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転生を希望します!  作者: 黛ちまた
皇都編

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070.謝肉祭

久しぶりの、ミチルです。

主人公なのに、ごめん、ミチル…。

何故だ…。

一体どういう事なんだ…。


いつの間にかゼファス様までいない!

ミルヒが教えてくれた事には、ゼファス様も帝国に行ったらしい。

ステュアートとフローレスもいない。信じられない事に二人も帝国に行ったんだって!

あの二人がオッケーなら、私も連れて行って欲しかった!!


知ってます分かってます、私が役に立たないどころか足手まといだって事は、誰よりも分かってますー!


でもでも!

行きたかった。うっうっ。


「まぁまぁ、そのうち皆帰って来るから。それまでお義兄様と待っていようよ」


「嫌です!」


「即答?!」


ラトリア様には申し訳ないが、色んな人に置いて行かれたので、拗ねてます。


今年ももう最後の月ですよ?半ば過ぎましたけど?

行き場の無い気持ちを最後の祝祭にぶつけまくりですよ?

孤児院の子達と一緒に仮面作りまくりですよ!!


お義母様とロシェル様は楽しそうに仮面を作っている。

カーライルでも流行らせるんだと意気込んでるので、皇都のそれより凄いものになりそうだナー。


姫もこっそり仮面付けて祝祭参加したいって言ってたけど、無理だと思う。

何者が近付いてくるのか分からない所に姫を行かせる訳に行かないし。いくにしても護衛にがっしり囲まれてむしろあの人何者、みたいになる事間違いなし。


今回はあまりに人がいないので、祝祭後の宴はなしです。やる気なし子です。

皆が戻って来たら祝賀パーティをやろうとラトリア様に言われたけど。

いつさ、皆が戻って来るのっていつなのさ。


祝祭、つまり日本で言うところの大晦日、来週ですよ?もう今年終わっちゃうんですよ?


「毎年新しい年の日は、リオンと過ごしていたのだけれど、今回ばかりは過ごせそうにないわ。

お詫びとして何をおねだりしようかしら?」


そう言ってうふふ、とお義母様は微笑む。怒ってる気配もない。それどころかそれをネタに強請ゆすりを…!


私もルシアンを強請ってみるかな…。

うーん…何を強請ればいいんだろう…特に欲しい物も…。


「お義母様は何をおねだりされるのですか?」


「以前から欲しい髪飾りがあったのだけれど、予算を超えていたから諦めていたの。それをおねだりしようかと思うわ」


ナルホドデスネー。

聞いておいてなんですけど、別に髪飾りとか私欲しくないしなぁ。まったくもって参考にならんかった。

そもそも、私は無欲なんじゃなくて、引きこもりが過ぎて世の中の流行り廃りが分からないという、ただの世間知らず…!出かけもしないから新しいワンピースもドレスも欲しくならないし。

いっそ外に出て物欲を刺激してみるか?!人は目にした物を欲しくなるって言うじゃない?

…と思うものの、お義母様とロシェル様により、私のクローゼットは流行りの最新を追ってるんですよね。


物欲系は駄目だな。

何が不満かと言えば、置いていかれた事で、置いていかれた理由は、私が役立たずだからですね。

…あのチート軍団に混じれる何かが、そんな簡単に手に入るならもう手に入ってる気がする?!


「奥様、どうぞ」


クロエが差し出したのはルシアン君3号である。2号をもらった時も驚いたんだけどね、またナニカやらかしたのかと。それで今、目の前に3号ですよ。なんなのこの規格外伯爵令嬢?!

何した?!そろそろツッコんだ方がいいのかな、コレ?!

もしかして私のツッコミ待ちだったりしないよね?


ちなみに、ルシアン君1号はチョハを着てて、何故私が一番好きな格好を知ってるんだろうと慄いた訳です。

ルシアン君2号は宮廷服でした。目の前のルシアン君3号は学生服ですね。


「あら、クロエってば上手ね」


「本当ですわ。ルシアン様だと直ぐに分かります」


お義母様とロシェル様はルシアン君3号をもふもふしている。


「…ルシアンに見つからないようにね」


そう言って苦笑するラトリア様。

さすがラトリア様、弟の事をよく分かってますね…。


「それにしても、ミチル、痩せ過ぎじゃない?」


はっ?!


