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転生を希望します!  作者: 黛ちまた
皇都編

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022.マーブルファッジ

宴が終わって、みんなも帰り、私も湯浴みを終えて自室でまったりする。


今日は本当に感謝祭が上手くいって良かったなー。

あともう1日あるけど、出だしは悪くないよね。

初めての祝祭ですからね!


そう言えばフィオニアがくれたのは何だったのかな、と思って開封してみた。

あ、ファッジ!皇都はファッジが有名なのか、ファッジ専門店が多い。

カーライルにはないんだよね、専門店は。ファッジそのものはお店に置いてあっても、大体一種類しか扱ってない。

あっちに戻ったらカフェで出すのもいいかも。あ、ホワイトデーのメニューに加えればいいんじゃない?


箱の蓋を開ける。

色んな種類のファッジが入ってる。

レモンだったり、ストロベリーだったり、バニラだったり。色とりどりで可愛い!

セラもストロベリーファッジを買って来てくれてたし、サーシス兄弟、優しい!


寝る前に一つだけ食べちゃおうかな。

どれにしようかな。

んー、迷う。

ストロベリーは今日食べたからなー、でも美味しかったな、ストロベリーファッジ!


「ファッジですか?」


ルシアンはワインボトルとグラスを2つ持っていた。

グラスが2つ!どう考えてもルシアンと私のだろうけど、飲まないから!


サイドテーブルにワインとグラスを置くと、私の横に腰掛ける。


「フィオニアが下さったのです。今日の出店で売っていたのですって」


ネグリジェ以外もちゃんと買えるんじゃないですかー。

まったくもー。


「色んな種類があるんですね」


ファッジが詰まった箱を、ルシアンも覗き込む。

ルシアン自身は甘い物が好きじゃないから、ファッジを食べないだろうしね。


「これは?」


ルシアンが指差したファッジは、一つしかないものだった。マーブルになってる。


「何味なのかしら?色からは判断がつきませんわね」


そのファッジを食べてみようか、と思って手を伸ばそうとした所、ルシアンがファッジの上に手をのせて、掴めなくした。


「ミチルがどうしてもと言うなら止めませんが、多分これは媚薬入りです」


「?!」


慌てて手を離す。


ルシアンはそのマーブルのファッジをひとかけ齧る。


「…うん、 やっぱり」


ひぇぇぇっ!


「あの、ルシアンは以前、媚薬が効かないとおっしゃってましたけれど、媚薬が入ってる事は分かるのですか?」


「分かりますよ」


「…口にすると、どうなるのですか…?」


「媚薬の種類にもよりますが、即効性のあるものなら、身体が熱くなりますし…まぁ、劣情を抱きます。

私も劣情は抱かないものの、口にすれば熱くはなります」


へーっ。

マーブルファッジをガン見する。


「それにしても、よくこれが媚薬入りだと分かりましたね?」


「あからさまに怪しいでしょう。フィオニアですし。

真ん中に一つしかない、変わった色合いのファッジ。一番最初に手を付けたくなるように並べてありますから」


確かに、真ん中にあるものって最初に目に付くし、スペシャル感がある。


フィオニア!信用されてないよ?!いや、別の意味で信用されてるのか?!


…それにしても、フィオニアは私に媚薬を食べさせて何をしたかったんだ…。

セラの、フィオニアはルシアンが喜ぶ事を重要視する、という言葉を思い出す。


「ルシアンは、私が媚薬を口にして迫ったら、嬉しい?」


「嬉しいか嬉しくないかで言えば、勿論嬉しいですが、そこにミチルの気持ちはありませんから、難しい所です。

媚薬によっては理性を飛ばし、本来好意的に思えない相手と情事をする事すら躊躇させないものもあります」


なんて恐ろしい…っ!


