031.恋愛レベル1のスライムから激しく進化した!
今日はクロエと実験をする予定です!
先日の夜会で思い付いた事をクロエに話したら、是非試してみましょう!という事になったのですな!
って言うか、直ぐに凍らないから、クロエがやっといてくれる事になって、その結果を一緒に見ようと。
ルシアンは今日、明日とキース先生と皇都から離れた川の上流の方に向かってます。
本格的に梅雨のシーズンになる前に、治水をしなくてはいけないもんね。
「対象とする植物は、先日の報告書と同じように、複数種の植物を混合したものと、単一の植物だけ、の2種類です」
了解です、クロエ先生!
「ひと晩冷凍庫で凍らせました」
当然クロエの部屋には冷凍庫は置いてないので、厨房の冷凍庫を借りたとの事。
セラとクロエが持ってきてくれた、凍結後の植物が、テーブルに置かれる。
布がかけられているので、クロエも結果は分からないらしい。
「奥様、どうぞ」
サッと布を取る。
「!」
植物と植物の間に、パウダービーズみたいな小さい粒がある。
ぱっと見、アイスプラントみたいだった。
よく見ると、透明ではない、色のある粒だ。
複数種の混合したパターンの方には、黄色や緑色の粒が。単一の方は同じ色の粒が。
これは、もしかしなくても、魔石なのでは!!
「く、クロエ、これはもしかして…」
クロエはカクカクと頷く。
「出来てますわ、奥様!」
「へぇ〜っ」
やったー!!
嬉しくて思わずクロエと抱き合う。
植物から取れた魔石を手に取ってみる。本当にパウダービーズみたいだ。集めたら人を駄目にするクッションが作れそうである。
「先日奥様からいただいたもう一つの調査ですが」
あ、はい。
クロエから離れて姿勢を正す。
「動物の中でも、魔石を持たぬ種は存在しました」
あ、いるんだ、やっぱり。
この前読んだ本に書いてあった内容を思い出す。
「その動物は、外来種ではなくて?」
クロエは頷く。
「奥様がおっしゃる通り、南方より持ち込まれた種は、魔石を保持しておりませんでした」
元々この大陸で生まれた生き物は、人も動物も魔力を持っていて。って事は植物でもそれがあり得そう。
「植物でも同様の事が言えそうね」
調査します、とクロエは頷きながら、紙に書き込んでいく。
「これ、かなりの発見なんじゃないのかしら?」
セラはパウダービーズ、もとい植物の魔石を集めて、手の上でサラサラと揺らしながら言った。
「これまで、植物は魔力を保持すると言われておりましたが、抽出方法は判明しておりませんでしたから、間違いなく大発見です」
クロエがドヤ顔して言った。
…野菜から魔石って、どうして取れないんだろう?
「野菜を凍らせても、魔石は取れないのよね?」
「冷蔵室に入れる事はあっても、冷凍庫には入れませんから、分からなかったのでは?」
「いえ、でも、雪国ではどうなのかしら?」
「雪国では元々野菜が多く取れませんし、取れたとしても直ぐに食してしまいます。それから、平民に取って魔石はあまり一般的ではありませんから、目にしていても、粒が小さ過ぎて見逃されていた可能性はあります」
あぁ、なるほど。
よく見ると色が付いてるのが分かるけど、ぱっと見は透明だし、水滴と思われる可能性はある。気付かれないままでいたのかも知れない…。
「ミチルちゃん、これ、報告するの?」
そうだよね、報告した方がいいよね。
明日ルシアンが戻って来たら報告しないと。
「まずはルシアンに報告して、判断を仰ぎますわ」
そうよね、とセラも頷く。
「私の方では、同じ方法で植物や野菜から魔石が抽出可能なのかを検証致します」
「お願いするわ、クロエ」
もし普通に野菜からも魔石が、小粒とは言え取れるようになったら、魔石を集めて溶かすとかすれば、電気みたいに使えるようになるかも知れない。
生活が変化する可能性があるよね。
雑草むしって凍らせるだけで魔石取れたら凄くない?雑草取りが楽しくなるかもよ?
