表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生を希望します!  作者: 黛ちまた
皇都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

197/360

055.暑さには負けないぞ!

お義母様とロシェル様に頼んでマスクを作ってもらい、ゴムでゴム手袋を作成した。


「これは一体何に使うのかしら?」


初めて見るマスクに、お義母様は興味津々です。


私はそれを両方装着した。

ふふふ、完璧です。

ゴム手袋をにぎにぎしてみる。うむ、ちゃんと5本指が動きますよ!


「ご主人様、まさかその格好で側溝の掃除をなさろうなどとお考えではありませんよね?」


背後から氷点下まで冷え切った声がした。


ぎくり。


ギギギ、と首を動かして振り向くと、物凄い笑顔でアビスが私を見ていた。


わぁ…!怒ってる…!


「お立場をお考え下さいませ。

ご主人様は皇族でらっしゃいます。そうでなくとも貴族なのです」


マスクと手袋を奪い取られてしまった。


あっ!せっかくの力作が!


「そもそもこれは何ですか?」


しげしげとマスクとゴム手袋を見るアビスに、恐る恐る答える私。


「マスクとゴム手袋です…」


アビス怒るとめちゃ怖いね?!


「このマスクというのはどういう効果があるのですか?」


使用法は私が装着したので分かったろうけど、効果は分からんよね。


「マスクは、咳などにより菌が体外に出て、他の人に感染する事を防いだり、菌が体内に入るのを防いだりします。今回は臭い対策にマスクを付けました」


菌については、アビスとクロエには説明した。

めっちゃクロエが食いついてきて、引いたけど。


細菌兵器とか作らないでね、クロエ……。


「では、このゴム手袋は?」


「ハイセツブツには、雑菌が多いので、万が一傷口などに入ってしまうと、下手したら感染してしまうので…」


怪訝だった顔がまた、笑顔になった。

ひええええぇぇ。


「そのような危険な行為を、なさろうとなさったと?」


「あー、えー…あの、ごめんなさい、アビス」


アビスが怖いよー!


お義母様が私の頭を撫でた。

怖いのでお義母様の後ろに隠れる。


「ミチルが直接やるかどうかはさておいても、色んな所で使えそうではありませんか?アビス」


「はい、大奥様。これは、然るべき者達が使えるようにはした方が良い物だとは思いますが、間違ってもご主人様がお使いいただくものではございません」


ホホホ、とお義母様が笑う。


他の人に汚い仕事をさせてしまうのが申し訳ないんだけど、アビスが駄目だって言うしな。


「…アビス、怒ってますか?」


「いえ」


嘘吐け?!

めっちゃ怒ってるやん?!


「これまではアレクサンドリアでしか接点がなかった為、ご主人様の事をよく存じ上げませんでしたが、こうしてお側に侍らせていただいて、ご主人様の事が少しずつ分かって参りました」


呆れてる?

突拍子もない奴だって呆れてない?


「あまりご主人様の行動を制限するのは、ご主人様の精神上よろしくない事は理解しましたが、今回の事は看過出来ません。

ご主人様の正しい行動としましては、このマスクやゴム手袋を速やかに大量に作成させ、お配りになる事です」


「…はぁい…」


正しく優秀な執事は、主人の望みを叶えつつも、駄目な時は駄目と言うのだ。

アレクサンドリアの愚父の執事とはエライ違いだよね、本当。さすがアルト家です。


「このマスクという物は、医者も使えるのではありませんか?」


「そうですね。看護師も使えますよ」


「カンゴシ?」


……………いないか。


「簡単な医療技術を持っていて、お医者様の補助をする方です」


「…ご主人様、医者にかかられた事は?」


そう言えばないな。健康そのものだしな。

さすが体育会系一族。


「ありませんわ」


「一度、この世界の医療をご覧になっていただいた方が良いかも知れませんね」


よく分からんけど、リョーカイです。

改革しろって事だろうか?


