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転生を希望します!  作者: 黛ちまた
学園編

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081.お酒はダメ

 モニカと王子の恋愛が順調に進む中、今日は今年最後の日です。

 ルシアンはさすがに今日は仕事はしないらしく、朝からずっと私と過ごしてくれている。

 はぁ……イケメン……。眼福の極み。


 セラからの課題は頑張っているものの、私の乙女としての語彙の少なさがここに来て全力で足を引っ張っております。あいも変わらずルシアンの掌の上で踊ってるような気もしなくもナイ。

 そんな私をルシアンは楽しそうに見てイル。


「今日、パティシエがミチルにとお菓子を持って来ました」


 え?

 パティシエがわざわざ?


 ルシアンがロイエに目配せすると、ロイエは一礼するとワゴンにのせていたお菓子をテーブルに置いた。


 チョコレートだ!

 いや、こちらの世界でも普通にチョコレートはあるよ。

 あるんだけど、目の前のチョコレートは、一粒ずつが丁寧に作られているのが良く分かるし、つまり美味しそう。

 当然のようにルシアンはチョコを私に食べさせようとする。

 抵抗しても無駄なことは分かってる。分かってるけど……つい、しちゃう。


「自分で食べられます」


「そうですか? じゃあ、私に食べさせて下さい」


「?!」


「私はミチルを抱きしめて手が空いてないので」


 く…っ!

 今度はそう来ましたか!

 って言うか今、食べさせようとしてたよね?!


 無言の抵抗をしてみたものの、私が勝てる筈もなく……。


 仕方なくルシアンの口にチョコレートを運ぶと、指ごと食べられた。


 ぎゃーっ!!

 止めて私の指が溶けるー!


 しかもこのチョコ、融点が低いのか指の熱だけで溶けてきて、指にチョコが付いた。

 その指をルシアンが舐める。


 ひ……卑猥……っ!

 破廉恥!


 楽しそうに私を見るルシアン。


 このイケメンは突然、鬼畜になる。

 だから絶対に分かっててやってるんだと思う!

 うぅ……っ。

 至近距離の、悪戯っぽい目をしたイケメン!

 駄目! ドキドキする!!

 未だに慣れることが出来ない!!


 恥ずかしさから逃げるように私もチョコレートを口に入れる。

 噛んだ瞬間にチョコがパリッと割れて、口の中にジュワッとチョコとは別の味が広がった。

 これ、ショコラ・ボンボンだ?!

 食べてすぐに胸のあたりが熱くなる。

 なんだろ、シャンパンかな?


 ルシアンを見ると平気そうな顔をしてる。

 私も一瞬熱く感じたけど、その後は平気だったので、もう一つチョコレートをルシアンの口に運び、私も食べた。


 二個目を食べたときも、また胸のあたりが熱くなった。そこそこ強いお酒なんだろうけど、こうやって出されたのだし、食べてても問題ないでしょー。お菓子用だし。




「んー……」


「ミチル?」


 ふわふわする。

 これは、前世で経験したこと、ある。


 あのショコラ・ボンボンに入っていたお酒が強いのか、はたまたこの身体がお酒に弱いのかは分からないけど。

 酔った、と思う。

 でもなんか、ふわふわしてて、あったかくて、気持ち悪くもならないし、頭も痛くなってないし。

 お酒が合わない身体ではないみたいで、良かった良かった。


 ルシアンと自分で交互に食べたから、お酒が強いなら、ルシアンも酔い始めている筈?

 顔を上げて見るものの、ルシアンの表情は変わらない。


「どうかした?」


 ルシアンの頰に触れてみる。うん、熱くはなってない。

 自分の頰に触れると熱い。


「ルシアンは、お酒強いのですか?」


「そうですね、ある程度は仕込まれてますよ」


 仕込まれるって何?


「それは、ルシアンが美少年だからですか?」


「美少年?」


 男色なオジさまとか、熟女とか、とにかくルシアンに恋しちゃった人がルシアンにお酒を飲ませて酩酊させて…()とか、ありそう!

