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転生を希望します!  作者: 黛ちまた
学園編

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092.元伯爵令嬢の趣味と誘導

今日から日曜日までお休みの為、複数話アップ予定です。


それから、もうすぐ終わります…一章が。


私が監禁されてから3日が経過した。

何故そんなことになっているのかと言えば、私があの後、ルシアンを避けた理由を話せないまま、部屋に閉じ込められてしまったから。


入浴は一人で出来るから問題なく。

食事も作ることが可能だから、これも問題ない。

問題は別にあって。

ルシアンは怒っているのか、話しかけても口をきいてくれません。

でも、私の作った料理を一緒に食べる。味の感想は教えてくれないけれど…。


外から南京錠みたいなのをかけられているらしく、しかもその鍵はルシアンしか持ってない。

セラとも会えていない。


ルシアンは私の元を訪れはするけれど、私を愛しては下さらない。

これは、罰なのかしら?


話は出来ないけれど、ルシアンが来て下さるし、シアンがいるから、思っている程には寂しくはない。

ひがな読書をしたり、刺繍をしたり、お菓子を作ったり、手間のかかる料理を作って時間を費やす。


「シアン、おいで。」


にゃ、と短く鳴いてシアンがお膝にのってきた。

シアンを優しく撫でていると、視線を感じる。

顔を上げるとルシアンが壁に寄りかかって腕を組み、私を無表情に見つめてる。

金色の美しい瞳だけが、何かを訴えている。

けれど話も聞いていただけない。


私はため息を吐いて、シアンに視線を戻し、シアンを撫でる。気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らしてる。


次に顔を上げた時には、ルシアンはいなかった。




一週間が経過した。

状況はあまり変わらないまま。ルシアンの視線に少し仄暗いものを感じるぐらいの、緩やかな変化。


たまたま開けていた窓から出てしまったらしく、シアンがいなくなってしまって、寂しい。


窓から逃げ出すことも出来るけれど、何処かに行っても無駄な気がする。

ルシアンは決して私を逃がさないだろうし、私もルシアンから逃げたい訳ではないから。




誰かが、私の髪に触れている。

…ルシアン?


目を開けると、ルシアンがいて、金色の瞳は今日もまた、私を見つめ続ける。


私が起きたのに気が付いても、私の髪を撫でるのをやめない。

けれど、何も言って下さらない。

私はそのうち、声の出し方を忘れてしまうかも知れない。

そんな事を思っていたら、撫でられる気持ち良さに、瞼を開けていられず、そのまま意識を手放した。




カウチに座って本を読んでいたら、ルシアンがやって来て、私の隣に座った。

私の髪に触れ、頰に触れる。

こうしていると、昔に戻ったよう。

でも、前みたいに微笑んでは下さらないし、名前も呼んで下さらない。

それが、どうしようもなく寂しかった。

涙が出てきそうになって、泣いてるのを見られるのは嫌で、私は立ち上がってルシアンから離れた。

腕を掴まれ、後ろから抱きすくめられる。

力強い腕。厚い胸板。伝わる体温。


強引に顔をルシアンの方に向けられた瞬間、堪えていた涙がこぼれた。

私の泣き顔を見て、ルシアンは歪んだ笑みを浮かべて、私をだきしめ




*****




「………っっ!!」


私は正面に座るリュドミラを見た。

リュドミラの顔は赤い。

私の手から紙を取り、ルシアンが今さっきまで私が読んでいたものに目を通す。


はぁ、と盛大なため息を吐くのはセラ。


「熱心に何をしているのかと思えば…。」


申し訳ございません…と消え入りそうな声でリュドミラが謝罪する。

耳まで真っ赤だ。


ひと通り読んだのか、なるほど、とルシアンは呟いて、テーブルに紙を置く。


「ミチルなら、この程度の監禁では泣いたり寂しがったりしないと思います。」


「ルシアン?!」


何を言ってるんですか!何を!

ポイントはそこじゃありません!

ちょっと快適そうだなとか、思ったことは秘密だ!


