338 クエスト 3
「敵までの距離100メートル」
「ありがとう、翔」
「潤達の戦い方を見たいから、とりあえずお手並み拝見でいいか」
「任せろ、僕達だけで十分だ。なぁ隼人」
「その通り、いつも翔ばかりいい格好させるわけいかないからな」
「分かった。任せたぞ」
「ああ、よし行くぞ。音に気を付けて静かに近づくぞ」
潤達は音をたてないよう散開しながら近づいていく。
僕達は少し離れて戦いの様子を見学することにした。
危なくなったら、手助けすればいいかと考えていたが、見えてきた敵はゴブリンでレベルは21と、潤達に比べかなり低い。
このくらいなら瞬殺しないといけないくらいのレベルだ。
潤達もゴブリンに気付いたようだけど、相手のレベルは分からないのか、手はず通りゴブリンを囲むつもりのようだ。
1人で十分だろうと思いながら、邪魔をしないように離れた位置で見守っていた。
「よし、行くぞ」
潤は皆に聞こえるように叫んだが、ゴブリン達にも聞こえたようで、最初、声に驚いていたようだが、正気を取り戻し武器を手に迎え討つ準備を整えていた。
わざわざ叫ばなくても、通信で伝えるとか合図とかあるだろう、気付かれず近づいた意味がないじゃないか。
叫ばなければ、いくらレベルが低いと言ってもゴブリンが武器を構える前に奇襲がかけられたのに、意味がないじゃないか、後できっちり言わないと…。
一斉に潤達は周りからゴブリンに襲いかかる。
一歩早いのは、やはり潤と隼人が皆より早くゴブリンに斬りかかっていた。
ゴブリンは槍を構え防ごうとしているが、レベルの違いだろうか、ゴブリンが槍を構える前に潤と隼人はそれぞれ一瞬で切り裂きゴブリンは霧となって消えていく。
その後を追うように博が攻撃しているが、ゴブリンを見ながら剣を振るっていないので空振りをしている。
その隙を突かれ、槍で突かれそうになるが、博の後ろで控えていた恒明さんがカバーしてくれて、ゴブリンの攻撃を弾いていた。
「坊っちゃん、もう一度」
「分かってる、が、ゴブリンを見ると結構グロいから」
「慣れれば大丈夫ですよ、よく相手を見て雑魚なんですから、当てれば倒せますよ」
「でも、恒明…、」
「頑張って下さい、もう一度、このくらい倒さないとこの世界生きていけませんよ」
「分かってるよ」
博はちょっと危なさそうだけど、恒明さんが付いているから、大丈夫だろう。
後は海斗は、居ないと思ったらいつの間にかゴブリンの後ろに立ち切り裂いていた。
職業がらアサシンだったので、なかなか存在を消して攻撃するなんて、上手いものだと感心してしまう。
祐太は騎士らしく、ゴブリンの攻撃を盾で受けて剣で攻撃している。
この中では祐太が1番レベルが低いけど、ゴブリンでは相手にならなかった。
まあ、余裕で倒せそうだな。
残りのゴブリンを早く倒した潤、隼人、海斗が一匹ずつ追加で倒した。
「どうだ、翔、俺らも戦えるぞ」
「まあ、ゴブリンのレベルが低いからな」
「低くても戦闘訓練にはちょうどいいなあ」
「どうだ、皆、ここはちょっと勝負しないか」
「隼人、どういうことだ」
「このままじゃ、ゴブリン倒しても面白くないから、よく多く倒した奴が総額貰うというのはどうだ」
「隼人、総額というのはあんまりじゃないか、この面子でいったら潤か隼人、海斗の誰かの総取りになるだろう」
「そうだな…、どうだろう、総額じゃなくて半分で、そしたら自分が倒した数の半分は貰えるだろう。
勿論、ハンデは与える恒明さんは博に付くけど、博は倒すのに時間がかかるだろうからプラス30体する。
祐太もレベルが低いからプラス50体くらいかな、どうかな」
「祐太に勝つには50体多く倒さないといけないということか、良いんじゃないかそのくらいのハンデは」
「それじゃ、他の人達の取り分や、傭兵団に入るお金がないのでは…、」
「たまには良いんじゃないか、そのくらいしないとやる気が出ないだろう」
「そうだな」
「いつから始める?」
「今からだろう」
早々に隼人が走り出していく。
「ず、ズルいぞ」
後を追うように皆、一斉に森の中に入っていく。
「勝負は日が暮れるまでだからな」
聞こえているかどうかは分からなかったが僕は森の中に叫んでみた。
「翔様、私達はどうしましょうか」
「女性達はミネルバに戦闘訓練してもらおうと思う」
「わらわにか?」
「女性には女性の戦い方があると思うんです。
だから、この中で適任者はミネルバだと思う」
「翔殿が頼むなら、仕方ないな。
わらわの戦いを教え込もう」
「頼みます。
神楽と茜は、女性達の警護をお願いします」
「分かりました」
「そして大地達はどうする。
ゴブリン退治に、参加するか」
「え~っと、戦闘は苦手なんで」
「それじゃ魔法は?」
「魔法も…、」
「じゃあ、何が得意だ」
「…、策士かな」
「いや、全然得意じゃないだろう。お前達、よしルーク、この三人鍛えてやってくれ」
「何で俺が…、」
「翔様のお願いですよ」
「お姉ちゃんが言うなら仕方ないな。
みっちり鍛えてやる」
ルークと大地、佑樹、健二は戦闘訓練に入った。
「後は…、のんびりキャンプでもするか」
「あの~」
「どうしたの、ルナ」
「私は、その辺りで食料調達に行ってきます~」
「大丈夫1人で」
「はい、いつも1人で動いてましたから」
「私もいきますわ」
「エマさん、周りは危険ですよ」
「大丈夫です、いざとなったら助けを呼びますから」
僕がマップで周りを確認しているから、まず問題はないと思うけど…。
「分かった。二人に食料調達お願いするよ」
「はい、任せてください」
二人は一緒に森の中に消えていった。
さて僕はマップ画面を見て警戒しとくかな。
近くにあった大きな木の下に座り込み周りを警戒していた。
隣にはいつの間にかアナンタが横になり眠っていた。
精霊達は森の中を駆け抜けて遊んでいたので、周りの警戒とルナ、エマの護衛をお願いした。
この森の風景、空の色、雲の動きなどとても異世界とは思えず、まるで元いた世界とほとんど変わらないのではと思ってしまう。
この世界に来てかなり時間が過ぎたような気がするが、元の世界に帰る方法が見つからず、この世界で人生終わってしまうのではないかと感じてしまう。
今、生きることが精一杯で元の世界の事を考える事はあまりなかったが、こうのんびりした時間があるとどうしても元の世界の事を考えてしまう。
家族の事、学校の事、住んでいた街の景色など不意に頭の中によぎってしまう。
今はまだ、この世界で生き抜くことだけを考えようと心に誓った。