 あぁ、美形って、本当に大変……。


「ルシアンは大変ですね……。私がルシアンの貞操を守らなくては……」


「貞操?」


 ルシアンはまじまじと私の顔を見る。


「そんなに見つめられると、恥ずかしいです、ルシアン。見ちゃ駄目です」


 ルシアンの目を手で隠す。

 すぐに剥がされちゃったけど。

 なるほど、とルシアンは呟いた。


「気分はどうですか?」


「ふわふわします。ふふ、酔ってしまったみたいです」


 ルシアンの手が頰に触れる。

 あったかい。


「ルシアンの手、温かくて気持ちいいです」


 じっと私を見ていたルシアンは、片手で顔を覆う。


 おや? どうしたのかな?

 ちょっと気持ち良くて、顔がふにゃけてしまうからだろうか? うん、これは確かに駄目かもー。

 淑女なのに、ふにゃふにゃは駄目だよね。


「ルシアン?」


「ミチル、私と二人きりの時しか、酒を飲んではいけません。来年からは夜会でも勧められるでしょうが、絶対に駄目です。体質に合わないと断って下さい」


 んー、せっかくお酒でこんなにふわふわ出来て気持ち良いのになぁ……。

 でも、ルシアンと二人のときは飲んでも良いって言うし、言い付けを守ろう。

 ルシアンに迷惑かけたくないし。別に夜会行きたくないし。

 夜会行ったらルシアンに群がる淑女に気圧されそうになるって言うのに。


「はぁい」


 ルシアンの肩に頭をのせる。

 私がプレゼントした香水の香りがする。

 我ながら良い匂いだと思うんですよねー。

 アーガイル元気かなー。


「ルシアン、香水、付けてくれてるのですねー」


「勿論です。ミチルが私の為に作って下さった香りですから」


 そう言って、私のおでこにキスをする。

 好きな人からのキスって、くすぐったくて、気持ち良いよね。って、ミチルになってから初めて知ったことですけど。前世では年齢=恋人いない年数だったから。


「ルシアンは私のこと好きすぎです」


 私も好きだよー。大好きだー。

 ルシアンの肩に頬ずりする。気分は猫。


「酔ったミチルも可愛くて堪らないですが、私以外にはこんな可愛い姿を見せては駄目ですよ?」


 顔のあちこちにルシアンがキスしてくる。

 キス魔めー。


「やきもち、焼いて下さるのですか?」


「妬かせたいんですか?」


 えー……絶対お仕置きされるからやだよー。

 それよりも。


「ルシアン、私、可愛いですか?いつもいつも上手く言えなくて失敗ばっかりですけど」


 セラ先生に怒られまくりですよー。


「可愛いです、誰より」


 きゃーーーー。

 胸がうずうずしてしまうー!


「やっぱり、ルシアンは私のこと好きすぎです」


「誰よりも愛してますよ、ミチル」


 啄むようなキスをされた。




 新年に切り替わるタイミングをベッドで迎えた。

 え? ルシアンと一緒にいるんだろうって?

 そうですよ。

 だって私、あの後寝落ちしましたから……!


 かなり良い雰囲気だったにも関わらず、まさかの寝落ちですよ!?

 凄くないですか? この空気読まなさ感!!


 ……それにしても、ショコラ・ボンボン五個程度で酔うなんて弱い!!

 これはとてもじゃないですが、夜会で飲んだりしたら、即ルシアンに迷惑かけちゃうコースです。


 ルシアンは、大変珍しいことに、私の横で寝ている。寝たふりかも知れないけど。……十中八九寝たふりだと思うけど。


 前に悪戯されたかったって言ってたから、しても怒らないかな……。

 そう思ってルシアンの頰にキスをする。


「する場所が違うのでは?」


 耳に近い所から声がして、びっくりした。

 やっぱり寝たふりだった!


 慌ててルシアンから離れようとして、腰と頭をルシアンの手で押さえられてしまった。


 至近距離のルシアン……!

 細められた瞳が色っぽくて、心臓がドキドキする。

 少し伸びた髪が顔にかかってる。


「ねぇ、ミチル、私のことを食べませんか?」


 それはそれは甘い声で、恐ろしいことをルシアンが言った。


「?!」


 殺す気か?!

 それとも実は酔ってるのか?!


 私の顎をなぞるルシアンの指に、背筋がゾワゾワする。身体が緊張する。


「私は先日、ミチルをいただきましたが、ミチルはまだ私を食べてませんよね?」


 確かにいただかれましたけど!

 私がルシアンを食べるとか、絶対無理!

 そんないきなり草食系から肉食系になんてなれないよ!


「私は、食べるより、食べられる方がいいです!」


 ふふ、とルシアンが笑った。


「そんなに、私に食べられたいんですか?」


?!