思わず胸を押さえる。


「いやいや、全体的にね?」


うんうん、とお義母様とロシェル様も頷く。振り返るとオリヴィエまで頷いてる?!


「ルシアンが帰って来たら、餌付け生活だね、間違いなく」


餌付けて!!

せめて求愛給餌行動と言って下され!




*****




今日は大晦日。つまり、最後の祝祭。

謝肉祭です。

カーライルの大晦日なんて雪降ったりするのに、皇都は滅多に降らないらしい。カーライルより西にあるからね。こっちの冬は暖かいなと思いましたもの。

とはいえ、冬だから寒いことには変わりはないんだけど。


帽子だと髪が崩れてしまうからと、イヤーマフをこちらの世界に持ち込んでみましたよ!

製造販売は孤児院です。これが流行りまして。

お陰様で孤児院の子供達に温かい洋服を買ってあげられるぐらいもうかりまして。ウハウハですよー。


ダウンジャケットとか作れないかな。お義母様に相談してみよう。羽毛布団も作りたい!

最高級品じゃなくて良いので、羽毛欲しい!

あー、これ、ノウランドとかでやってみたらどうかな?


「姫、お寒くはありませんか?」


「大丈夫ですわ。オリヴィエこそ、寒くなくて?」


「大丈夫です」


人混みに入っても分かるようにと、私とアビスとオリヴィエは、同じ仮面、同じイヤーマフ、同じマフラーを身に付けた。


仮面を付けていないと通れないメインストリートは、露店の人達は皆、鳥人間みたいな仮面を付けてもらった。

ギルドの人達は兎の仮面。兵士の人達には猫の仮面。

嫌がられるかと思ったら皆、楽しそうだった。なかなか仮面とかってしないからね。

非日常感がウケたらしくって、一般客向けの仮面も凄い売れた。値段を安く設定したのも良かったようだ。


メインストリートは、人で賑わっていた。当然だけど皆仮面を付けてます。

寒いかと思っていたのに、人が多い所為か、あまり寒く感じない。馬車の方がよっぽど寒かった。


「あれは何かしら?」


「ホットチョコレートのようです。お召し上がりになりますか?」


「飲んでみたいわ」


ホットチョコレートだとー?絶対美味しい奴でしょ、それ!


アビスにホットチョコレートを買ってもらった。

んー!あったかくて甘くて美味しい!これ考えた人素晴らしいよ!しかも量も丁度良い!多すぎると冷めちゃうけど、この量なら飲み切りやすい!

オリヴィエも最初は職務中ですと言っていたんだけど、強引に渡したら喜んで飲んでいた。フフフ。


謝肉祭という名前にした所為か、やたら肉料理を扱ってるお店が多い。

そうじゃないんだけどナ。ま、いっか。

シュラスコを今度教えてみよう。屋台に向いてる気がするし。


教会の鐘の音がした。

あと1時間で新年ですよ、というお知らせとして鳴らしてくれるようお願いしたのだ。


あちこちで、もうこんな時間か、とか、帰らなくちゃ、なんて、声がする。

人の流れが早くなった。帰ろうとする人達の流れが出来たのだろう。


私達も帰りましょう、と言おうと見渡すと、アビスとオリヴィエの姿が見えない。

さっきまで横にいたのに。この人の流れで逸れた?!


ぐいっと腕を引っ張られた。

アビス?!


引っ張られた方に顔を向けると、アビスではなかった。

仮面が違う。男の人だ。


誰?!


逃げようとした私の腰に、腕が伸ばされ、引き寄せられる。


「!」


逃げなくてはと、両手で押し返そうとした時、耳元で囁かれた。


「ミチル」


「…え…?」


見上げると、金色の目が私を見つめていた。


「ルシアン…?」




屋敷に戻った私達を、お義母様、ラトリア様、ロシェル様が迎えてくれた。

(ちゃんとアビスとオリヴィエとも合流しました)


「お帰りなさい、ルシアン」


「お帰り、ルシアン」


「お帰りなさいませ、ルシアン様」


「ただいま戻りました、母上、ロシェル様」


二人に向かって軽くお辞儀をするルシアン。

軽く兄を無視してるー。お約束過ぎるー。


「ルシアン、お義兄様にもっ」


「ただいま戻りました、兄上。私の代わりに馬車馬の如く働いて下さったんですよね?」


鬼なの?!