ただ、えっちがしたいだけの人とか、既成事実を作りたい人には人気なんだろうな…。

ふふ、ルシアン、盛られてたって言ってたもんね…。


それよりも、と言ってルシアンは持ってきたグラスに白ワインを注いでいく。


「はい、ミチル」


首を横に振って受け取りを拒否する。


「私、お酒に流されたくありません」


お酒だって媚薬みたいなもんじゃないか。

理性があやふやになってしまうんだから。

あー、前世の身体が羨ましい。あの身体はそれなりに強かったから楽しむ余裕があったもんねぇ。

今もそうであって欲しいとは思わないけど、さすがにミチルの身体はお酒に弱すぎる。


そうですか、と言ってルシアンは一人で飲み始める。


…アレ?飲ませてほにゃららを企んでる訳じゃないの?

今度は覚えててね、とか言ってたような?


「強引に勧められるのかと思っておりましたのに」


ルシアンは苦笑する。


「ミチルの中の私は大分酷いですね」


そりゃあ、あんな騙し討ちみたいな事をされ続ければそうもなります。いつも私の言う事なんて聞いてくれないし。強引だし。


…それにしても、美味しそうに飲むなぁ、ルシアン。


「…お好みの味でしたの?」


「ん?ワインですか?」


グラスから口を離すと、ワインを見つめる。


「そうですね、好きな味です」


はっきり肯定されると、気になってくる。


お酒自体は嫌いじゃない。っていうか美味しく飲める身体なのだ、ミチルは。

でも、弱すぎてすぐに酔ってしまうし、酔うとその、素直になり過ぎると言うか…。


ルシアンは優しく微笑んで私の頰を撫でる。


「明日はどんな出店があるんでしょうね。ミチルの気に入るものがあるといいんですが」


あっれー?なんか今日のルシアン、良い人じゃありません?

おっかしいな、夢でも見てるのかな。

いつもいつも罠に嵌められて、与えられた選択肢は全てルシアンにとって都合の良い、私にとっては恥ずかしい事だらけが日常だったのに。

…って大分酷いな?!


もしかしてアレかな、私がルシアンをなかなか食べないからあんな事をしてたんであって、実はルシアンてば優しい人だったり…いやいや。ないない。それは絶対ない。

ルシアンはまごう事なく腹黒です。魔王なのです。


じっとルシアンを見る。


「どうしました?ミチル」


おでこにキスするルシアン。


…なんだか、調子が狂う。


ルシアンはまたひと口、ワインを口にする。美味しいのだろう、口元に笑みが浮かぶ。


えーっ?こんなに美味しそうにされると、どんな味なのか気になる!

…ひと口だけなら、大丈夫なんじゃない?


「…ルシアン」


「なぁに?」


うわっ、久々にきた、その甘い返し!

それだめ、きゅんとするから!


頰にキスが落ちてくる。


「どんな味なのか、ひと口だけいただきたいです」


私の言葉に、ルシアンは笑った。


「駄目」


駄目?!何で?!

いらないって言ったから?!


「ミチルは多分、ひと口で止まらないだろうから」


なにそれ、そんなに美味しいの?!


「そうなったら酔ってしまって、ミチルの望まない状況になるでしょう?」


それはそうなんですけど、そこまで言われると逆に気になるじゃないですか!


「また用意しますから」


「目の前で飲んでらっしゃると、気になります」


ひと口でいいのにー。

…多分。


「もう、我儘ですね、ミチルは」


ルシアンはグラスの中のワインを飲み干すと、ワインの入ったボトルとグラスを手にして立ち上がる。


「片付けてきますね」


言ってる事は何一つ間違ってない!間違ってないのに負けた気がする!


なんだろう、いつもと立場が逆転してる!

真っ当な?旦那さんと、我儘な妻の図みたいになってるし!

いつも無茶苦茶なのはルシアンの方なのにーっ!

普段我儘言わないんだから、こんな時ぐらいっ!


「ルシアンの意地悪ーっ」


思わずルシアンの夜着を掴む。


困ったようにため息を吐くと、ルシアンは私の隣に座り、グラスにひと口だけワインを注いでくれた。


「ひと口だけですよ?」


「ありがとう、ルシアン」


いぇっふー!

喜んでグラスを受け取り、口にする。

ほんわりと口の中いっぱいに広がる香りと、酸味のある味。

お…美味しい…!

白ワインだから飲みやすいし!

これは、ルシアンが美味しそうにするのが頷けます!


