304 飛行
僕は姿が見えないようにしていたが、レベルの高い人には察知されるかも知れないので周りにバレないよう、空に向かって急上昇した。
街のあちらこちらに見えていた灯りが、高度が上がる度に小さくなっていく。
かなりの高さまで来ると、ネイロ帝国に向けて進路を変えた。
マップ機能があるので、周り状況を確認しながら飛んでいた。
風の扱いが上手くなり、思ったように飛べるようになってきたので、飛行機でよくやるアクロバット飛行機をしながら飛んでみた。
急旋回したり、スラロームのように飛んだりアーチ状に飛んだりと飛行訓練も兼ねてのんびりと飛んでいた。
そして飛行速度について、どれだけ早く飛べるのだろうかと気になり、最高速度を試してみることにした。
なるべく抵抗を少なくするため、直立不動の体制で頭から体を通って足へと風を流していく。
頭の部分に1番風の抵抗がかかり、剥げるのではと思ったので、土でヘルメットのような物を作り、頭を先端にしてロケットのように飛んでいく。
ここからは忍耐の勝負だった。
要は風の抵抗にどこまで耐えきれるかだ。
レベルも上がり耐久力も上がったはずだ。
いざ、チャレンジ。
少しずつ風の流れを速くして、速度を徐々に上げていく。
かなり下の方に地上の灯りが見えているが、凄い速さで通り過ぎていく。
戦闘モードに切り替え、自分の能力を高めていく。
するとそのうち、目の前に気流の流れが見えてくるようになってきたが、僕の体もそろそろ限界に近い。
体のあちらこちらがきしみ、悲鳴をあげていた。
少しでも体勢を崩したら、一気にバランスを崩し、切り揉み状に堕ちて行くだろう。
それだけは避けたい。
せめて目の前の気流の壁に届くまで…、そう思いながら出力を上げる。
最後の一瞬、届けば…、そう願った瞬間、『バァーン』とてつもない爆音と共に僕は五感神経が麻痺していた。
そう、まるで夢の世界にいるような、何も考えられず、ぼぉーっとしたまま飛んでいた。
長い間なのか、それとも短い間なのか、よく分からなかった。
そして、そのうち聞いた事のある音楽が流れてきた。
どこで聞いたのだろうか、元の世界で聞いたかな、それとも…。
そうだ、この世界に来た時に聞いたこの星の声と言うものだ。
いろいろあって忘れていたが、何て美しい曲なんだろう。
このままずっと聞いていたい、とても心に響く美しい曲に耳を傾け、何もかも忘れて、ただ飛んでいた。
すると何処から声がする。
「お前の使命は、まだ終わっておらん」
「使命って何ですか?」
「それは、自分で探せ、自分の課せられた試練だと思え、さぁ、行くのじゃ」
その声が終わると、美しい曲もいつの間にか終わっており、僕の飛行速度も徐々に落ちていた。
限界を越えたのだろうか。
僕は音速まで速度を上げる事が出来たのだろか。
そして目の前には、夜なのに昼間のように明るく照らされたネイロ帝国の都市が見えていた。