思った以上に早く帰宅したルシアンに、植物から魔石が抽出出来た事を報告したら、さすがに驚かれた。
「クロエに命じていたのは知っていましたが、本当に抽出出来たのですね」
集めた魔石の粒を、手のひらの上でサラサラと揺らす。どう見てもパウダービーズ。
いつか作りたい人を駄目にするクッション。なんだろう、淑女を駄目にするクッション、とかだろうか、名付けるなら。
なんだか妙にいやらしい印象を受けるのは、私が汚れているから?!紳士を駄目にするクッションだとしても、なんかいかがわしい。
人を駄目にするも、知らない人が聞けば大概なネーミングだよね。
駄目にする、だからよくないんじゃないか、きっと。
淑女を虜にするクッション。これはこれで媚薬とかみたいだなぁ。
うーん…?
身体が喜ぶクッション。…急に健康オタクみたいになってきた。
ネーミングって難しいな?!
包まれるしあわせなクッション、あ、これならいいかも?
ただ、あれだけの量の魔石を植物から採取するのは大変そう。
「凍らせればどんな植物でも確実に抽出可能なのですか?」
「そこは確認中です」
なるほど、とルシアンは頷いた。
「この件は、本国の父上に一度相談の上、カーネリアン先生にお伝えするかを決めさせて下さい。規模が大きくなりそうですから、軽々に判断がつきかねます」
ですよねー。
それはね、私もそう思います。
……よし、報告は終了です!
テーブルを挟んで正面に座っていたのを、立ち上がってルシアンの膝の上に自発的に座ってみる。
…ちょっと甘えたい。実は?甘えん坊なのです、ワタクシ。
突然の私の行動にルシアンはちょっと驚いていたけど、直ぐに私をぎゅっと抱きしめておでこにキスをしてきた。
「ミチルが可愛すぎる」
大分ね、色々出来るようになりました、えぇ。
これも日頃のスキンシップの賜物ですね。
抱き付いたり、頰にキスとかもね、やるぞ!って気合入れなくても出来るようになった!
さすがに毎日お帰りなさい、って言って抱き付いて、頰にキスしてればね、慣れます。あれは良い練習になりました、本当に。
唇へのキスも前よりは出来るようになってきた!
成長!凄い進歩だよ!
セラに言ったら、成長ではなく進化だって言われた!そこまで?!
いや、でも恋愛レベル1のスライムみたいだった私が、ここまで来たのだから、これはもはや進化!
人型まで進化しちゃったんじゃないかな?!
悲しそうにルシアンはため息を吐く。
え、なんで?まだ足りないとか?!
「いつになったら秘密を教えていただけるのか…」
それか!
「秘密です。強引に聞き出そうとするなら、もうキスいたしません」
駄目、教えられません。教えたら監禁コース一直線です。
「それは困りますね」
と、まったく困ってない顔でルシアンは言うと、とろけそうな目を私に向けて言った。
「聞きませんから、キスして?」
……なんかむしろ、ルシアンに程良いネタを与えてしまったような気もしなくもない…。
でも良いの、ルシアンが好きだから!
頰にキスをする。
「頰だけ?」
そっと唇にもキスをする。
いや、もう本当、我ながら凄い!凄いよ!!
自らルシアンのお膝に座って、頰にキスからの、唇へのキス!
「我ながら凄いです」
ルシアンがくすくす笑う。
「そうですね、本当にそう思います」
「褒めていただきたいぐらいです」
私がそう言うと、ルシアンが良い子良い子、と言って私の髪を撫でた。
…ん?これは恋人とか夫婦って言うより、小さい子を褒めているような?
「もー、ルシアン、そうじゃありません。その褒め方は幼子の褒め方ではありませんか」
私はれっきとした成人女性ですよ!
違う褒め方が…いや…ちゃんとした成人女性なら、自然に甘えたり愛情表現が出来てたりする…?
え?でも、破廉恥な事しちゃ駄目って、教わったよ?
「アレ…?」
我慢出来なくなったのか、ルシアンは顔を背けて肩を震わせて笑ってる。
ちょっ!笑いすぎ!
「ルシアン、笑い過ぎですっ」
肩を掴んで揺すって抗議する。
「すみません、本当に、もう、可愛くて。
アレッて…」
目が笑ってますね?!
