあって、そこで山葵が育てられているのを見た事があります」


ルシアンは何か思案しているようだった。

何だろう。山葵で何か思いついたのだろうか?

私が思い付くのは、山葵を付けて食べると美味しい料理だけなんだけどね。

刺身とか、鶏のささみとか、


「苺も水耕栽培が可能なようです。品種改良が必要かも知れませんし、温室も必要だと思いますけれど」


え?下心が見える?

バレましたか。ふふふー。

美味しい山葵、甘い苺が食べたいのです、わたくし!


「それは是非、研究させましょう」


やったー!!

ワサビ醤油ー!甘い苺ー!!

わーい!!


「上手くいったら、ミチルからご褒美をいただこうと思います」


……え?

もらうって、ルシアンが決めるの?


「後で指示しておきますね」


「え、あの…?」


ふふ、と笑って私の手を掴み、指を軽く噛まれた。

ひーーーーっ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