先日のアルトファミリーとゼファス様との話し合い後、木工職人に孤児院の建設を依頼した。

本来であれば石工の方が良いんだけど、それだと時間がかかりすぎちゃうから、木工職人に依頼したのだ。

そんなのは後でも良い。早く孤児を救わねば。


側溝をキレイにしたら、孤児達をお風呂に入れて清潔にしなくては。ご飯もいっぱい食べさせて、温かい布団で寝かせてあげるのだ。

現代日本の児童養護施設関連の話を見ると、施設に入った子供から荷物を取り上げてしまうらしい。共有財産にしちゃうみたい。

でも、物によっては、それが唯一の家族との繋がりかも知れないのに、そういった物を取り上げるのは酷だと思う。

持たずに入った子供達に、形のあるものや、形のないもの、何でも良いからいっぱいにしてあげようというのが、私の孤児院経営の基本コンセプトだ。

もうさ、親がいない時点でハンデ背負ってるんだからさ、子供の時ぐらい良いじゃないかって思う。大人になったら嫌でも頑張らなきゃいけないんだからさ。

甘やかせって事ではなくてさ。

それに、子供の時の精神的飢餓感は、人格形成に大きな影を落とすというから、意味のある事だと思う。

親がいても、ミチルのように育つ子供もいるけど。その点私は、前世の記憶を取り戻して良かったって思う。

家族に愛された記憶があるから、今、こうしていられる。

それでも、ミチル自身の記憶に引っ張られて哀しい気持ちになる事があるのだ。


「孤児院は来週の金の日には完成するそうです」


えっ?!早すぎない?!

もしかして無理させてるの?!


「先日、ご主人様が石工職人をお助けになった事が皇都の中で広まっておりまして、ミチル殿下のお力になりたいと木工職人が総出で作成しているようです」


えぇー…。

いや、大変ありがたいんですけどね?

色々と心理的なハードルが上がっていくんですけども?


「…それは、大変ありがたいことです。お礼をした方が良いでしょうか?」


「本来であれば不要ですが、ご主人様がなさりたいのであれば、なさってもよろしいかと」


炎天下の中作業してもらってる訳だし、カテドラル建設の人達の事もあるから、大量に自作スポドリ持参して教会に行って来ようかな。


孤児院に搬入する家具も考えないとなー。


「ベッドはどれぐらい用意出来そうですか?」


「60ぐらいでしょうか」


皇都の孤児の数って、どれぐらいいるんだろうなぁ…。


「ベッドやテーブルなどの家具も、木工達が作ってくれるそうです」


?!

それちょっと、大盤振る舞い過ぎない?!

費用なんかは当然こっち持ちだし、ちゃんと報酬も払うけど、なんかそれ以上にサービスされてる気がしてしまう!


「お気になさらなくて大丈夫かと思います。

彼ら平民なりの感謝ですから。基本貴族は平民の生活を良くしようなどとは考えません。

ですがご主人様は民の事をお考えになって行動なさいます。それが、伝わるのでしょう」


…え、だって、民が納税してくれるから貴族は裕福なんだよ?

それに民が潤えば領主も潤うんだから、気にかけるのは当然じゃない?