「いいのですっ、私は少しずつルシアンに愛情表現出来るようになるんですっ」
はい、と満面の笑みを浮かべてルシアンは私の顔にキスシャワーをしてくる。
ヤバイー、とけそうー!とろけそうー!
うーむ、目指すべきは何処なんだろうな。
もうちょっと自然に、気持ちを伝えたり、スキンシップが出来るようにはなりたい。
そうだ、感謝祭の宴の時の、キース先生と奥様の、あの自然なラブラブっぷり!
あれ!あんな風になりたい!
とは言えですよ?
今の私は、ネオミチールになったと言っても過言ではない。
己の進化を祝って赤飯炊きたくなってきたわー。
「源之丞殿を招待する日にちですが、いつが良いですか?」
源之丞様が来る日、赤飯でも炊こうかな。
めで鯛とか言って鯛の尾頭付きとか。
なにがめでたいのかさっぱりだけど。
「ルシアンにお任せしますわ」
私は基本暇人だからね。
植物の魔力研究はクロエがやってるし、復活祭の事はゼファス様が嬉々として進めてるらしいし…(遠い目)。
っていうか、本気でやるのか、肝試し…。
この前から借りている魔力の本が、もうちょっとで読み終えそうだから、それを図書室に返しがてら、続きを借りたい。
借りた時気付かなかったけど、あの本、上下巻なんだよね。
「分かりました。私も最近は治水関連の案件が立て込んでますから、空いてる日にちを選んで源之丞殿には招待状を送っておきます。日程が決まったら、知らせますね」
「よろしくお願いしますわ」
燕国出身の源之丞様のおもてなしかー。
和尽くしやってみようかな。
*****
クロエは私が依頼した事を検証中で。
ずっと座ってるのも飽きたから、セラを連れて図書室に本を返しに来てみた。
まさか今回まで殿下とは会うまい!
…っているし!!
殿下、暇なのかな?!
殿下は私を認識するなり、寄って来た。
セラが警戒したのは言うまでもなく。
私は殿下にカーテシーをする。
「先日の夜会で転けそうになった時、足を捻ったりはしなかったか?」
「はい、大丈夫でした」
そうか、と言って殿下は苦笑した。
「助けようと思ったが、私が手を出すとまたいらぬやっかみを受けそうだったのでな、助けられなかった。すまぬ」
意外に考えてくれてるんだ?
しかも開口一番にそれを言うぐらいには、気にかけてくれてたって事?
思ったより良い人なのかも……なんてね?思う訳ないですし。
八つ当たりですけど、殿下の所為であの犯罪まがいのベビードールを着るハメになった事、勝手に恨んでますからね!
えぇ!八つ当たりですよ?!完全なる八つ当たりですけれど、何か?!
…そうだ、あとでフィオニアを見つけて、殴ろう、うん。
私が殴ってもあんまり痛くなさそうだし、セラ、代わりに殴ってくれないかな?!
殿下には八つ当たりだけどさ、フィオニアはヤッていいと思うんだよねぇ。うふふふふふふふ。
待っているがいいですよ、フィオニア!
「いえ、大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます」
にこりと殿下は微笑むと、離れて行った。
良かったー、去って行ったわー。
今回はエライ聞き分けが良いではないの?
いつもそうなら印象も違ったのにね?
「何を考えているんだか、サッパリ分からないわよね」
いいのよ、セラ。
偽ルシアンを気にしている場合ではないのです!
「気にせず本を探すのを手伝って下さいませ」
「あ、そうだったわね」
セラ、イーギスとアメリアに手伝ってもらって今読んでる本の下巻を探したけど、見つからなかった。
仕方ないから別の魔力の本を見たりしたけど、これと言って興味を惹かれるもの、というか新しい発見をしそうな本はなかった。
結構古い本みたいだから、もしかしたら無くなってる可能性もあるのかも。
とはいえ、暇だからと適当な本を借りて執務室に帰った。
クロエの役に立つかも知れないと思って、皇都の植生について書かれた本とかも借りてみた。
既にクロエなら知ってそうだけど。
あと、燕国の本!
源之丞様をもてなす為にも、燕国がどんなものなのか調べようかと!