「働かせていただきましたよ…」


ラトリア様が泣きそうになってるから、もう止めてあげてっ。HPがゼロになりそうだよ?!


「大変結構」


しかも上から?!

兄に対して大分上からですね?!


ルシアンはひょい、と私を抱き上げた。


「次にお目にかかるのは最低でも一週間後かと思いますので、先にご挨拶しておきます。良いお年を」


コレ、いつものように軟禁される流れだ!

慌ててルシアン越しに3人に挨拶する。


「皆さま、良いお年をお迎え下さいませっ」


3人は笑顔で私に手を振った。

生温い笑顔を向けられたよ!!慣れてるけど!


「もう、ルシアン、久しぶりにお義母様達に会えたのに、あんな素っ気ない挨拶なんて駄目ですわ」


「あれでもまともに挨拶した方だと思います、私にしては」


確かに?

っていやいや!駄目でしょ!


それにしても、今日帰って来ると思ってなかったから部屋を片付けてないよ。片付けて……ない…!!


しまった!!

部屋にはアレが!!


「ルシアンッ、下ろして下さいませっ」


「駄目です」


「逃げませんからっ、お願いですっ」


立ち止まり、私の顔をじっと見るルシアン。


「…何か如何わしいものでもあるのですか?」


ぎくり。

っていやいや!

いかがわしくはない!いかがわしくはないけど、ちょっと色々!

アレとかコレとか、ソレとか、あんなものとか!!


「ありません!

ありませんけれど、淑女にも色々とあるのですっ!」


「それは夫として是非、確認しなくてはなりませんね」


何で?!私の話聞いてる?!


またルシアンが歩き出す。


あかん!これはあかん!


必死にルシアンの腕から逃れようと暴れるものの、がっちり抱き締められて逃げられない!!


やばい!やばいよ!!

ミチル、大ピンチですよ!!!


「お願いです、ルシアン!」


「駄目」


悪魔ーっ!!


私の抵抗も虚しく、部屋に着いてしまった。下ろされてすぐに寝室に駆け込む。


シャツを手にした瞬間、ルシアンが部屋に入って来た。慌てて背中に隠す。


「ミチル?今隠したのは何?」


あわわわわわわ!!


「何でもありませんっ」


「ふぅん?」


笑顔で近寄って来ると、私の前に座る。


「見せて?」


おかしい!なんだコレ?!

まるで浮気の証拠でも見つかったみたいじゃないか?!

全然そんな事ないのにっ!


首を横に振る。


ルシアンの唇がおでこに触れる。


「!!」


でこちゅーの隙を突いて、背中に隠していたシャツを奪われた!!


「駄目っ、返してーっ」


手を伸ばして取り返そうとするものの、立ち上がったルシアンの方が背が高いから、届かない。


返してってのもおかしいな、アレは元々ルシアンのものだな?!


「これは私のシャツ、ですか?」


あぅ…バレた…。


「……ソウデス……」


「私がいないから?」


「………お借りしておりました……あの…ちゃんとお返しシマス…ホントウデス…」


あぁー、破廉恥な本が彼女に見つかっちゃった的なこの居心地の悪さ……。


「抱いて寝ていたの?」


ひぇっ!まさかの尋問開始ですか?!


「……ソウデス……」


ふふ、とルシアンは笑う。


「他には?」


他?!

まさか、彼シャツを知ってるのか、ルシアン?!

こっちにはない筈!ない筈?!


「…着たり…しました…」


ルシアンはじっと私を見る。耐えられない私は俯く。

こっち見んな。こんにゃろめ。


「なるほど」


何を納得した?!


「ねぇ、ミチル」


「ナンデスカ」


「私がいなくて寂しかった?」


「……寂しかったです…」


それは本当だし、隠すべきじゃないと思うから、素直に答える。

何しろそれでシャツをお借りしちゃった訳ですし。今更ごまかせませんし。


「私のシャツを、ミチルが着ている姿が見たいです」


イキナリ?!


「見せて?」


そう言ってルシアンは微笑んだ。


……いくらなんでも、この展開は酷いと思う!




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