「アルト一門も同じ考えですので、ご主人様のお考えは理解出来ますが、全ての貴族がそうではない事は、ご主人様もご存知かと」


…まぁ、そうだね。

平民を人として扱わないどうしようもない貴族は一定数いるもんね。

本当に、あぁはなるまい。


「そうですね、そういった思考の方達がいる事は存じてますわ」


息を吐く。


「彼らの気持ちに感謝しますわ。必要になった素材分はきちんとお支払いしてあげてね」


「勿論にございます」


孤児院への寄付は、教会そのものにしてもらう。

普通だと孤児院の職員の数は少ないけど、教会の聖職者みんなで世話する事にしたらしいので、まぁそれもありかなと。




姫との散歩時に、姫が教会の事と孤児院の事を聞いて来たので、その辺を話した。

少しの間無言になられてベンチに座りましょう、と提案された。


それから、姫の身の上話を聞いた。

知っていたけど、本人から聞くのは、言葉により重みがあるものなのだと感じた。


「冷え切った教会で、満足な食事も摂れず、日々祈りを捧げて暮らしておりました。

私は幸運にも迎えに来ていただきましたが、そうではない子供達は多かったのです」


孤児院という形を取ってなくても、修道院によっては親のいない子供を引き取る事はそれなりにあるようだ。

ただ、その場合は迎えられる人数は少ない。


「お父様が、寄付を募ると申しておりました」


「寄付、ですか?」


「はい。衣服、食料、何をするにしてもお金がかかりますから、いくらかなりともご寄付いただけたら、子供達に使ってあげられます」


まぁ!と姫は声をあげると、目をキラキラさせた。


「私からも是非、寄付させて下さいませんか?お祖父様にも声をかけてみます」


「ありがとうございます、姫。本当に助かります」


「ミチルはお優しいのですね」


「いえ、優しくはありませんわ。

私が子供達を保護するのは、未来の為です」


未来?と首を傾げながら姫が尋ねる。


「姫はご存知ない事かと思いますが、皇都では子供による窃盗が頻発しているようです。その子供達が盗んだものを、あろう事か盗人の大人が搾取するのです」


「なんて事を!」


頰を膨らませて怒りをあらわにする姫はとても可愛い。


「その盗人達も、同じような子供だったかも知れませんね。誰にも助けてもらえず、まともな職にもありつけず、盗人に身をやつしたのかも知れません。

だからと言って許される事ではありませんが」


私の言葉に姫はみるみるうちにしょんぼりし始めた。


「姫、世の中には生まれついての悪人もおりますが、ならざるを得なかった者もいるのです。

私は、それを減らしたいのです」


「やはりお優しいですわ」


「自分の為ですわ。安全な街に住みたいからそうするのです。それがたまたま他の方達の要求と合致しているだけですよ?」


ふふふ、と姫は微笑む。


「そういう事にしておきますわ」


そういう事も何も、それしかないけどね?

そりゃ、どうせやるなら喜ばれた方がいいとは思ってるけどさ?




姫とクレッシェン公爵が寄付をしてくれた事で、他の皇族達も揃って寄付をしてくれる事になった。

それが貴族達にも広まると、あっという間に目算していた額を突破した。

皇族効果凄い!


マスクとゴム手袋は大量に作成されて、民による側溝の一斉掃除が行われた。誰に頼んだもんかな、と思っていたら、まさかの一斉掃除。

あれかな、民も側溝のオブツを何とかしたいと思ってたって事かな?

大衆浴場にお金を払うので、掃除に参加した人達をお風呂に入らせてくれとお願いしておいた。

汗もかいたろうし、扱ったものがアレだし。

自費で払おうと思ったら、ラトリア様が、それは皇室が払うから大丈夫だよと言われてしまった。


キレイに清掃された側溝に、都合よく皇都の四方に散っている大衆浴場から水が流され始めた。しばらくは水が足りない状況だろうけど、少しずつ増えていくといいな。


皇都の猛暑対策である、シェードはメインストリートを完全に埋めた。執務室から見ると、白い布が一つの線のようにつながっていて、なかなか壮観だ。

緑のカーテンは、陶器が間に合わないのもあって、地植えする者が多かった。ラトリア様がっかりである。

鉢植えは、緑のカーテン以外でも使えるものだから、大丈夫ですよ、と慰めておいたけど。


炎天下で作業する人、室内で火を使う人達にはスポドリが一番良いけど、レモンがそれなりにするからね、入れようとすると高くなってしまう。

意外なところから感謝されたのが、騎士団だった。

考えてみれば、甲冑なんかは着ないまでも、騎士服って分厚いし、長袖だし。

訓練も毎日やるみたいだし、そりゃ汗もかきますね。

騎士団ではなんちゃってスポドリを作って飲んでるらしい。


「ミチル、これ食べてみてよ」


ゼファス様は遊びに来て早々に、ファッジを差し出してきた。


「?ありがとうございます?」


口に入れると、甘さと塩っぱさが広がった。


「!」


塩ファッジ?!


「飲食ギルドが塩を摂取しろ、って飲食店に通達したら、これを作ったお店があったんだよ。平民も頑張るよねぇ」


これなら、仕事しながらでも、口の中に入れておけるのでは?食べすぎ注意だけど!


「塩バターキャラメルが食べたくなってきました」


ゼファス様の目がキラリと光った。


「ミチル、それ、どうやって作るの?」


そうだ、この人甘党だった!!


満足のいく味が作れるまで、毎日ゼファス様に塩バターキャラメル作りに付き合わされる事になった…。


sasara住庭月さま

塩飴の案、ありがたく頂戴致しました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