私の手からルシアンはグラスを取ると、部屋を出て行ってしまった。

泥酔はしたくないけど、今のワインは美味しかったです。もっと飲みたかったです…。

いらないなんて言わなければ良かった…。


部屋に戻ってきたルシアンは、不貞腐れ気味の私を見て笑った。

私の横に座ると、髪を撫でる。


「今日に限ってルシアンが良い人で意地悪です!」


「ミチル、落ち着いて」


「いつもでしたらもっと強引で、お酒なんかも飲ませてきて、あんな事やこんな事する癖に、今日に限って優しくて意地悪です」


この前のお酒も美味しかったけど、今日のは本当に美味しかったのに!


「いつも強引だと言われるので優しくしたのですが、こんな風に言われるとは…困りますね」


…確かに。

どっちなんだよ、って感じだよね。


乙女心なのかミチル心なのかは分からないけど、優しくして欲しい時もあれば、強引にして欲しい時もあるのっ。

乙女は我儘なの!臨機応変に対応して欲しいの!


……本当に我儘だな?!


我儘ばっかり言ったら嫌われるかな…。嫌われるよね。

ちょっとなら許容範囲でも、そればっかりは駄目だよね。


ルシアンの唇が頰に触れる。


「可愛すぎて困ります」


…アレッ?

予想外の反応来ましたよ?!


ルシアンを見ると、ふふ、と笑った。


「以前はこんな風に我儘を言って下さらなかったでしょう?」


なにこのイケメン!イケメンが過ぎるんじゃないの?!


「とても、嬉しいです」


でも、と言葉を続ける。


「ミチルが酒に強くないのは事実ですから、多く飲んで明日の出店を楽しめなかったら、嫌でしょう?」


ルシアンの言葉に頷く。


それは、確かに嫌である。


「また明日、飲みましょうね?」


もう一度頷く。

そうか、明日飲んでもいいのか。でも、もうちょっとなら飲めたと思うのだ。

明日には風味が損なわれてるかも知れないし。


まだちょっとスッキリしない私を、ルシアンは膝枕して髪を撫でる。


「可愛い」


その言葉に、急に正気?を取り戻した私は、恥ずかしくてたまらなくなった。

顔を両手で覆ってルシアンに背を向ける。


ああああああ、なんだか色々と調子に乗って申し訳ありませぬーっ!!


飲みたくないとか言ったかと思えば飲みたいと我儘を言って、飲ませてくれたのに、もっと飲みたかったとか不貞腐れて…!

あかん奴や!!


「ミチル。顔を見せて?」


ルシアンの手が私の顔を覆う手を剥がし、頰を撫でる。


「ルシアン…我儘言ってごめんなさい…」


大丈夫ですよ、とルシアンは微笑む。


「愛する妻が甘えてくれるのは、可愛いものです」


なんだかんだ言ってひと口飲ませてくれたし、優しいと思うけど。


あぁ、なんか今日、駄目。

すっごい我儘だって自覚した。

ルシアンにすごい甘えてる。


「ミチルの言う、意地悪な私に戻ってもいいですか?」


え?意地悪なルシアン?

突然何をおっしゃるのかな?


「さっきのファッジ、大分強いものだったんです」


にっこり微笑むルシアン。


「ですが、ルシアンは媚薬は効かないと…」


え、ちょっと待って。

しかもほんのちょっと齧っただけだよね?


「効きませんよ、でも熱量は抱きますから」


熱量?!


「私は常日頃からミチルに情欲を感じてる訳ですが…」


やめてやめて、そんな事、淡々と言わないでっ。

いやっ、淡々としてないな。

私を見る目が色っぽいですな?!


「さすがに媚薬で熱を帯びると、我慢をするのが難しくなります」


私の頰をなでるルシアンの指が、怪しげです!

あかん奴です!!


「そ、そこは理性を総動員していただきたいですわ」


「していたんですが…ミチルが煽るので」


いつ?!

何処で?!


「そんな事してませんーっ」


逃げようと上体を起こした所を、後ろから抱きすくめられ、首にキスをされた!

ピンチ!


「愛してますよ、ミチル」


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