巨大な積乱雲
風を集めるのは簡単だったが、この風を空中戦艦全体に覆うには厳しいものがあった。
自分の身体なら肌に当たる風の感覚や自分の身体だからそれを覆うイメージが頭に浮かびやすかったが、今回は空中戦艦、包み込む物体も大きいし、自分の身体ではない分、感覚的にキチンと包み込んでいるのか分からない。
なので空中戦艦の形をイメージするのではなく、全てを包み込むように卵形をイメージした。
その試みは上手く行き、空中戦艦は雨風を受けなくなり、まるで無風状態の中に浮かんでいるようだった。
「風が止まった?
気流を抜けたのか?」
いきなり風が止んだので、サフラン王子は戸惑っていたが、気流から抜け出た訳ではない。
サフラン王子と兵士達は空中戦艦の周りを確認しているようだが、気流から抜け出ていない事に直ぐに気がついた。
「なんだ、あの空中戦艦を覆うような膜は?
あんな機能、この空中戦艦に付いていたか?」
「いえ、付いてないはずです」
「なら、あれは一体誰が…、いや、考えるのはよそう。
今が脱出のチャンスだ。
フル回転で艦を動かすんだ!」
「イエッサー」
だが艦は脱出出来ずに流されるままだった。
それはそうだろう。
いくら僕が風で膜を作ったからと言っても、艦には直接、風が当たる事がなくなったが、実際は風で空中戦艦の動きが取れない。
風の膜で防いでいるだけだからね。
「これは、もしかして天竜に招かれているのか?」
一人事のようにサフラン王子は言っていたが、そんな事はないだろう。
僕が風の力で空中戦艦を守っているだけだからね。
「兵士達よ!
我々はどうやら天竜に招かれているようだ。
このまま気流に乗ったまま、気流の壁を越えるぞ!」
「「「おおーーーー!」」」
いや、だから違うと言いたかったが、兵士達の気力が戻っていたので何も言えなかった。
ただ、僕の風の膜で本当に壁を超えられるのか、不安だった。





