208 領主の船
「翔、行く前にこれを」
大地から丸く直径5センチの紫色に光る珠を渡された。
「これは」
「翔なら使うかなぁと思って、自分の名前以外、レベルやスキルを相手から分からないようにする物だ。
俺達は使わないからやるよ」
「良いのか」
「ああ、助けてくれたお礼だ」
「ありがとう、助かるよ、でもこれは何処で手に入れたんだ」
「それは勿論…」
「いや、ごめん、聞かなかったにするよ」
「そうか、気を付けてな」
「行ってくる」
僕は小さな馬車を借りてイルプレーヌに向かっていた。
最初は走って行った方が早いので、走って行こうと思っていたが、イルプレーヌまでに関所があるが関所間の通過時間が早すぎると、
疑われる可能性があるということで、馬車で行くことになった。
馬に乗ることが出来れば、馬で駆け抜けて良いのだが、僕はまだ馬に乗ったことがなかった。
だからなるべく軽い馬車と早く走れる馬を借りたのだが、普通の馬車よりは早く進んでいるように見えるが、回りの景色は岩石だらけで一向に変わらず、時間だけがのんびりと過ぎていく。
いつもならファミリの仲間達が回りで騒がしく騒いでいるはずなのに、今回は一人旅。
僕は一人で居ることが好きだったのに、いつの間にか仲間達と居ることが当たり前になり、一人で居ると寂しさを感じてしまう。
寂しさを紛らす為、鼻歌を歌いながら僕は馬車を走らせていた。
途中の関所を無事通過し、イルプレーヌに到着した。
イルプレーヌの門をくぐり、街の中に入ると、また隠密部隊の一人が僕を尾行している事に気付いたが、そのまま気付かない振りをして、商店街を目指して歩いていた。
僕は普段通りの行動をし、下手に隠密部隊に勘繰られないよう気を付けながら、魔物のドロップアイテムを売却や必要な物、生活用品や食料品等買い漁り、ギルドに寄りクエストがないか探したりしていた。
実際は、隙を見てディメンションルームの入り口を作りたかったが、隠密部隊が後をずっと付けていたので、なかなか入り口を作りきれずにいた。
暫くすると、街の鐘が大きく打ち鳴らされていた。
『カラン、カラン、カラン』
その音がなると同時に隠密部隊は何処かへ消えて行った。
何かの危険があったのか、それとも集合の合図だったのか、それはともかく、今がチャンスと思い大通りから、脇道にそれた人気のない場所でディメンションルームを開く。
それと同時に通信がきた。
『ご主人様、領主の船らしき船体が近づいて来ました』
『分かった、直ぐ行く』
先ほどの鐘は、船が来た合図だったのか、そう思いながらそのままディメンションルームの中に入り、気配を消しながら海上に作っているディメンションルームの扉を開けた。
そこに見えたのは、沈没した船と同じ型の船とそれを守るように、中型の船が10隻回りを固めていた。





