81 イザカロ国
今日は王都との中間地点になる、バンブーテイルを目指し出発する。
アナンタが食べてしまった分の食料を買い足し、馬車は走り出す。
「時間があるうちに、隣国の話をしようと思う」
ラウージャが話しかけてきた。
「隣国の名は、イザカロ国といい、最近戦力増強をしているみたいなんだ。
主に騎馬部隊、ワイバーン部隊が編成で、機動部隊が主力になっている。
軍事規模でいったら、我が国の倍はいる。
肥沃な土地の我が国を狙っているが、我が国の主力は魔法、向こうからしても侮れない存在なんだ。
だから今回の平和条約が結ばれたら、我が国も安心ということさ」
僕は、政治に関心がないのでさっぱり分からなった。
だが戦争が起きないことが、一番だということは僕でも分かる。
「平和条約結ばれたらいいな」
僕はそれしか言えなかった。
馬車は、結構なスピードで走っているが、まだまだ着かない。
アナンタは、寝てばかりだし、精霊達は空を自由に飛び回っている。
僕も空を飛べたら、羨ましい限りだ。
道なりに平原がずっと続いていた。
こんな所で、奇襲などないだろうけど、気は抜けない。
お昼になり、昼食を取る。
食事の時、アナンタはすぐ起き出し食べ終わったら、またすぐに眠りについた。
寝る子は育つと言うけど、寝すぎではないかと思う。
昼食が終わり、馬車は進む。
回りの景色も変わらないまま、何事もなく中間地点のバンブーテイルに到着した。
日は、まだ傾いていなかったので、街を散策する事にした。
かなり大きな街みたいで、いろいろな物が流通しているようだ。
見たことのない物から、高価な物まで幅広く物が溢れていた。
いつの間にか、精霊達も人の姿になり見て回っていた。
一つ気になったのが、奴隷らしき人物が多いような気がした。
ほとんどが、人以外の種族で見た感じもボロボロの服に、足に鎖を繋がれていた。
何処かで、夕食を食べようと店に入ると人族以外は入れないと言う。
この国は、人族優勢国家みたいだな。
何軒か回り、やっと人族以外も入れる店を見つけた。
そこは、逆に人族が一人も居なかったが、気にせず注文して食べた。
意外に料理は美味しく、皆もかなりの量を食べた。
支払いの時、「美味しかった、また来ます」と言ったら、受付の蛙人族の人が驚いていた。
宿屋に戻る前に、馬車に乗ってばかりで体が鈍っていたので、途中あった空き地で少し剣の練習をして戻った。
結局、ベッドに皆で寝ることになったが、こんな美女ばかりのハーレム状態を夢見てきたけど、実際は、こっちが恥ずかしくて眠れたものじゃなかった。
別の事を考えながら、目を閉じていたらいつの間にか眠りについていた。
朝起きると、回りが散らかっていた。
何か争奪戦があったようで、僕の横にエアルとアルケー、その横にウェスタとエルダ、そして窓際の椅子に座ってアナンタが、頬を膨らましこちらを見ている。
何があったのか聞こうと思ったが、『触らぬ神に祟りなし』、言うのを止めた。
瞑想と朝食を終え、イザカロ国の王都ビニングフィールドに向かう。
回りには山もあるが、道は平野に作られており、遠くまで見通しが出来る。
天気もいいし、何事もなくのんびりと過ごしていた。
「あの山を越えれば王都に着く。
だから山の手前で、休憩して昼食にしよう」
ラウージャが指示を出す。
やっと着くのか、遠いな。
車ならほんの1~2時間で着くのではと思ってしまう。
「よし、ここで休憩しよう」
山道に入る前の大きな木の下で、休憩することにした。
昼食の支度をしていた時だった。
僕のマップに赤い点が30くらい近いてくる。
ラウージャに伝えようとしたが、一人の兵士が報告していた。
流石精鋭部隊、僕の出番はないな。
ラウージャは指示を出す。
「防御陣形、敵を迎え撃つ」
精鋭部隊は、剣と盾を構え陣形を組む
魔法使いと司祭は、呪文の詠唱に入っているようだ。
遠くからやって来る敵は豆粒ほどだったが、少しずつ近づき肉眼でも確認できるようになってきた。
山賊だろうか、装備はバラバラ、斧、槍、弓などそれぞれ持っている。
魔法使いが魔法を唱え終わり発動する。
炎の火球が五個敵に向かって飛んでいくが、すべて交わされたようだ。
向こうから矢が数本飛んでくる。
片手に持った盾で、皆、防いだ。
敵の先頭が、精鋭部隊とぶつかる。
次々とぶつかっていくが、双方とも受け止めて互角のようだった。
暫く打ち合ったあと、敵は撤退していった。
「勝てないと思って撤退したのか」
「翔くん、それは違うと思う。
山賊の割には、引き際が良かったし、被害が無さすぎる。
余程訓練された兵士だ。
イザカロ国の偵察かも知れないな」
マップで確認するが、赤い点、敵マークは消えて居なくなっていた。
危険な匂いがしてきた。
「ラウージャ、このまま進んでいいのか」
「出発前から分かっていたこと、進むしかないんだ」
回りを警戒しつつ、昼食を取り王都へと進みだした。
怪しい雰囲気の中、このまま行っては危険なのでは、僕の心の中で警鐘が鳴り響いていた。