「それに、私だったらミチルを南京錠で閉じ込めるだけでは足りませんし…。

こんな風に見つめるだけなんて事はせず、昼も夜も分からないぐらいにミチルを愛」

「ルシアン!」


私は途中で断念してしまったけれど、キスがどうのと書いてあったのは見てとれた。

その先も読んだらしいルシアンの感想に私は悲鳴を上げて言葉を遮り、口を両手で塞ぐ。


セラが遠い目をしてる。


それにしても、まさか、リュドミラにこんな趣味があったとは…。


ため息しか出てこない。


先日の、私がルシアンを避けた姿を見て、こんな話をリュドミラが書いていたなんて…。

そしてリュドミラの書く話の中の私がお淑やかで申し訳なくなった。


「いつもは書き終えたら燃やしていたのですが、うっかりして、お目汚ししてしまいまして、申し訳ございません。」


神妙な様子のリュドミラだけど、謝るとこそこじゃないよね?!

いつも?!うっかり?!

むしろそっちが気になる!


セラがリュドミラを連れて部屋を出て行った。


「はぁ…。」


疲れた…。


元伯爵令嬢のリュドミラにあんな趣味があったなんて、驚きだよ…。


「やっと、私に触れて下さいましたね。」


は……。


これ以上変なことを言わせないようにと手でルシアンの口を塞いでいた、その手を逆に掴まれる。

にっこり微笑むルシアン。


「話し合いを、しなくてはね?」


あああああああ、何とか逃げおおせたと言うのに、まさかこんな形で捕まってしまうなんて…!


「それで、ミチルは何故、私を避けているのですか?」


「さ、避けてなんておりません。避けていたら、こんな風に隣に座ったりも、致しませんわ。」


良くない汗が額に浮かぶ。

目が泳ぎそうになるのを必死に堪えて、ルシアンを見返す。うっ、辛い!


ルシアンの笑顔が深まる。

こ、怖いよー!


「聞き方を変えましょうか。ミチルは時折、何処かに素直な心を置いて来てしまうようですから。」


蛇に睨まれた蛙の気持ち絶賛体験中。


「ねぇ、ミチル?」


「ちっ、違うのですっ!」


無表情に私を見つめていたルシアンが、ふ、と笑う。

私の手首を掴んでいた手を離し、私を自分の膝の上に座らせる。


「それで、何が気になって私を避けたくなったんですか?」


恥ずかしくて言えない私に、ルシアンがキスをする。


「言うまで、口付けしましょうか。昨日から今までにかけて、私の中のミチルが足りなくて仕方ないですし。」


「……っ!」


まぶたやら頰やらこめかみやら、首筋、手の甲、指、とにかくキスされまくる。

身体に緊張が走る。


「せ、セラが!」


「うん。」


意を決して話し始めたのに、ルシアンのキスは止まらない。詐欺だ!


「セラに、あの…子供が…。」


「子供が?」


指先の一本一本にキスされる。


「出来たら…言えって言われて…それで…。」


なるほど、と言って、ようやくルシアンはキスを止めてくれた。


「恥ずかしくなってしまって…ごめんなさい…。

決して、ルシアンに抱きしめられるのが嫌になった訳ではなくて…。」


もう…どうしてみんなサラッとそういう話が出来るんだろう。私は恥ずかしくてたまらないのに。

貴族だから?恥ずかしがる方がおかしいとか、そういうことなのかな?やっぱり。


ふふ、とルシアンは笑う。


「大丈夫、知ってるので。」


知ってる?!何を?!


「…知りたい?」


ルシアンの細く長い指が私の唇をなぞり、そのまま顎をなぞった。


ぞわっとした。

私のシックスセンスが言っております!

知りたいって言っちゃ駄目だって!


「い、いいえっ!結構ですわっ!」


「子供もいずれはね。」


話が突然飛んだ。


はぁ…からかわれたんだ、今の…。

ちょっと意地悪な表情してたもんな…。


「アルト家とアレクサンドリア家の後継としては必要ですが、私としてはようやく学園を卒業しましたから、もう少し先でいいと思っています。」


え。

それ、本当?


「ミチルはあちらの感覚もあるので、こちらの男女間の感覚が受け入れられない所があるようでしたし。

違いましたか?」


…凄い、このイケメン。

さすが察知能力SS!!


