巨大な積乱雲
「駄目です!脱出出来ません!」
「泣き言は聞きたくない!
やらなければ死ぬだけだぞ!」
「分かってます!分かってますが…」
「分かってるなら、つべこべ言わず手を動かせ!」
「イエッサー」
兵士達は一生懸命動いていたが、現状は変わらず艦が横方向へ流されているのが分かる。
段々とその流れは速くなり、艦は悲鳴を上げていた。
「なぜ、脱出出来ないんだ!
お前達はエリート兵だろう!」
なかなか気流の流れから脱出出来ない事に苛立っているサフラン王子がいた。
兵士達だって一生懸命やっている。
だけどそれ以上に気流の流れは速く脱出する事は困難になっていた。
今でさえ、艦が分解しそうな嫌な音を立てているのに、更に中心部分に近づいたらどうなるのか。
もう限界だろう。
全員退艦させるべきだろう。
「サフラン王子、もう無理だろう。
全員、Dルームに脱出するべきだと思うけど」
「何を言ってるんだ、翔。
この艦は我が国の大事な空中戦艦なんだぞ!
それを捨てろと言うのか?」
「このままじゃ、積乱雲の壁にぶつかって墜落するだけだろう。
それなら今の内に脱出するべきだと思うけど」
「壁にぶつかる事は絶対にない!
我が兵士達は優秀だから、この気流から脱出してみせるさ。
もしこんな気流さえ脱出出来ないようなら、これからの戦いでも戦い抜く事など出来るはずもない。
だから決して最後まで諦めず、脱出してみせるさ」
「王子!兵士達の命は、そんなに軽い物なのですか?」
「いや、ただの一兵卒だろうと我の命と同じだと思っている。
我も兵士達と共に最後まで頑張るさ。
だから、翔だけ先に脱出してくれ」
「王子…」
僕は、それ以上何も言えなかった。