「ちが……っ!

今のはちょっとした言葉の綾で……!」


「じゃあ、食べてくださるのですか?」


 罠だ!

 どっちに転んでもそうなる罠!


「食べないという選択肢はないのですか?!」


 何故、食べるか食べられるかの二択なの?!

 食べないを含めた三択で! 三択でお願いします!! 選択の自由を求む!


「新しい年の日に愛を確かめ合うと、より仲が深まる、と教えていただいたのです」


 え。


「……それはどなたから聞いたのですか?」


 誰だそんなことをルシアンに教えた奴、出て来い!


「父上」


 お義父様ーーっ?!

 それ絶対ガセですよね?!


「そ、そんなことをおっしゃって、お義父様はお義母様と過ごしてらっしゃるのですか?」


「えぇ。物心ついた時には、新しい年の日に両親と顔を合わせた事はありません」


 それも凄いな?!

 え、じゃあ、それが当然だと思ってるルシアンは……。

 白の婚姻ではなくなったし、今年からそう……あばばばばば。


 唇が重なり、ルシアンと私の上下が逆転する。

 一瞬の隙に私の手はルシアンに掴まれてしまっているし、乗られているし。

 ルシアンは私の唇を軽く噛んだ。


「ミチル」


 この状態で名前を呼ばれるだけで、心臓が早鐘をうつ。


「る、ルシアン……駄目ですっ!」


 そんな色気たっぷりの目で見られたら、抵抗出来なくなるから!!


「ショコラ・ボンボンを食べて、あれだけ可愛い姿を見せて私を煽っておきながら、寝てしまったミチルは酷い」


 ぎくっ。


 ……あれは、我ながら、空気読め、とは思った。

 思ったけど…!!


「また、食べさせれば、今より素直になる?」


 ぞくり、と背中が粟立つ。


「それとも、素直にさせる方が、いいかな?

閨事での貴女は、とても素直になるから」


 思い出されるベッドでのこと。

 恥ずかしさで顔が熱い。


「ルシアンのえっち!!」


 ルシアンがきょとんとする。


「えっち、とはどういう意味ですか?」


「そっ、そういうことばっかり、考えていたり、したがる人のことです!!」


「あぁ、劣情のことですね?」


 言い直さなくていいから! その言い方卑猥だから!!


 ルシアンは私の耳朶を軽く噛む。


 うっ! ぞくぞくする……!


「媚薬を使われて、劣情を抱いた事がないんです」


 え? イキナリ何の話ですか?!


「アルト家の人間に媚薬は効きません。酒もそうですが、どうもそういう血筋のようです。ミチルが以前おっしゃっていた、遺伝という奴なのでしょうね。

宰相である父も、兄も、これまでどれだけ媚薬入りの酒を飲まされたか。私も今まで何度も皇女に飲まされましたし」


 ルシアンに媚薬を?!

 あの皇女、許すまじ!

 駄目、絶対許さん!!


「無駄な事です」


 ふ、とルシアンが笑う。


「あぁ、誤解しないで下さいね。

私はミチルに明確に情欲を抱いています」


 どストレートな言い方にもはや、言葉にならない。ぱくぱくと、空気を噛んでしまう。

 顔のあちこちに、首筋にキスをされる。


 ヤバイヤバイ。

 言葉だけで本当に殺されそう……!

 どうしていいのか分からなくて涙も出てきたし……!


「ですから、えっち、でしたか?」


 ひぃっ、しかも話が元に戻った……!


「ミチルに関して言えば、私はえっちなのだと思います。早く全て片付けてミチルを閉じ込めてしまいたい。

貴女の身体の隅々に、私の物である徴を付けて、私の事以外考えられないようにしたい。

閨事はそう言う意味で、私の望みを全てを叶えてくれる行為です。

ミチルの心も身体も、私が独占出来る」


 そこまで言って、ルシアンは艶っぽく微笑んだ。


 頭が、頭の中が、ある意味まだ何も始まってないのに、いっぱいいっぱいになってる。


「もう少しで……貴女の全てを手に入れられると思うと、頭がおかしくなりそうです」


 手に入れられる……?

 もう、ルシアンの物になってる気がするけど、ルシアンは分かってないのかな?

 それとも、閉じ込められるって意味?


「あと、もう少し」


 そう言ってルシアンは私の首筋を噛んだ。


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