ふ、とルシアンが笑う。

慌てて両手で顔を覆う。


表情隠すの忘れてた。

恥ずかしい…。


「も、申し訳ありません…。」


「そんなミチルが、私は堪らなく可愛いけれど。」


顔が熱くなる。


「とは言え、もう少し、ミチルが私を愛してくれたら、嬉しいです。」


うっ!


さらりと私にとっての最難関なことを要求してきますね、このイケメン!


「ミチルはどうやら、課題形式だと頑張れるようですから、私から課題を出そうと思います。」


…え?

課題?


えぇ、とにっこり微笑むルシアン。


「毎日欠かさず、私にキスをする。」


?!


それはかなりの勇気を必要としますよ?!


「ミチルから触れるとか、抱きしめるとか、愛の言葉を囁くとか、キスとか、私を食べて下さるとか?」


最後の方おかしなのをしれっと追加してる!!

だから、ないから!それは!!


「そう言ったのを待っていたのですけれど、一年半の結婚生活で、数える程しかして下さらないので。」


ぐはっ!

返す言葉もございません!!

セラ軍曹にも激しく指摘されております!


「愛する側でいるのも好きですが、愛されたいです、ミチルに。ミチルは私の事が、嫌いですか?

自分から触れるのは嫌?」


こういうときばかり、子犬みたいなしょんぼりした顔になるの、卑怯!

くっ、可愛い!!


「こっ、後悔するのはルシアンかも知れませんよ?!」


「…それは、楽しみですね。」


ぞくっとする程色気のある笑みを浮かべたルシアンを見て、さっきの発言を速攻で撤回したくなった。


「ミチルからの刺激で胸が高鳴るとか、いいですね。

皇都での生活は面倒ですが、ミチルからの愛を受けられるのであれば頑張れます。」


ちょっとちょっと!

なんか勝手に色々とグレードアップしてない?!

私はそこまで言ってない!言ってないってば!


「頑張って下さいね?ミチル。」


にっこり微笑んだかと思ったら、急に仄暗い笑顔になる。


ルシアンが私の顎を指で撫でる。


「課題が滞った場合は、閉じ込めて差し上げますね?

リュドミラのように優しくはしてあげられそうにありませんが…。

学園も卒業しましたし、ミチルが表に出なくても、誰も疑問に思わないでしょう?場所も皇都ですから。

正直、そんな毎日も幸せだろうなと思うので、私はどちらでも構いませんよ?」


黒い!

このイケメン、黒いよ!

ヤンデル!!


「キスは私にはまだ難しいです。も、もう少し優しめのところからお願いしますっ。」


「そうですか?最近、以前よりキスして下さる事が増えたので、大丈夫なのでは?」


大丈夫じゃない!あれは、一種のバーサク状態であって、通常に組み込まれておりません!


そうですね、とルシアンは顎に手を置いて考えてる風。

何故風かと言えば、こんな私とのやりとりも想定済みな気がスル…。


「段階を経るのも、良いかも知れませんね。」


あ、コレ、己で難易度上げたパターンだ。

間違いない。


「では、最初は、私に愛してると言って下さい。好きとか、お慕いしてるは駄目ですよ?」


「な、何故駄目なのですか?」


イキナリ逃げ道が封じられた!


「愛されたい私への言葉ですから、私の欲しい言葉でなければ意味がないでしょう?」


正論!


「好きの方が、気持ちがこめられるのですけどっ。」


何とかして、私の逃げ道を…!


「それは、私の事は愛してないという事ですか?」


腰に回されてる手に力が入ったのは何故ですかね?!


「違いますっ。あ、愛して、ますっ。」


ルシアンがふわりと微笑む。


「良かった。それなら何も問題ありませんね。」


ぎゃーっ!

駄目だ口では絶対に勝てないー!


楽しくて仕方ないといった風で、ルシアンがくすくす笑う。


「あぁ、ミチルが可愛い。

やはり、このまま閉じ込めてしまいたい。」


「課題、頑張らせていただきます!」


リュドミラの性格も破綻してきました。

いや、でも、世の中色んな人がいますよねっ?!


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