フルールイル5
「この荷馬車の中って熱いですね」
「ごめんなさいね。
荷馬車だから換気が悪くて、どうしても熱が籠ってしまうの」
現在の移動販売車を思い浮かべると、車の中で料理を作り、お客は外に用意された椅子とテーブルを使い食事をする方式だったはず、それを従業員に伝えると、
「う~~ん、それの方がお客様としては良いかも知れないけど、私達、商売人から見ると椅子やテーブルを出すのに時間がかかるし、それに雨の日は椅子やテーブルが出せないので商売にならない。
テントを立てれば良いと思うだろうけど、テントを立てて、そして収納するのに次回がかかるし、テントを立てる場所代も更にかかる。」
いろいろ話している内に、従業員だと思われた女性は焼き鳥屋の奥さんという事が判明した。
「場所代を取られるなら一軒家を建てて商売したらどうですか?」
「一軒家で商売するなら、ギルドに入らなければならないけど、一年間のギルド加入料が高くて、家の支払いや家を借りたとしても賃貸料が高くて払いきれないんですよ」
「でも商売してるなら、儲けを出せば支払えるのではないでしょうか?」
「そうでもないんですよ。
今は特に物価が高くて...」
「物価が高い?」
「そうです。
例えば、この焼き鳥一本を安く販売していても、中には美味しければ少しくらい値段上げても良いさと思う人が現れて、それでも売れれば更に値段が上がり、一本銅貨1枚だったのが10枚でも売れるようになる。
最初に比べて10倍、金額が上がり物価が上がった事になります」
「それなら、このお店も値段を上げれば良いんじゃないですか?」
「そういう訳にもいかないんですよ。
高くすれば買わなくなるから、どうしても安くて沢山買って貰うことになりますから一軒家で商売するなんて夢のまた夢です」
「難しい所ですね」
「そうなのよ」
焼き鳥屋の奥さんと話に夢中になっていた頃、隣では亭主から出された焼き鳥を片っ端から食べていく精霊達とアナンタの姿があった。
ちょっと気付くのが遅くて、僕達の分の焼き鳥も食べてしまっていた。





